17

「名前さん…」
「ごめんね…」

佐藤はうつむいていた顔を上げると「どうして名前さんが謝るんですか…?」と聞く。

「美和子ちゃんに、そんな辛い思いをさせてごめんね」
「名前さんは悪くないです!私が…」

手当てを終えた名前は、美和子の両手を優しく包み込む。

「美和子ちゃん…ちゃんと高木君と向き合ってあげて」
「え?」
「あの変装した姿、たしかに陣平にそっくりで私もびっくりした」
「…」
「だけど、あれは高木君であって陣平じゃないんだよ…。陣平と重ねたら、高木君が可哀想だよ」

佐藤は「…私、ちゃんと高木君の事は高木君だって分かってます」と答えた。

「…でも、あの時…私が車の中から助けようとしたのは…」
「美和子ちゃん…」
「こんなんじゃあ高木君に悪いですよね」
「そんな事ないよ!美和子ちゃんは幸せになっていいの。でもそれは、陣平の事を忘れ「何でそんな事言うんですか!!」

名前が言い終える前に佐藤が言葉を遮る。

「名前さんに忘れろなんて言ってほしくありません!」
「…美和子ちゃん」
「名前さん…すみません…」
「…ううん。あのね、美和子ちゃん。陣平も言ってたけど、忘れる必要はないんだよ」
「…」
「吹っ切れるかどうかは自分自身の問題。本当に、忘れる必要はないんだ」

名前がそう言うと、佐藤は「どういう意味ですか?」と聞く。

「死んだ人は、人の心の中でしか生きられないから」
「…」
「さ、捜査に合流しよう」
「はい…」



現場付近のビッグ電気で、子ども達が回していたビデオテープを確認していると聞いた名前達は急いでビッグ電気に向かう。
ビッグ電気のテレビコーナーの前にいる目暮達を見つけると、合流する前に目暮の大きな声が聞こえて来て足が止まる。

「何ィ!?また爆弾が破裂しただと!?」
『はい…今度は杯戸町公園の電話ボックスが…幸い負傷者は出ませんでしたが、爆弾の形態からして恐らく同一犯かと…』
「おい、最初に爆発が起きたあの交差点から、杯戸町公園に向かう道っていったら…」
「ス、スピリッツの優勝パレードの道順です!」
「つまり、被疑者の狙いは私達警察官じゃなく、東京スピリッツに対する度が過ぎた嫌がらせだったってわけね…」

佐藤が目暮と高木の会話に混ざると、2人が振り向く。

「さ、佐藤さん…」
「大丈夫かね?火傷を負ったそうだが」
「名前さんに手当てをしてもらったので問題ありません。行けます!」

佐藤の言葉に2人が名前の事を見る。

「そうですね。あまり動かさなければ大丈夫だと思います」
「そうか」

目暮は頷くと「よーし、爆弾犯の目的は分かった!しかも、まだ他にも爆弾を仕掛けた可能性もある!」と、新たな指示を出す。

「この近辺の警察官を総動員し、パレードのコースに先回りして近くにいる一般人を避難させ、被疑者確保及び、爆発物の発見に全力を尽くすんだ!!急げ!!」
「ハッ!!」

目暮の指示を聞き、集まった刑事達が一斉に動き出す。

「念のため、苗字君は爆発物処理班に連絡して、待機してもらってくれ!」
「分かりました」
「君のは?」
「もちろん、毎日持ち歩いています」
「分かった。高木君はここに残って、そのビデオの検証を。何か分かったらすぐに連絡をするんだぞ!」

高木は「あ、でも僕も現場に…」と言いかける。

「ダメよ。あなたはここで待ってなさい」
「さ、佐藤さん…」
「後で話があるから」
「え?」

名前は、爆発物処理班に連絡を入れると、東京スピリッツのパレードコースに向かう。
持ち場で待機していると、名前の携帯が鳴る。

「もしもし?」
『あ、名前刑事?』
「コナン君、どうしたの?」
『犯人の狙いが分かったよ』
「本当!?」

コナンの言葉を聞いて、名前は思わず大きな声を出す。

『今回の狙いは、警察官でもスピリッツに対する嫌がらせでもないよ』
「どういう事?」
『ボク達、佐藤刑事とポストの前で会ってから光彦が持っていたビデオで撮影を止めるまでずっとポストの前にいたんだ。ボク達がいたポストに表示されている回収時間は、休日だと午後2時30分頃なんだけど、郵便屋さんは回収に来なかったんだ』
「そうなの?」
『うん。パレードでは片側車線しか使ってないから回収に来られないはずがないよ。犯人は、3年前に起きた事件の犯人を装って警察の目線をポストから逸らしたかったんだよ。警察にFAXをわざと流してね』
「…ッ」

名前は握った拳に力を入れて「そ、そんな事のために…」と小さな声でつぶやく。

『名前刑事?』
「…ううん、それで?犯人の本当の狙いって?」
『この辺のポストを回収コースを調べてみたんだけど、優勝パレードのコースからどんどん離れてるんだ。高木刑事に調べてもらったけど、今日この近辺で交通事故や道路工事はなかったから郵便車が回収にこなかった原因は、郵便局を狙った強盗だと思うよ』
「そういう事か…」
『多分、この後米花郵便局に盗んだ郵便車で襲撃するつもりだよ』
「分かった!ありがとうコナン君」

名前は電話を切ると佐藤に連絡をして、米花郵便局に向かった。



米花郵便局では、すでに高木から連絡を受けていた目暮と白鳥が職員達に事件の説明をしていた。

「目暮警部!」
「苗字君、聞いたか?」
「はい!コナン君から連絡をもらいました」
「郵便強盗が襲撃に来る前に、我々が職員に変装して確保する」
「分かりました」

佐藤や他の警察官達が米花急便局に集まると、名前達は職員の制服を借りて変装をする。

「本日2回目の変装ですね」
「本当だね」
「そろそろ来る頃でしょうか」
「うん…」

名前達は、襲撃しに来た犯人達に見つからないように、郵便局の奥に移動して隠れた。



数分後、郵便物の回収に出ていた郵便職員が米花郵便局に戻ってくると、中にいる職員に声をかける。

「あ、あの…」
「ああ、筒見君どうした?回収した郵便物なら裏へ回って」
「あ、いえ…。とても奇妙な郵便物が大量に混ざっていまして…」
「え?」
「い、今すぐみんなに見てほしいんですが、正面入り口を開けていただけますか?」
「あ、ああ、分かったよ。今、開けるから」

正面入り口を開けてもらい中に入る。

「ど、どうもすみません…」
「ああ、構わんよ」
「で?何なんだい?その奇妙な郵便物って?」
「そ、それは…」

後ろからついて来ていたもう一人の郵便職員が、前を歩いていた筒見をドンッと押す。

「わっ!」
「お、おい…」

職員は筒見と一緒に床に転び、もう一人の職員を見る。

「それは…」
「え?」

その男は拳銃を取り出すと「こいつだよ、郵便屋さん?」と言って、2人に向かって銃を構える。

「け、拳銃!?」

男の後ろには、仲間の男達が4人いて、全員が拳銃を取り出す。

「おら!奥のヤツも手を上げたまま前に来い!!俺達は郵便局強盗だ!!」

男はそう言うと「さあ出してもらおうか、金を…。五、十日の前の日だから、たんまり用意してあるはずだぜ?」と続ける。

「なるほど、だから東京スピリッツの優勝パレードと重なるこの日を選んだんですね。休日で局員が減るこの日を」

変装した白鳥が、手を上げて前に出ながらそう言う。

「そして、FAXや爆弾を使って3年前の爆弾犯を装い警察を集め、今度はスピリッツへの嫌がらせだと見せて警察を攪乱し、パレードコースを遠ざけ、そのスキに乗っ取っておいた郵便車でここを襲撃したというわけか」
「まあ、あまり知的な計画だとは思えませんが」
「おい、何をくっちゃべってんだ!?早く前に集まれ!!」

郵便局強盗の男が叫ぶと「だそうだ。みんな、早くしろ」と、変装した目暮が言う。

「さあ、急いで」

続けて白鳥が言うと、机の下に隠れていた職員に変装した名前達が顔を出す。

「お、おい…」

ゾロゾロと人が集まって来るのを見た男は「ど、どうなってんだ!?日曜なのに、何でこんなに…」と焦った声を出す。

「あれ?知らなかったんですか?」
「え?」
「同じ公務員でも、決まった休日がある郵便局とは違って、我々警察は24時間、年中無休なのよね!」

名前と佐藤はカツラを取って、警察手帳を見せる。

「デ、デカか!?」
「目暮警部!郵便車の中で縛られていた郵便局員は全員保護しました!」
「よし!!」

高木の報告を聞いた目暮は、全員に「逮捕だ!!」と指示を出す。



郵便局強盗は逮捕され、爆弾を仕掛けて別の場所で仲間を待っていた強盗犯の一味もめでたくお縄になった。



>> dream top <<