20

高木と子ども達を見送った後、名前はコーヒーを買ってFAXを見る。

「赤…赤…。”血塗られたマウンドに登れ…”」

名前はこの文章に引っ掛かっていた。

「3年前と同じで2つの場所に爆弾を仕掛けたのなら、1つ目の場所は私達を誘い出すために分かりやすい場所に仕掛けてあるはず…。警察官を閉じ込めて、あのヒントを見せるために…」

名前は「(だからこそ、もっと単純に考えればいい気がする…。本命の爆弾を仕掛けた場所のヒントを見せるために…誰でも簡単に分かる場所…赤、登る、鉄の…箱)」と考えながらFAX用紙から店内に設置されているテレビ画面の方に目を向ける。

『今日、東都タワーでは新しく始まる展示を一目見ようと大勢の人達でにぎわっています!』
「そ、そっか…!東都タワーのエレベーター!東都タワーも赤いもんね!」

名前は店を飛び出すと、タクシーに飛び乗って東都タワーを目指した。



東都タワーに到着すると高木の車を見つけ、名前は車に駆け寄った。

「高木君!」
「苗字さん!」
「あれ?子ども達もまだ一緒なの?」

名前は、車の中にいる子ども達を見ながら高木に聞く。

「は、はい。コナン君から色々話を聞いてたら、帰すに帰せなくなってしまって…」
「まったくもう…」
「す、すみません」

高木は「苗字さんがここにいるって事は、あのFAXの意味が分かったって事ですか?」と聞いた。

「うん。血塗られたマウンドは赤、登るはそのままの意味で、鋼のバッターボックスは鉄の箱。つまり、赤い東都タワーを登るエレベーターの事だよね」
「さすが名前刑事だね!」

名前が「ありがとう」と答えると同時に、小さな爆発音が聞こえてきた。

「な、何!?」
「爆発ですか!?」
「確認してくるから、少しここで待ってて!」
「わ、分かりました!」

名前は東都タワーの職員に状況を確認する。

「どうしたんですか?」
「それが、さっきエレベーター付近で爆発が起きまして、エレベーターが止まってしまったみたいです」
「止まったエレベーターはどこですか?」
「最上階から下りて来る途中だったので、真ん中の展望台の辺りだと思います」
「分かりました。そしたら確認してくるので、職員の方々はお客さんを避難させてください!」
「わ、分かりました」

名前は止まったエレベーターに急いで向かった。

「(やっぱり…3年前と一緒だ…)

名前がエレベーターの前に到着する前に、高木が合流する。

「苗字さん!」
「高木君!」
「苗字さんもエレベーターですか?」
「うん!高木君も?」
「はい!子どもが閉じ込められているみたいで」
「そうなの?急ごう!」

名前と高木が止まったエレベーターの前に到着すると、そこには数人が集まっていた。

「こ、これですか?止まったエレベーターは?」
「ええ、最上階から下りて来て、この真ん中の展望台に着く寸前で止まってしまったんです」

名前は隙間からエレベーターの中を覗く。

「乗っていたのは子ども1人なんですが、母親が言っても怖がっちゃって」
「朱美!朱美!」
「うーん…この幅じゃ、大人が入るのは無理そうですね」
「何してるの!?早くこっちへ来なさい!」

女の子の母親が、隙間から手を伸ばして名前を呼ぶ。

「うっうっ…」

しかし、女の子はぬいぐるみを抱っこしたまま泣いているだけで、動こうとしない。

「じゃあ、ボクを持ち上げて!」

高木の後をついて来ていたコナンが声を上げる。

「子どもなら入れるでしょ?」
「コ、コナン君!?」
「な、何してるの!?危ないでしょう!」

名前はコナンと目線を合わせるためにしゃがむ。

「私は知恵を貸してとは言ったけど、危ない現場に一緒に来てとは言ってないよ!何が起こるか分からないのに、コナン君を行かせられないよ」
「でも、ボクが行くのが一番早いよ!それは名前刑事だって、分かってるでしょ?」
「そ、それは…」
「こんな所で押し問答している場合じゃないよ!早く女の子を助けないと!」

コナンの真剣な顔を見て「…とても不本意だけど、分かりました」と言った。

「ホラ、大丈夫!怖くないだろ?」

名前がコナンを抱っこすると、コナンはそのままエレベーターの中へ入って行く。

「さぁ、ママの所へ帰ろうぜ!」
「う、うん…」
「よーし、いい子だ!」

コナンに連れられて女の子が動き始めた。
女の子が出てくると、名前が女の子を抱っこしてエレベーターの中から降ろす。
その瞬間、ボンッという爆発音が聞こえ、エレベーターを支えていたワイヤーが切れた。

「え?」
「わっ」

支えを失ったエレベーターは、コナンをカゴの中に取り残したまま落下していく。

「コ、コナン君!?」
「くそっ!!」

名前と高木が必死で手を伸ばすがコナンには届かずそのまま落ちて行く。

「コナン君!!」

エレベーターが落ちきる前に、名前と高木はエレベーターのカゴの中に滑り込んだ。



『で?カッコつけて出て行ったくせに、コナン君とエレベーターに閉じ込められちゃったってわけね』

子ども達が乗っていた車に合流した佐藤から、高木に連絡が入る。

「す、すみません…」
『名前さんも一緒にいるの?』
「はい。苗字さんと僕とコナン君の3人です」
『分かったわ。それより、本当にそのエレベーターに爆弾は仕掛けられてないのね?』
「は、はい…中には」

高木が佐藤と電話をしている間に、名前はコナンの事を持ち上げてエレベーターの天井の非常口を開けさせる。

「気をつけてね」
「うん」

コナンは時計型麻酔銃についている明かりをつけると、カゴの上部を確認していく。

『そこ、今どの辺か分かる?』
「た、多分ロープが全部切れて非常停止装置で真ん中の展望台と1階の中間くらいで止まってるかと…。こりゃー僕達も天井に登ってレスキュー隊を待つしか…」

高木がそう言うと、コナンが「ダメだよ!天井に登っちゃ!!水銀レバーが作動しちまう!!」と叫んだ。

「…えっ」
「す、水銀レバー?って何ですか?」

高木に聞かれた名前は「…爆弾の起爆装置の一部だよ。少しの振動でも揺れて、中にあるレバーに玉が触れると爆発する仕掛け」と答えた。

「このエレベーターどころか、東都タワーごと吹っ飛んじまうようなどでかい爆弾のね」

コナンが名前の説明に付け加える。
エレベーターの上部に仕掛けられた爆弾のタイマーは1:40:37を示していた。

「ば、爆弾!?このエレベーターの天井に!?」
「…」
「うん!ボク、これとよく似た爆弾をテレビで観た事あるんだ!片方の液体だけならなんともないけど、もう片方と混ざるとすごい強い爆弾になるって言ってたよ!」
「だ、だったらなおさらレスキュー隊にきてもらった方が…」

高木の言葉に「無理だよ…。水銀レバーが仕掛けられてるって事は、さっきエレベーターが落下した振動でスイッチが入ったって事。少しでも揺れたらその時点で爆発する」と名前が言う。

「うん。…だから名前刑事達がこの天井に登ったり、ロープで降りて来たレスキュー隊がここに着地したりした時に揺れたらドカーンだよ!」
「そ、そんなにすごいんですね、水銀レバーって…」
「…あいつ…」

名前は無意識に握っていた拳に力を入れる。

「(という事は…やっぱりこのエレベーターの中に警察官を閉じ込めて…)」
「だったら上のエレベーター口からロープを降ろしてもらって」
「なんかそれもダメみたいだよ」
「え?」

コナンはそう言うと、爆弾の傍に設置されている盗聴器を見る。

「爆弾のそばに盗聴器が仕掛けられてる。きっと爆弾犯はどこかで聞いてて、ボク達がここを離れて声が聞こえなくなったら爆発させる気なんだよ」
「じゃあ、どのみち八方ふさがりってわけか…」
「いや、手はもう一つ残ってるよ」

コナンは「ボクがこの爆弾を解体するんだよ!上から爆弾処理の道具を降ろしてもらってね!」と明るく言い放った。

「バ、バカな事言わないで!!」

そんなコナンに、名前は「小学生に爆弾の解体ができるわけないでしょ!!」と怒鳴る。

「…でも、名前刑事が教えてくれるなら」
「え?」
「それに、爆発物処理班の人も外にいるでしょ?指示をもらえたらボクにだってできるよ」
「そ、それは…」
「苗字さん…」

天井に座っているコナンは、真剣な顔をして名前の事を見つめる。

「名前刑事、いつも持ち歩いているんでしょ。あの解体道具」
「…」
「えっ?そ、そうなんですか?」
「大丈夫。ボクを信じて、名前刑事」
「…私の解体道具よりも、爆発物処理班の人の持っている道具の方が使いやすいと思うよ。これは、結構クセがあるからね」

名前がそう言うと、コナンはニッと笑った。



>> dream top <<