19

救急車で運ばれた白鳥を見送った後、戸崎から名前へ、そして目暮から佐藤の携帯へ電話がかかってきた。

『戸崎です。白鳥警部が爆発に巻き込まれたと聞きましたが、本当ですか?』
「はい。たった今救急車で搬送されていきました。そちらの状況はどうなっていますか?」
『警視庁管轄内の全ての警察署に一斉にFAXが送られてきました。内容は、ご存知ですね』
「…はい。3年前の事件、公開された予告FAXは前半の部分だけなので、こんなに酷似した文章を模倣犯に書く事はできません。…これは、7年前と3年前の爆破犯によるものです」
『…分かりました。松本管理官に伝えておきます。それで、あなたはどちらに向かうつもりですか?』

名前は白鳥から受け取った紙を見ながら「…この文章を解読します。爆弾は2つ仕掛けらていて、1つは明日の正午です。それまでに、まずは最初の爆弾の仕掛けた場所を見つけます」と答えた。

『分かりました。ただ、単独行動は禁止です。必ず誰かと行動を共にしてください』
「…はい」

そう返事をした名前は電話を切った。
そこに、千葉が車に乗って現れ「苗字さん、佐藤さんに言われて車を回しましたけど…」と控えめに声をかけられる。

「ありがとう」
「あ、悪いわね千葉君。じゃあ私は捜査に」
『お、おい佐藤君!?佐藤君!?』

佐藤は目暮の呼びかけは無視すると電話を切って、車に乗り込んだ。

「名前さんも乗ってください」
「うん」

佐藤の車に名前も乗り込むと、松本から一斉に無線が入る。

『至急、至急、警視庁から各局!!場所は不明なるも、爆弾を仕掛けた旨の犯行予告あり!!爆弾は二つ!爆発時間は、明日正午12時と同日15時と思われる!先の事件の例からして、信憑性が極めて高い!厳重に警戒すると共に、被疑者の必検を期して捜査に当たれ!!むろん特異事項は即報せよ!!』

松本から一斉に内線が入る。

「…」
「(陣平…研ちゃん…)」
「ねぇ、教えてくれない?」
「!?」

後部座席から聞こえてくるはずのない声が聞こえて来て、名前と佐藤は後ろを振り返る。

「コナン君!?何でいるの?」
「どうしてこの爆弾犯は、警察を目の敵にしてるの?」
「いつこの車に!?」

名前と佐藤の質問には答えず、コナンは「ねぇ、答えてよ」ともう一度質問をする。

「…7年前の事件の時、爆弾犯は2人いたの。爆弾が仕掛けられた場所は、都内にある二つの高級マンション。要求は10億円で、住人が1人でも避難したら即、爆発するという条件だったの」

名前が7年前の事件を説明し始める。

「一つは時間内に解体できたけど、もう一つは手間取って、仕方なく爆弾犯の要求を呑む事にして、起爆装置のタイマーは爆弾犯のリモコンによって止められたの。そのおかげで、住人は全員避難できたんだ」

名前は膝の上に置いた手をギュッと握り締めると「だけどその30分後に、突然爆弾犯の1人から警察に電話が入ったの…。爆弾のタイマーがまだ動いてるってどういう事だ?ってね」と続ける。

「多分、その頃テレビで流れた事件を振り返るVTRの部分だけを観て勘違いしたんだろうけど、警察は爆弾犯を確保する絶好のチャンスだと思って話を引き伸ばして逆探知に成功したの。それで、電話ボックス内にいる爆弾犯を発見。でも、運悪く慌てて逃げた爆弾犯は、逃走中に車にはねられて死亡したんだ…」
「じゃあ、どうして爆弾犯がもう1人いるってわかったの?」

コナンにそう質問をされた名前は、眉間にシワを寄せながら「止まっていたはずのタイマーが再び動き出して、爆弾が爆発したの…。その時、現場で爆弾を解体していた爆発物処理班を巻き込んで…」と説明する。

「事故死した爆弾犯の住所はすぐに突き止めたけど、分かったのは誰かと2人で住んでいたことだけ。多分、もう1人のその爆弾犯は思ったでしょうね。我々警察が、ウソの情報をテレビで流し、仲間を罠に掛けて殺したってね…」

最後に佐藤がそう言うと、コナンは「それって、逆恨みじゃない?」と言った。

「…ええ。そうなのよ」
「逆恨みなの…。7年前も3年前も、その逆恨みで…私は大切な幼なじみを2人も失ったんだ」

名前の言葉に驚いたコナンは「えっ…」と声を出す。

「…よし、コナン君もいる事だし、さっさとこの暗号を解いて爆弾の仕掛け場所を特定しよう」
「協力してくれるわよね、コナン君?」
「うん」

名前はグローブボックスから地図を取り出すと「剛球豪打のメジャーリーガー…延長戦の始まりだ…延長戦…、延長線…?」とつぶやいた。

「3年前の事件で爆弾が仕掛けられたのは、杯戸町にある大観覧車と米花中央病院だったよね?」
「うん。それらが面している道の延長線上で交差する場所は…南杯戸駅!」
「道が交差しているという事は、踏切という名のストッパーがあるわね!」

コナンは「鋼のバッターボックスは、鉄の箱…つまり電車の事だろうね。血のマウンドに登れって事は、赤い車体の東都線の上り電車。南杯戸駅から東京へ向かう、東都線の車内に仕掛けられてる可能性が高いよ」と推理する。

名前達が爆弾の仕掛け場所を推理していると、コナンの探偵バッチから高木と子ども達の会話が聞こえてきた。
高木達も名前達と同様に、東都線の車内に爆弾が仕掛けられていると結論付けていた。

『た、大変だ…早くこの事を苗字さん達に…!』
「大丈夫、聞こえたよ!」

名前はコナンから探偵バッチを受け取ると「こっちも同じ意見だよ!私は目暮警部に連絡して捜査員を向かわせるから、高木君は爆発物処理班に連絡をしてね!」と指示を出す。

『分かりました!』



捜査員が東都線の車内を調べた結果、審物を発見したが、中身は爆弾ではなかった。

「え?偽物!?中身は爆弾じゃなかったの?」
『そうみたいです…』
「それなら、本当の爆弾の仕掛けた場所はどこなの!?」

名前は「(犯人は東都線の車内を捜しに来ると思って、わざとあの文章に…。あの文章には別の意味があるって事だよね…)」と、もう一度FAXの内容を見返す。

「とりあえず、高木君。こっちと合流して」
『分かりました』

その後、東都線だけではなく都内を走る赤い車体の電車を調べたが、見つかる爆発物らしき物は全て偽物だった。
松本の指示で、都内にある大きな野球場も調べたが、何も発見されなかった。

『という事で、赤い車体、野球場の線はなさそうですね』
「分かりました…」

名前は電話を切ると、合流した高木と佐藤に「赤い車体、野球場、どっちもなかったみたい」と伝える。

「変ですね。この文章だと野球場にも探しに来ると予想できるのに何もないなんて…。警察をおちょくるなら偽物を仕掛けてでも…」
「ふあ〜…。きっと探しに来ないと思ったんですよ。シーズンオフで、大きな試合は組まれてませんから」

高木があくびをしながら答えると「さすがに眠くなってきたね」と名前が言う。

「とにかく、これ以上あの子達を引っ張り回すわけにはいかないわね」

24時間営業のファーストフード店の中にいる子ども達を見ながら、名前は「あんまり寝てないみたいだしね」と苦笑した。

「そういえば、白鳥君の容態は聞いてくれた?」
「あ、はい。白鳥さんに付き添ってる由美さんが教えてくれました。手術は成功し、今は意識が回復するのを待っていると」
「そう、良かった」
「あ、それと…」

そこまで言って高木は続きを言うのをやめた。

「ちょっと、”それと”何なのよ?」
「あ、いえ…別に大した事じゃありませんから…」

佐藤は車のドアを開けると「じゃあ、私は捜査を続けるから、高木君は子ども達を家に送り届けて仮眠をとってから目暮警部の手伝いをしてなさい!」と高木に指示を出す。

「あ、でも僕もこのまま捜査を…」
「バカね!寝不足でフラついてる刑事は足手まといなだけよ!分かったわね!」
「は、はい…」

佐藤は名前の方を見ると「名前さん、行きましょう」と声をかける。

「…少し考えをまとめたいから私はここに残るね」
「分かりました」

佐藤が走り去った後、高木と一緒に店の中に戻った名前は「さあ、みんな。そろそろ車に乗ろうか」と言いながら寝ている歩美達を起こす。
起きた子ども達を順番に車に乗せている高木を見ていた名前に、コナンが話しかける。

「名前刑事…」
「ん?どうしたの、コナン君」
「…昨日、車の中で話してた、今回の爆弾犯の過去の事件で亡くなったのが…その…」

言いにくそうにするコナンに、名前は「私の2人の幼なじみだよ」と代わりに答える。

「ボク…前に名前刑事に幼なじみの人の話を聞いた時に、無神経な事言っちゃったかも…」
「何言ってるの、コナン君!そんな事言ってないし、コナン君は何にも知らなかったんだから気にしないで!」
「でも…ごめんなさい…」

落ち込んだ様子で謝るコナンに、名前は目線を合わせるためにしゃがみ、コナンの頭を撫でながら「ありがとう、コナン君」と言って微笑む。

「…ボクに何かできる事ある?」
「それなら、この爆弾犯を捕まえられるように、知恵を貸してほしいな。3年待って、やっと行動を起こしたんだ…。絶対に、今回で捕まえたい…。だから、お願い」

真剣な顔でそう頼む名前に、コナンは「…うん!必ず捕まえようね」と答えた。



>> dream top <<