「屋上に向かうからヘリを着陸させてくれと」
「そしたら私達もB塔の屋上に向かいましょう!」
「ああ」
高木は電話をかけると「もしもし?警視庁の高木です。西多摩市のツインタワービルに、今すぐ救助ヘリを飛ばしてください!急いでください!」と救助ヘリを要請した。
「上に行きましょう」
「風間さん、案内してください」
「分かりました!」
目暮は「ちなみさんは、パトカーの中で警察官と待っていてください」と沢口に伝える。
「分かりました…」
名前達は急いでB塔の屋上に移動する。
「風もないし、このままヘリが到着するのを待てばコナン君達は無事に助けられそうですね」
「そうだな」
そんな話をしていると、ヘリコプターの音が聞こえてくる。
「あ!来ました!救助ヘリです!」
高木の言葉で一斉に上空を見る。
「良かった…」
蘭が安心したようにつぶやいた瞬間、大きな爆発音が聞こえてきた。
「えっ!?」
「何!?」
屋上は一瞬で炎が上がり、火の海になった。
「ひ、酷い…」
「一体誰がこんな事を…」
屋上にあるヘリポートに着陸しようと高度を下げていたヘリが、もう一度高度を上げる。
一緒に屋上に上がって来た消防隊員達が、ホースを伸ばしてA塔の屋上のヘリポートを鎮火しようとするが、ホースの長さが足りず、屋上まで届かない。
「隊長!ダメです、届きません!」
「くっ…!」
「そ、そんな…」
名前は「で、でも、屋上の火が消えれば、またヘリを着陸させられるから!時間はかかるけど、無事にみんなを助けられるよ」と蘭に伝える。
「たしかに…今は待つしかないな…」
「コナン君…」
しかし、火が消えるのを待っている時間はなかった。
パーティー会場に戻ったコナン達は、会場にあるテーブル全てに爆弾が仕掛けられている事に気づいた。
コナンは会場に飾ってあった、小五郎の当てた高級車、フォード・マスタング・コンバーチブルに乗って、爆弾が爆発するタイミングで窓ガラスを突き破り、爆風の勢いを使ってB塔の屋上に飛び移る計画を思いつき、実行する事にした。
「もしもし?」
『警部さん?屋上のプールのドーム部分を全開にしてもらっていい?』
「プールを?」
蘭は思わず目暮の携帯を奪うと「コナン君?どうするの?」と聞いた。
『…大丈夫だよ、蘭姉ちゃん』
「え?」
そう言うと電話が切れる。
「風間さん、プールのドーム部分を全開にしてもらってもいいですか?」
「は、はい!」
風間はシステム室に連絡を入れると、プールのドームが全開になる。
プールの両端には綺麗な氷柱のオブジェクトが設置されていた。
「ドームを開けさせたって事は…コナン君達、会場に展示されてあった車に乗ってここに飛び移るつもりじゃ…」
「そ、そんな!」
「ビルとビルの間は50m…飛び移るとすれば60mくらいになるでしょ。A塔のパーティー会場がある75階とB塔の屋上の高低差はどのくらいですか?」
名前は風間に質問すると「たしか、20mです」と答える。
「20m落下する速度を出すには…t=ルートg分の2s」
「苗字さん…?」
「高木君、これは高校の物理で習う公式だよ?」
「ぼ、僕、完全に文系で…」
全く意味が分かっていない様子の高木を見て、名前はあきれる。
「tは求める時間、gは重力加速度、sは落下距離、これを式に当てはめて計算すると、2.02秒」
「つまり、20mを落下するのにかかる時間は約2秒、という事ですね」
「うん。2秒で60mを進まないといけないから、1秒で30m。時速に置き換えると108kmだよ」
「時速108kmをあの会場で出すのは無理ですよ!」
名前は「そう、そうなんだよね…」と言う。
「でも、どうしてコナン君はそんな無茶な事を考えてるんですか!?火が消えるのを待ってればいいのに!」
蘭がそう言うと、小五郎も「そうだよな…」と同意する。
「…多分、火が消えるのを待っている時間がないんじゃないんでしょうか」
「何?」
「これだけ大規模な爆弾を仕掛けた犯人の目的は分かりませんが、もしパーティーに参加した人の中にまだ狙っている人がいるとしたら…まだ仕掛ける可能性が残されている場所があります」
名前がそう言うと「ま、まさか…」と蘭が目を見開く。
「うん…。多分、コナン君達がいるパーティー会場にも爆弾が仕掛けられてるんだと思う」
「そ、そんな…」
「だからコナン君は、リスクを冒してでもこっちのビルに飛び移ろうとしているんじゃないかな」
白鳥は「ですが、物理的に時速108kmを出すのは不可能なのでは?」と聞く。
「…爆発と同時なら…」
「え?」
名前は「もしかしたら、コナン君は窓を突き破るタイミングと爆弾が爆発するタイミングを合わせようとしてるんじゃないかな」と予想する。
「窓を突き破るタイミングに車のトップスピードをもってきて、そのタイミングで爆弾が爆発すれば爆風で加速するかも」
「無茶ですよ!タイミングを合わせるって、大人でも難しいのに…」
「でも…なんとなくだけど、コナン君なら成功する気がする…!」
「…」
蘭は心配そうにA塔のパーティー会場を見上げる。
爆弾のタイマーが分からない名前達は、ただ祈るようにパーティー会場を見続けていた。
「コナン君…みんな…」
数分後、コナン達が乗った車が窓から突き破ると、そのタイミングで爆弾が爆発し、爆風で車が一気に加速した。
車から落ちそうになった灰原の腕を光彦が掴むが、そのままでは灰原がプールの両端に設置されている氷柱にぶつかりそうになる。
しかし、車が氷柱にぶつかる前に、コナンがキック力増強シューズでヘルメットを氷柱にぶつけて破壊。
そのまま車はプールに着水した。
「コナン君!」
「みんな!」
名前達は急いでプールの入り口に回り、着水した子ども達の安否を確認する。
子ども達は車の上に立ち「無事よー!」「イエーイ!」と言いながら笑顔を見せた。
「良かった…」
車の中には眠っている如月がおり、目暮は「コナン君、もしや犯人は…」と聞く。
「うん。如月峰水先生だったよ」
「まさか…!」
「美緒さんに贈ったネックレスは、わざと外れやすい仕掛けになってたんだ。会場が暗くなって、ネックレスを外した如月先生がピアノ線付きのネックレスを付け直したから、美緒さんはネックレスにピアノ線がついている事に気づかなかったんだ」
「そ、そっか」
「動機はツインタワービルで富士山を真っ二つに割られた恨み。このツインタワービルのせいで、如月先生の仕事部屋から見えていた富士山が真っ二つになっちゃってたんだ」
名前は「そっか。みんなが如月先生の部屋に行った時、カーテンが閉まっていたのは、割られた富士山を見せたくなかったから」と言った。
「おちょこも、割られた富士山を示してたんだ」
「でも、今回美緒さんが殺された時は、おちょこは割られてなかったんだよ?」
高木がそう聞くと「必要なかったんだよ!だって、美緒さんの体で如月先生の描いた富士山の絵が割られてたからね」とコナンが答える。
「へー…すごいな」
「さすがだねぇコナン君」
名前が感心したように言うと「あ、そうだって如月先生が言ってたよ!パーティー会場でボク達に見つかった時に!」と焦った様子で答える。
「原さんの時は、多分如月先生が連続殺人に見せかける為にわざとおちょこを置いたんだろうね」
「うん」
「でも、だとしたら原さんを殺した犯人と、この爆弾を仕掛けた犯人は誰なんだろう…」
「如月先生ではなさそうですよね」
目暮は「ああ。この規模、そして手際の良さを考えると…1人では無理だろうな」と言った。
「そっちの捜査はこれからですね」
「忙しくなりそうだなー」
蘭はコナンに「それにしても、コナン君はよく車の運転できたね?」と聞いた。
「ハワイで親父に…あっ!」
「え?」
コナンは蘭からの質問に答えようとするが、途中で慌てて口つぐんだ。
「な、なんか見よう見まねで!ほら、よく阿笠博士の運転見てるからさ!」
「お、おお、そうじゃな」
白鳥、高木の2人が眠っている如月を下まで運び、名前達も全員で1階に下りた。
目を覚ました如月には手錠がかけられてパトカーで本庁まで連行されていった。
「コナン君」
「ん?どうしたの、名前刑事?」
名前はコナンに目線を合わせる為にかがむと、小さな声でコナンに質問をした。
「私達が下の階に避難しようとエレベーターに乗ってた時、急に停まっちゃったじゃない?」
「うん」
「あれ、あそこにあるビルからライフルで狙撃された事が原因だと思ったんだけど…どう?」
名前はツインタワービルから少し離れた場所に建っている、少し高さの低いビルを見ながらそう言った。
「き、気のせいだよ!ライフルで狙撃なんて、日本でありえなくない?」
「…そっか。そうだよね」
名前は納得した顔をすると立ち上がり「それじゃあ、またね」と言って目暮達に合流する。
「苗字君、我々も本庁に戻ろう」
「分かりました!」