天国へのカウントダウン04

「キャー!!」
「煙よ!」
「ダメだわ!動かない!」

沢口がすべてのボタンを押すが、エレベーターは動かない。

「名前刑事!肩車して!」
「え?うん!」

名前はコナンを肩車すると、コナンはエレベーターの天井についている救出口を蹴り破ってかごの上に上がる。

「あ!コナン君!」

名前も上に上がり、コナンの後を追う。

「これ、開けられるかな…」

名前は、エレベーターの乗場戸のすき間に指を差し込んで、力を入れるが扉はビクともしない。

「ウウッー!!」
「名前刑事じゃ無理か…」
「コナン君、そんなハッキリ…」

天井に上がって来た蘭が「名前刑事!任せてください!」と名前に駆け寄って位置を代わる。

「ウッ!フンーッ!!」
「頑張って!蘭姉ちゃん!」
「蘭ちゃんファイト!」
「アアーッ!!」

蘭が力を入れると、扉が開いた。

「すごーい!蘭ちゃん!」

名前は救出口に戻ると、下にいる乗客に「みなさん!ここから逃げましょう!」と言って、手を伸ばす。

「手伝います!」
「蘭ちゃん、ありがとう」

名前と蘭は協力して乗客を天井裏に上げると、全員で乗場戸からビルの中に戻る。

「何階かしら?ここ…」
「45階だよ!」
「連絡橋がある階ね!」
「大変!煙が!」

通路の奥から煙が迫っている事に気づくと「橋を渡って隣のビルに逃げましょう!」と名前が叫ぶ。

「沢口さん!先導してください!」
「分かりました!」

沢口は隣のビルに渡るために、連絡橋に向かう。



しばらく走ると、隣のB塔に渡るための連絡橋が見えてきた。

「みなさーん!ここを渡れば隣のビルですよ!」

沢口を先頭に、急いで連絡橋を渡っていると、上の方でドオオオンッ!という大きな爆発音がする。

「え!?」

名前は上を見ると、60階にある連絡橋の両端が爆発し、名前達が渡っている連絡橋の上に落下してくるところだった。

「…え!?」
「危ないコナン君!!」

名前は、後ろにいたコナンに駆け寄ると、そのままコナンを抱き上げてA塔に戻る。

「キャーッ!!」
「コナン君!」

蘭は後ろを見ながらも連絡橋が落ちる前に渡りきる。

「コナン君ー!!」
「名前刑事ー!!無事ですかー!?」

渡りきったB塔から蘭と園子が叫ぶ。

「大丈夫だよー!」

蘭達の呼びかけに、名前は手を振って応える。
名前は立ち上がると「…まずいね」と言った。

「うん…。防火扉の奥は煙でいっぱいだよ。退路を断たれた…」

防火扉のおかげで、まだ辛うじて火や煙はきていないが、それも時間の問題だった。

「…とりあえず、姿勢を低くして」
「う、うん…」

A塔からB塔に行くための連絡橋は落ち、防火扉の向こうは煙と炎でいっぱいになっている。
反対の扉からは、炎が迫ってきていた。

「ゴホッゴホッ…!」

名前とコナンがいる連絡橋の前のスペースにも、どんどん煙が充満していく。

「大丈夫?コナン君?」
「ゴホッ!う、うん」

コナンの傍により、名前はコナンを煙から守ろうとするが、あまり意味はない。

「(このままじゃあ…ダメだ…)」

咳き込むコナンと、炎が迫りくる通路を見た後、名前は消火栓ボックスに駆け寄り、扉を開けて中からホースを取り出す。
そして、連絡橋が落ちて飛び出た鉄骨にホースを五重にして巻き付ける。

「名前刑事…?まさか…」

名前はニコッと微笑むと、コナンの体にホースを巻き付ける。

「…あの人達みたいに上手くいくかどうか分からないけど…」
「あの人達?」

名前は、コナンを抱き上げると、自分の体にもホースを巻き付けて縛る。

「しっかりつかまっててね、コナン君」

コナンを抱き上げたまま、連絡橋が落ちて外がむき出しになっている部分まで歩き出す。

「…フゥ…」

名前は、震える足で一歩ずつ歩き、胸にしまっている拳銃を取り出す。

「…名前刑事、怖くないの?」
「え?」
「…手が震えてるよ」
「…」

コナンを支えている左手が震えている事に気づくと、ギュッと力を入れる名前。

「…ごめんね。不甲斐ない大人で」
「そんな事ないよ」
「…怖いよ」

名前はそう言うと目をつぶる。

「上手くいかなくて、私のせいでコナン君までって思ったら怖い…」
「名前刑事…」
「でも…」

そう言って名前は目を開ける。

「ここで私が死んだら…本当に独りになっちゃう人がいるんだ」
「えっ?」
「その人のためにも、私は絶対…生き抜かないといけない」

名前はそう言うと降谷の顔を思い浮かべる。

「…」
「コナン君…」
「大丈夫だよ、名前刑事!」
「…うん!」

炎は名前とコナンのすぐ後ろまで迫って来ていた。

「…行くよ」
「うん!」

名前はそう言うと、連絡橋の入り口から飛ぶ。

「はあああっ!!」

ホースが落ちきると、その反動で2人の体は窓ガラスに向かう。
名前は拳銃を構えると、窓ガラスに向かって弾を撃ち、ヒビが入ったところに全身で体当たりをしてガラスを突き破り、ビルの中に転がり込んだ。

「フ〜ッ」
「大丈夫?コナン君?」

体に巻き付けたホースを解きながら、名前はコナンに声をかける。

「うん!名前刑事、さすがだね!」
「良かった!」

2人は階段を使ってA塔の1階を目指す。

「さっき言ってたのって」
「え?」
「さっき、名前刑事が言ってた人って、名前刑事の恋人なの?」
「んー、ちょっと違うかな」

名前がそう言うと、コナンは「そうなの?」とさらに聞く。

「ただ、とっても大切な人なの。一緒に生きて、一緒に歳を取っていきたいと思える人」
「なんか、名前刑事のそういう話、初めて聞いたかも」
「そうだっけ?」
「うん。名前刑事って、プライベートな事はあんまり話してくれないでしょ?蘭姉ちゃんもぼやいてたよ。”名前刑事は秘密主義だ!”って」
「そ、そんな事ないんだけどね」

そう言って名前は苦笑する。

「ただ、言える事と言えない事があるんだよー。大人になれば、分かる事かな?」

名前がウィンクをしながらそう言うと、コナンはあきれた様に「ハハハ…ッ」と笑う。

「もしかして、前に言ってた幼なじみの人?」
「…ううん。違うよ」

1階まで下りると、蘭や小五郎、目暮達が2人を出迎える。

「コナン君!名前刑事!」
「苗字君!大丈夫か!?」
「大丈夫です!コナン君も、無事です!」
「無茶しやがって!」

名前は「これで、全員ですか?」と聞いた。

「そうだな」
「あれ?子ども達は?」
「ん?」

名前は周りを見渡しながら、子ども達の姿が見えない事に気づく。
コナンは探偵バッチを取り出すと、歩美達に通信を繋いだ。

「歩美、光彦、元太!聞こえるか!?」
『コナン君!聞こえるよ!』
「おめーら今どこにいるんだ?」
『それが、60階の連絡橋の前なんです』
「何っ!?」

コナンの持っている探偵バッチを通じて聞こえてきた子どもたちの声に、名前達は驚いてビルの方を見る。

「あ、あんなところに!?」
「高木君!救助ヘリだ!」
「はっ、はい!」

高木は携帯電話を取り出すと、救助ヘリを要請した。

「コ、コナン君!どこに行くの!?」

スケボーを持って隣のB塔に走っていく姿を見た名前は、コナンを呼び止めるがコナンは無視してB塔の中に入って行く。

「コナン君…」

コナンがB塔に入ってから少し経つと、上からコナンのスケボーが落ちてきた。

「何だっ!?」
「コナン君のスケボーじゃ!」

スケボーは地面にたたきつけられて、真っ二つに折れてしまった。
双眼鏡を使って様子を見ていた白鳥が「い、今!コナン君が60階の連絡橋を飛び越えました!!」と叫んだ。

「何ーっ!?」
「な、なんて無茶を…」

そこに目暮の携帯が鳴る。

「目暮だ」
『警部さん!今からみんなで上へ行くから、屋上にヘリを着陸させて!』
「み、みんなって、今どこに!?」

目暮の問いかけには答えず、そのまま通話が切られた。

「コナン君…」

心配そうにビルを見上げる蘭に、名前は「きっと、大丈夫だよ…。コナン君なら…」と励ました。



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