「あ、名前刑事!こんばんは」
「3人ともこんばんは〜」
「今日は暇だったんですか?」
園子が聞くと「そうなの。今日は、特に大きな事件も起こらなくて平和だったよ」と名前が答える。
「でも小さな事件は起こったって事ですね」
「この町はよく事件が起こるよね〜」
カウンターに座っていた名前に「名前さん、蘭ちゃん達と一緒のテーブルに移動しますか?」と、梓が聞く。
「若者の集いを邪魔したら悪いから、私ここで」
「えー!いいじゃないですか!名前刑事、一緒に座りましょうよ!」
「そうだよ。変に遠慮しなくていいんじゃない?」
名前は「そ、そう?じゃあお言葉に甘えて」と言って、コナンの隣に座った。
「そうだ!私達この前長野に入って来たんです」
「長野?」
「はい!お父さんが仕事の依頼を受けて。そしたらそこで服部君に会ったんですよ」
「服部君か〜。元気そうだった?」
「とっても!そこでお世話になった長野県警の刑事さんが、大和警部っていうんですけど、名前刑事知ってますか?」
蘭に聞かれた名前は「うーん…」と考えるが「ごめんね、あんまり他県に知り合いの警部さんっていないんだ」と答える。
「県をまたがった連続殺人事件とかが発生して、合同捜査でもしない限り他県の刑事さんと話す機会ってないよね」
「そうなんだけど、何でコナン君はそんなに詳しいの?」
「あ、だ、だってボク、ミステリー小説とかよく読むからさ!」
「ふーん。小学生らしく、もっと夢のある物語とかも読んでよ?」
「うん!」
ポアロで人気のドリアを食べながら、名前は「(そういえば、諸伏君のお兄さんって、たしか長野県警だって言ってたよね)」と思い出す。
「ねえ、蘭ちゃん。大和警部以外に刑事さんっていなかったの?」
「上原由衣さんっていう、元刑事さんならいました!今度、刑事に復帰するって言ってましたよ」
「そっか」
「長野のお土産買ってきたんで、名前刑事にも渡しますね!」
「ありがとう!」
食事も終わり、食後のコーヒーを飲んでいると、蘭はずっと疑問に思っていた事を名前に聞く。
「そういえば、名前刑事っていつも黒いスーツに黒いインナーじゃないですか?」
「えっ?」
「たしかに!名前刑事が明るい色のスーツを着てるの、見た事ないかも」
蘭の言葉に園子も同意する。
「そうだね」
「名前刑事なら、明るいグレーのスーツとかも似合いそう!」
「分かる!明るい色が似合うよね!」
「…そ、そうかな?」
「黒が好きなんですか?」
「…」
名前は、自分のスーツに視線を落とすと「好き、というか…願掛けみたいなものかな」と答える。
「願掛け?」
「…うん。私には、この手で絶対に捕まえたい犯人がいるんだ…。その犯人を捕まえるまで、黒を纏い続けたいなって…」
そう言ってうつむく名前に、蘭と園子は「名前刑事…」と心配そうに声をかけながら申し訳なさそうな顔をする。
「なーんてね!刑事ですもの、許せない犯罪者の一人や二人いるのは仕方ないよね!」
「名前刑事…」
いつもの様子に戻った名前を見て、蘭と園子はホッとした表情になる。
「私も、若い頃は明るい服とかもよく着てたけど、今は朝も忙しいし、何も考えずにパッと着られる黒をついつい選んじゃうんだよね」
「もったいないですよー!」
「今度の休みに買い物にでも行こうかな」
「それがいいですよ!」
「…」
そんな風に笑う名前を隣で見ていたコナンは、名前が黒いスーツを着ているのは何か理由があるんだと確信した。
正面に座っていた蘭と園子には見えなかったが、コナンの位置からはうつむいた時の名前の表情がハッキリと見えていたのだ。
悲しそうで、でも本当に悔しそうな、今まで見た事がない名前の表情を。
「苗字さん!これを見てください」
「…麻雀パイ?」
「はい。遺体が握り締めていました」
東京練馬区西大泉、憩いの森で刺殺体が発見され、名前と白鳥は現場検証をしていた。
「赤い丸に、裏にはアルファベットに黒い縦線が書かれてるね」
「何かのメッセージでしょうか」
「被害者の傷を見ると、犯人によるメッセージの可能性の方が高そうだね」
「ですね」
名前達は本庁に戻り、目暮に現場の状況と麻雀パイの事を報告する。
「何?麻雀パイだと?」
「はい。目暮警部、何か心当たりがあるんですか?」
「…いや、同じように被害者が麻雀パイを所持して刺殺された事件が神奈川でも起きたと聞いていてな」
「えっ!?」
目暮の話を聞いた高木が「え?本当ですか?実は僕も、静岡にいる同期からこの前同じ事を聞きました」と言った。
「警部、これってもしかして…」
「…ああ。連続殺人事件かもんな。しかも、広域の…」
そこに、松本が現れる。
「目暮、話は聞いたか」
「例の刺殺体の件でしょうか?」
「ああ。被害者は全員赤い丸とアルファベットに黒い縦線が書かれた麻雀パイを所持している。これは、同一人物による、連続殺人事件の可能性が高い。各県警と協力して捜査にあたる」
「分かりました」
松本は「そうだ。今回の事件、毛利にも声をかけよう」と提案した。
「毛利さんですか?」
「ああ。特別顧問として捜査に協力してもらおう」
「分かりました。後で毛利君には私から声をかけておきます」
「頼んだ」
次の日、同じような事件が小田原市の有料道路でも同様の事件が起こり、名前達は合同捜査会議の準備をしていた。
「各県警に連絡をして、それぞれ代表者を会議に参加するよう要請する」
「僕、他県との合同捜査って初めてです!」
「私もだよ」
「苗字さんでも初めてなんですね?」
「うん。広域連続殺人事件なんて、あんまり起こらないからね」
「それもそうですね」
名前は各県警の代表者の名前を確認する。
「神奈川県警が横溝重悟警部。たしか千速さんが前に話してたなー」
横溝重悟の名前を見つけて、名前は千速の事を思い出す。
「久しぶりに会いたいなー千速さん」
そのまま下を見て行き「静岡県警が横溝参悟…あれ?この2人って兄弟なのかな?」と同じ苗字の参悟を発見した。
「長野県警、大和敢助警部って…蘭ちゃんが言ってた大和警部か!」
大和の名前を発見し、名前は少し嬉しくなった。
「(でも、諸伏君のお兄さんの名前じゃない)」
名前は「(いつか会ってみたいなー、諸伏君の自慢のお兄さんに)」と思いながら仕事に戻った。
小田原市の事件から2日後、最初の合同会議が開かれる事になった。
「お疲れ様です」
「おはようございます」
「よろしくお願いします」
続々と各県警の代表の警部達が集まって来る。
「おはようございます。今回は合同捜査という事で、よろしくお願いします」
「ああ」
「苗字さん、やっぱり他県の警部さん達がこんなに集まってると緊張しますね…」
「たしかにね〜」
佐藤は「名前さんだって、もうすぐ警部になるんじゃないんですか?」と聞いた。
「え!そうなんですか?」
「この前大阪で警部候補の研修を受けてたじゃないですか」
「まあ、そうだね。いつかなる日がくるかな〜とは思ってるけど」
そんな話をしていると、大和が会議室に入って来た。
「あっ」
「え?」
「ちょっと、挨拶してくる」
「名前さん?」
名前は大和に駆け寄ると「初めまして、大和警部」と声をかける。
「あ?」
「私は本庁の苗字名前です。この前、毛利蘭ちゃんと江戸川コナン君が、長野でお世話になったと聞きました」
「ああ、あのへっぽこ探偵の娘とあのボウズの知り合いか」
「へ、へっぽこって…」
小五郎の散々な言われように、名前は思わず苦笑した。
「よろしく頼むぜ」
「はい!よろしくお願いします!」
名前は「あの、大和警部、長野県警に諸伏という苗字の刑事さんはいらっしゃいませんか?」と質問する。
「コウメイか?」
「コウメイ?」
「俺の小学生の時からの腐れ縁だよ。諸伏高明だからコウメイ」
「んん?」
名前がよく分からないという顔をすると「高明を音読みにするとコウメイだろ?あだ名なんだよ、昔からの」と大和が答える。
「な、なるほど!(零君のあだ名がゼロなのと一緒か)」
「今は新野署の警部だ。んで?コウメイに何か用か?」
「実は、私、諸伏警部の弟さんと警察学校時代の同期なんです。ずっと自慢の兄だって言ってたのでどんな方なのかなって思って」
名前がそう言うと、大和は驚いた顔をする。
「マジかよ。世間は狭いな」
「本当ですよね」
「ま、いつかどっかで会う事になるんじゃねーか?お互い刑事なんだからよ」
「それもそうですね。お会いできる日を楽しみにしてます」
「おう」