「なぜ、わざわざ別の場所に運んでから殺害したんだ?」
荻野と大和がそう聞くと、小五郎は「うっ…」と言葉に詰まる。
「それと…竜崎さんのダイイングメッセージどういう…?」
「そ、それはだ…な…それは…それは、おいおいと…だな」
説明のできない小五郎に、刑事達は呆れた声を出す。
「管理官…」
「うむ」
松本は立ち上がると、会議の内容をまとめる。
「被疑者にとって、6つの犯行現場に何か特別の意味があるか。あるとすれば、その意味するところが被疑者の手掛かりに結び付く可能性は高い。そして、6人の被害者…この6人は必ず被疑者とつながっているはず。6人に共通するものを見つけ出す事が、被疑者を突き止める一番の近道だ」
松本は、被害者の写真が貼られたホワイトボードを見ながら「それが毛利君の言う麻雀である可能性は、確かにある」と続ける。
「さらに、麻雀パイの裏に書かれたアルファベットと縦線の意味…。”七夕、きょう”のダイイングメッセージの意味も考えるように」
そう言うと、一度話を止める。
会議室に集まった刑事達を見渡すと「いいか諸君。被疑者はこの先も犯行を重ねる可能性が高い。警察の威信にかけても、それは阻止せねばならん!この際、ケチな縄張り意識や功名心は捨て、持てる情報は全て公開し、一刻も早くこの連続殺人犯を確保すべく、必検を期して捜査にあたってくれ」と言った。
「はい!」
会議が終わり、会議室から刑事達が出て行く。
「あ〜!トイレトイレ!漏れる〜!」
蘭とコナンが座っていたベンチの横を、山村が走って通り過ぎていく。
そんな山村に気づいた蘭は「終わったみたいだね、会議」とコナンに言う。
「みたいだね」
2人がベンチから立ち上がると、松本と目暮が蘭達の横を通る。
「あっ、松本警視!」
「んっ?」
「ご無沙汰してます。小百合先生、お元気ですか?」
「ああ、毛利の…。娘なら相変わらずだよ。じゃあ毛利、期待してるぞ」
松本が小五郎にそう言うと「はっ!不肖、毛利小五郎、ご期待に応えるべく誠心誠意、努力する所存であります!」と答える。
「うむ」
「お疲れ様です!」
そう言うとそこで解散した。
「あれ、千葉刑事痩せたんじゃない?」
「えっ、分かるかい?最近ダイエットしてるからね!」
コナンに言われた千葉は、嬉しそうにお腹を叩く。
「ほら、今、朝のテレビではやってるだろ?」
そんな千葉を、ニヤニヤした顔で高木が見ていた。
「痩せたっていやあ白鳥。おまえ逆に太ったんじゃねえか?」
「えっ、じょ、冗談はやめてください毛利さん。これでも週2回、ジムに通ってるんですから」
白鳥は焦った顔で自分の体を見た。
「私も最近食べ過ぎてる気がするから気をつけないとなー」
「何言ってるんですか!刑事は食べないとやってられないですよ」
「そうですよ、名前刑事。たくさん食べてください!」
名前がボソッとつぶやいた言葉に、佐藤と蘭が反応した。
「そうだよね〜!やっぱり食べないと体がもたないよね」
「この事件が解決したら、また一緒にケーキバイキングにでも行きましょうよ」
「いいね!」
「ケーキバイキングいいですね!うらやましいです!」
「蘭ちゃんも一緒に行く?園子ちゃんも誘って」
「わー!行きたいです!」
通路の奥にある自販機では、参悟と重悟が飲み物を買っていた。
「珍しいな、兄貴がブラック飲むなんて」
「ああ、最近医者に糖分を制限されてな。おまえこそ、甘いものは嫌いじゃなかったか?」
参悟は重悟の買った飲み物を見て、同じように質問をした。
「殺しが3件も続いたんだ。糖分でも摂らなきゃやってられねえよ」
「あの、横溝警部」
「あ?」
「んっ?」
荻野に呼ばれて参悟と重悟が一斉に返事をした。
「あっ、いえ、お兄さんの方で」
「ああ」
重悟はそう言うと前を向き直した。
「あの…あの子がさっき話してた江戸川コナン君?」
荻野は千葉と話をしているコナンを見て、参悟に聞く。
「ああ!毛利さんの推理をいつも聞いているせいか、時々あっと驚くようなヒントを出すんだ!」
「それに、面白い事によく気がつくんです」
佐藤が参悟達の話に入る。
「我々プロでも見落とすような」
「そうなんですか」
「ですよね、名前さん」
佐藤は名前にそう言うと、名前は「うん!コナン君は小学生なのにすごいよね〜」と同意する。
「でも名前さんだって、そんなコナン君と一緒によく事件を解決してるじゃないですか!」
「そうかな?」
名前は嬉しそうに笑うと、重悟の方を見て「そういえば、千速さん元気ですか?」と聞く。
「千速?知り合いなのか?」
「はい!小学生の時からの知り合いで」
「…ああ、前に千速の言ってた千速の弟の幼なじみか」
重悟がそう言うと「そうです!」と返事をする。
「そういや刑事だって言ってたな。おまえか」
「はい。最近忙しくて、千速さんと会えていないので」
「あいつならうるさいくらい元気だぜ」
「それなら良かったです!」
「まあ、この事件が片付いたら連絡するように言っとくわ」
名前は「ありがとうございます!」とお礼を言う。
次の日、昨日の捜査で分かった事を報告するために、簡易的な捜査会議が開かれた。
「えっ?麻雀はやらない?」
「ええ、聞き込みの結果、被害者は6人とも麻雀はやらないということでした」
捜査会議には、各県の代表で参悟、重悟、荻野、大和、そして山村が参加していた。
「残念ながら、毛利君の推理はハズレのようだな」
「ハァ…」
「完全に手詰まりだな」
「こんな時、工藤君がいてくれたら…」
目暮がボソッと言う。
「工藤というと、君がよく捜査協力してもらっている高校生探偵の工藤新一君か?」
「ええ、まあ…」
「そういえば、最近噂を聞きませんね」
「どうせ探偵ごっこに飽きたんだろ」
そんな重悟に、高木は「ああ、いえ、そんな事はありません」と否定する。
「この前も、帝丹高校の学園祭で事件を解決…」
「高木君!」
「えっ?あ!すいません、つい…!」
目暮は高木を止める。
「どういう事だ?」
「ああ…本人の希望で、彼が事件に関与した事は伏せているんです」
「なるほどな」
山村は「へえ、ずいぶん謙虚な人なんですね」と不思議そうに言う。
「最近、なぜかそうなったんだ。以前は人一倍、目立ちたがり屋だったんだがな」
「たしかに、事件解決後にすごいドヤ顔して、ファンレターたくさんもらった〜!って喜んでたなぁ」
「全然謙虚な人じゃないじゃないの、ソレ」
「高校生らしくてかわいいじゃないですか」
名前がそう言って笑うと、どこからか携帯の着信音が鳴り響く。
「ん?」
「マズいな、会議中は電源を…!」
「失礼、俺だ」
大和は山村の言葉を適当にあしらうと、杖を突きながら席を立つ。
「ああ、ああ…それで?何!?ああ分かった!」
そう言うと、大和は通話を切ると振り返る。
「いい知らせだ!連続殺人犯の可能性のある男が、米花市に現れるかもしれねえぜ」
「何だって?」
大和は目暮に近づくと、1枚の写真を差し出した。
「深瀬稔、27歳」
目暮は写真を受け取ると、松本に手渡す。
「碓氷峠で殺害された陣野修平さんを1年前にナイフで刺して大けがを負わせ、手配中の男だ。ヤツの恋人を部下にマークさせていたんだが、彼女が長野から都内に向かい、米花駅で降りたと連絡が入った」
松本達の机に刑事達が集まる。
「吉井リサ、21歳。長野市内のスナックで働いている」
そう言うと、大和はもう1枚の写真を撮り出して目暮に渡す。
「で?この深瀬って男が陣野さんを刺した動機は?」
「トロピカルランドで列に並んでいた際、陣野さんに喫煙を注意された事への恨みだぞうだ」
「トロピカルランド…あっ!」
高木は自分の席に戻って資料を見返す。
「高木君?何か分かったの?」
「もしかしたら…もしかしたら、被害者は全員同じ列に並んでいたんじゃないでしょうか?」
「何?詳しく説明しろ」
松本は高木に説明を求めた。
「あっ、はい!」
高木はホワイトボードを準備すると「被害者の傍にあった麻雀パイは2種類。陣野さんのピンズの1と他の人達のピンズの7」と図を描きながら説明を始めた。
「ここに、それぞれの麻雀パイの赤丸の場所を当てはめていくと…」
被害者の写真を、丸印の場所に貼る。
「被害者は、このような順番で列に並んでいたんじゃないでしょうか?」
「なるほど…」
「じゃあ深瀬が…」
高木の説明を聞いた松本は「よし目暮。部下を連れて、大和警部に同行しろ」と言った。
「…」
名前はホワイトボードの図を見ながら「…立ち位置…七夕…きょう…」とつぶやきながら考えを巡らせていた。