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名前は外にいる爆発物処理班の隊長に連絡を入れて、解体道具を降ろしてもらうよう要請をした。

「ゆっくり降ろせよ!そーっと、そーっと!」

エレベーター口から爆発物処理班が解体用の道具を降ろしていく。

「オーライ!オーライ!とっ!」

コナンがそれを受け取るのを確認すると、外では「機材の受け渡し完了しました!」と隊員が班長に伝えていた。

『よーし、まずは感光起爆装置装置から取り除こう!苗字なら分かるよな?』
「はい、大丈夫です」

班長は名前に電話で指示を伝える。

『今から1分後、エレベーター内の明かりを消すから赤外線暗視スコープを装着し、暗くなったら水銀レバーの右側にあるカバーを外すんだ!水銀レバーに触れないようにな!』
「分かりました」
『苗字、おまえなら問題なく解体できるだろう』
「…3年前の爆弾と酷似しているので、解体自体は問題ないと思います」

電話口で指示を出している班長は、3年前と7年前の事件を知っているので『…ああ。とにかく、解体する事にだけ専念するんだ』と念を押した。

「…はい」

1分が経ち、エレベーターの中の明かりが消える。

「コナン君。まずは水銀レバーの右側にあるカバーを外して、光電管から伸びているコードを切って」
「了解!」

コナンはカバーを外して光電管を見つけると、そこから伸びているコードを切る。
その後も、班長からの指示を名前経由でコナンに伝えていき、爆弾の解体はどんどん進んでいく。

「よし、順調だね…」
「このままなら余裕で解体できそうですね!まだ時間は50分以上ありますしね!」

高木がそう言って喜んでいる姿を見て、名前は「(…このまま何も出なければね…)」と心の中で思う。

「(それに、もう一つの爆弾の仕掛け場所…。”剛球豪打のメジャーリーガー…延長戦…出来のいいストッパー…逆転…。もしかして、もう一つの爆弾の場所は…)」
「苗字さん…?」

名前がもう一つの爆弾の仕掛け場所を考えていると「ねえ、名前刑事、高木刑事…」とコナンが2人の名前を呼ぶ。

「ん?」
「えっ?」
「ちょっと相談があるんだけど…」
「どうしたの?」

名前が聞くと、コナンはタイマーが表示されている液晶に表示された文章を読み上げる。

「”…勇敢なる警察官よ、君の勇気を称えて褒美を与えよう…”」
「えっ…」

名前は、コナンの言葉を聞いて持っていた携帯電話を落とした。

「”…試合終了を彩る大きな花火の在処を、表示するのは爆発3秒前…。検討を祈る”」
「な、何だいそれ?」

コナンは「今、この爆弾の液晶に表示された文章だよ」と答える。

「それって、ど、どういう意味なんだい?」
「そのまんまだよ。もう一つの、もっと大きな爆弾の仕掛けられた場所のヒントを示すのが、この爆弾の爆発3秒前って事」
「そ、それって…もしかして…」

高木は名前の方を見るが、名前は固まったまま何も言わない。

「…うん。3年前、松田刑事が亡くなった時と同じだね」
「…陣平…。やっぱり…犯人の狙いはこれか…」
「苗字さん…」

コナンはエレベーターの天井から顔を出すと「ボク、そのヒントを見たいんだけど、いいかな?」と言った。

「そ、それは…」
「…解体して液晶がオフになったら、もうそのヒントを見る事はできなくなる。ヒントを見るって事は、つまり陣平と…松田刑事と同じ道を歩むって事になるけど、コナン君はそれでいいの?」
「…うん」
「コナン君…」

名前は高木の事を見ると「高木君は?」と聞いた。

「ぼ、僕は…警察官になると決めた時から、いつかこういう日も来るんじゃないかって覚悟はしていたので…。ただ、コナン君や苗字さんは…」
「何言ってるの、私も警察官だよ。私はいいけど、コナン君よ…。なんとかコナン君だけでも避難させられないかな…」
「上からロープを垂らしてもらって、それにコナン君の体を縛って上げてもらうとか!」

そう言った高木に「それじゃあヒントは誰が見るの?ボク以外、ここでヒントが見れないでしょ」とコナンが言った。

「す、水銀レバーのコードを切ったら!」
「水銀レバーのコードは、液晶パネルの電源を切るコードの後なのよ。液晶パネルのコードを切っちゃったらヒントが見れなくなっちゃうからダメね」
「そ、そんな…」
「ボクの事は気にしなくて大丈夫だよ」

コナンは明るい声でそう言った。

『…もしもし!!もしもし!!』

高木は名前の落とした携帯を拾うと「す、すみません!」と応えた。

『やっと返事をしたな!よし、続けるぞ!』
「す、すみません…コードは切れません…」
『なにぃ!?コードを切れないだと!?残りは3本だけだぞ!?』

高木の返事を聞いた班長は『まず、液晶パネルの電源を切るための黄色いコード!次に水銀レバーの白いコード!そして、遠隔操作用に設置してある黒いコードの順に切断すれば、爆弾は完全に止まる!ここまで出来て、どうしてそれができないんだ!?』と叫んだ。
爆発物処理班の隣で話を聞いていた佐藤が、班長の携帯を奪う。

『高木君何してるの!?早く切りなさい!!』
「ダメです、切れません」
『何言ってんの!?時間はあと10分しか…』
「”…勇敢なる警察官よ、君の勇気を称えて褒美を与えよう。試合終了を彩る大きな花火の在処を、表示するのは爆発3秒前、健闘を祈る”」

高木は「これが液晶パネルに表示された文字だと、コナン君が言っていました」と佐藤に伝える。

「苗字さんとも話して、なんとかコナン君だけでも避難させたいんですが…もう一つの爆弾の場所を特定し、多くの被害者を出さないためにはコナン君がヒントを見て、僕が電話でそれを伝えるしか方法はないみたいです」

高木は名前の事を見ると、うなずいた。

「すみません。でも、佐藤さんなら…分かってくれますよね」
『っ…』

高木は電話を切ると、名前に携帯を返す。
携帯を受け取ったタイミングで、今度は戸崎から電話がかかってくる。

「もしもし?」
『苗字さん、今すぐ爆弾を解体してください』
「戸崎さん?」
『あなたが爆弾と一緒に東都タワーのエレベーターの中に閉じ込められていると聞きました。時間がありませんよ、早く解体をしてください』

名前は「…それはできません」と答える。

『なぜですか?』
「…私も陣平と同じです。大勢を助けるためになら、喜んで同じ道を選択をします」
『…私は…あなたを松田君と同じ道を辿らせるために、あの日、松田君にあなたを託されたわけではありません…』
「そっか…。だから3年前のあの日、朝から私を本庁から連れ出したんですね」
『前の日の雑居ビルでの事件で、犯人から松田君を庇ったあなたを、彼は心配していました。自分のせいで、この敵討ちに巻き込んだ事を後悔していると…』

戸崎の言葉を聞き、あの日、なぜ戸崎が朝から事情聴取に連れ出したのかの理由が分かり「謎が解けました。私は、そんなところでも陣平に守られていたんですね」と笑った。

『あなたには生きていてほしいんです。だから、爆弾を解体して生きて戻って来て下さい…』
「戸崎さん、ごめんなさい。たくさんの事を教えて下さって、本当にありがとうございました」
『…本当に…あなたという人は…』
「エへヘ、ありがとうございます」

名前はそう言うと、そのまま通話を切る。

「…苗字さん、すみません」
「何で高木君が謝るの?」
「だって…苗字さんは松田刑事の敵を…」

高木がそう言うと、名前は「…仕方ないよ。これが私達3人の運命なら、私達らしいなって思うし」と言った。

「3人?」
「陣平と研ちゃん。7年前の爆弾事件で巻き込まれた爆発物処理班の隊員の1人だよ」
「そ、そうだったんですね…」
「幼稚園から警察学校卒業までずっと一緒だったんだよ?仲良すぎって、周りからずっとからかわれてたんだー。死に方も一緒で…これじゃあ、この先もずっとからかわれてそうだ」

名前はそう言って微笑んだ。

「苗字さん…。もっと、苗字さんのそういう話が聞きたかったです…」
「…また話せるよ」
「…はい」
「高木君も、ごめんね」
「気にしないでください」

高木は「でも、結局二つ目の爆弾の仕掛け場所って、どこなんでしょうね?」と言った。

「ああ、それなら検討はついてるよ」

天井から顔を出したコナンがそう言うと「うん、そうだね」と名前も同意した。

「え!?そうなんですか?」
「うん。ただ、あまりにも候補が多すぎて…って、この会話聞かれたらアレだよね」
「大丈夫!盗聴器は解体道具の中に隠したから、今はほとんどこっちの声は聞こえてないと思うよ」

コナンがそう言うと、名前は「それなら良かった」と言って話を続ける。

「あの暗号文からここと、爆破予定時間を意味する文章を除くと”俺は剛球豪打のメジャーリーガー、さあ延長戦の始まりだ。出来のいいストッパーを用意しても無駄だ。最後は俺が逆転する”ってなるでしょ?」
「はい」
「”メジャーリーガー”は英語に直せっていうキーワードだったんだよ!”出来のいいストッパー”は防御率のいい投手の事。英語で”延長戦”はエクストライニングゲームで”防御率”は英語で略すとERA」
「このエクストラのスペル、EXTRAから”無駄”なERAを取り除くと”XT”が残るの」

高木は「そ、それが場所ですか?」と聞く。

「うん。XTを縦に書いて”最後に逆転する”と”文”っていう漢字になるでしょ?それって地図記号だと学校のマークになるじゃない?」
「ああ、たしかに!」
「3年前も病院の地図記号を使っていたから、間違いないと思うんだよね」

名前とコナンの推理を聞いて、高木は「2人とも、本当にすごいですね…」と感心したようにつぶやいた。



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