「うん」
「…でも、あの暗号にはそんな意味が」
「シィー!あんまり大きな声出すと爆弾犯に聞こえちゃうから!」
コナンがそう言うと、高木は声の音量を抑えた。
「で、でもそこに該当する場所は、東京には400以上あるんじゃ…」
「そうなのよ。爆弾犯に気づかれないように今から全部を調べるのはまず無理だし、400以上ある学校にいる人達を一斉に非難させようとしたら、犯人の性格からして遠隔操作で爆弾のスイッチを押しかねないよね」
「うん。つまり全員を確実に助けるのには…」
「ヒントを見て、ピンポイントでその場所を調べて爆弾を発見するしかない。松田刑事がやったようにだね?」
「ああ…」
名前は「(陣平…研ちゃん…。結局、犯人を捕まえられなくてごめんね)」と思った。
「それに、いるかもしれないんだ、そこに。この世で一番死なせたくない大切なヤツが」
コナンはそう言うと「ゴメンね名前刑事、高木刑事」と謝った。
「謝らないで。私達は、誇りと使命感を持って、国家と国民に奉仕するために警察官になったんだもの」
「そうですね…。なあコナン君、ついでだからもう一つ教えてくれよ。君はいったい何者なんだい?」
「それは気になる」
「ああ…知りたいなら教えてあげるよ、あの世でね」
高木は、先程名前とコナンの推理を目暮宛てのメールに打ち込んでいく。
「あと15秒、高木刑事用意できた?」
「ああ、2人の推理は全てメールに打ち込んだよ。あとは、コナン君が読み上げるヒントを打ち込んで送信するだけだ!」
「そろそろ出るよ!」
液晶が残り4秒を表示すると、コナンがそう言った。
「(…零君、ごめんね。大好きだよ)」
名前は降谷宛に書いたメールの送信ボタンを押すと、携帯電話を仕舞って目を閉じた。
「最初の文字は…アルファベットのE!V!!I!!T!!」
高木は文字を打ち込むと送信ボタンを押し、耳を塞いでその場にうずくまる。
しかし、打ち込み始めてから3秒以上が過ぎているにも関わらず、爆弾が爆発しない。
「え?」
「…あれ?」
名前と高木が戸惑っていると、コナンが天井から飛び降りてくる。
「わっ!」
「バ、バカ!揺れたら爆弾が!…え?あれ?」
「やっぱり死ぬの怖いから、残りのコード切って止めちゃったよ。ごめんね」
「う、ううん…全然いいよ」
名前は少しホッとした顔でそう言った。
「でも、じゃあヒントの途中で…」
「うん。EVITじゃもう一つの爆弾の場所は分からないね」
「ま、まあ仕方ないさ…。とにかくレスキュー隊を呼んでここから助け出してもらおう!」
「コナン君、お疲れ様」
「ううん…」
爆発物処理班がエレベーター口から降りてきて、無事に爆弾が解体されている事を確認した後、名前達はエレベーターの中から救助された。
「…ねえ、コナン君」
「名前刑事」
「たしか、今日って帝丹高校で全国模試をやってたよね?」
「うん。名前刑事も気づいた?」
「うん…」
名前とコナンがそう言い合っているのを聞いた高木は「え?ど、どういう事ですか?」と質問をする。
「さっき出たヒント、EVITって、DETECTIVEのスペルを逆にした文字なんだと思うの」
「え?」
「探偵の英語表記。探偵を逆にすると、偵探になるでしょ。帝丹っていう名前の学校は小学校から大学まであるけど、日曜日の今日、生徒が集まってるのは全国模試をやってる帝丹高校だけだよ」
「あ、あの4文字でよく分かりましたね…。って、さっき分からないって言ってたじゃないですか!」
コナンは「あれは爆弾犯をおびき寄せるためにわざと分からないフリをしたんだよ!」と答えた。
「ど、どういう事だい?」
「あの犯人の性格なら、ボク達が場所が分からないって思えば油断して、帝丹高校に仕掛けた爆弾が爆発するのを見に来ると思うんだ」
「な、なるほど…」
名前は「とにかく目暮警部にも連絡して、爆発物処理班に学校に向かってもらおう。盗聴器が仕掛けられている可能性が高いから、気付かれないようにって」と高木に伝える。
「分かりました!」
東都タワーを出ると、待っていたマスコミにコナンがつかまり、アナウンサーからインタビューを受ける。
名前と高木を待っていた佐藤に気づいた高木が「あ、あの、佐藤さん…」と佐藤を呼ぶ。
「バカね、自分を責めないで!名前さんも無事で良かったです!さあ、残り2時間半!もう一つの爆弾を見つけましょう!」
「あ、いや実は…もう一つの爆弾の仕掛け場所、分かったんです」
「え?」
高木は、先程の名前達から聞いた推理を佐藤にも伝える。
「そういう事…。たしかに、あの犯人の性格なら、どこかで見ている可能性が高いわね」
「はい。苗字さんも、3年前も同じように観覧車の近くで見ていたはずだからって言ってました」
「…分かったわ」
佐藤と高木はそれぞれ目暮と爆発物処理班に連絡をした。
連絡を受けた爆発物処理班は、帝丹高校に向かい、ドラム缶に仕掛けられていた5つの爆弾を発見。
名前達の予想通り、爆弾の傍には盗聴器が仕掛けられており、爆発物処理班は音を立てないよう慎重に解体をした。
「後は、帝丹高校を監視する場所だが…」
「多分、そこそこ距離が離れているけれど見晴らしのいい場所だと思います」
「…手分けして捜そう。まだ時間は1時間ある」
「分かりました」
帝丹高校から離れた場所にある歩道橋の上から、帝丹高校を望遠鏡を使って見ている犯人の姿を見つけた捜査員が、目暮に連絡を入れる。
『見つけました!歩道橋の上です!』
「分かった!今すぐ向かうから、その場で待機だ」
『分かりました!』
名前達は急いで犯人のいる歩道橋に向かう。
「(…やっと…やっと捕まえられる…!)」
歩道橋に到着すると、先に着いていた戸崎も合流する。
「戸崎さん。あんな風にお別れを言った後、すぐに再会するのも恥ずかしいですね」
「あなたが無事で良かったです…」
「ご心配をおかけしました」
そう言った名前に「あの犯人を捕まえましょう」と戸崎が微笑む。
「はい!」
爆発予定時刻が迫り、名前達は歩道橋の下で待機をしていた。
「(…絶対に捕まえる…)」
「上に行くぞ」
「はい」
爆発予定時刻になり、時計を見ていた犯人が双眼鏡を除きながら「ドォン!」と言った。
「!?」
しかし、すでに爆発物処理班によって解体されている爆弾は爆発する事はなかった。
何も変わらない帝丹高校の姿に焦った犯人は、遠隔操作で爆発させるために電話をかける。
『ピリリ…ピリリ…』
目暮は遠隔操作用に仕掛けられていた携帯電話を持って、犯人の背後に回る。
聞こえるはずのない着信音が背後から聞こえて来て、犯人は後ろを振り返った。
「残念だが、電話の相手はもう話せんそうだ」
目暮を先頭に、名前、佐藤、高木、戸崎、そして数名の捜査員達が犯人を取り囲むようにして立つ。
「爆発物処理班が密かに学校に入り、あんたが仕掛けていた盗聴機に気づかれんように音を立てず、ドラム缶に入った爆弾は5つともバラバラに解体してしまったからな」
目暮が「おや?その顔はどうしてその場所がわかったかって顔だな?あの暗号文から東都タワーと爆破予告時間を意味する文を除くとこうなる」と、説明をしているが、名前は全く話を聞いていなかった。
「(こいつが…)」
ただ、松田と萩原の敵である犯人の顔を睨みつけていた。
「ちなみに、野球場に偽の爆弾を置かなかったのは、野球グラウンドを持つ高校から目をそらしたかったから。まあ、油断してこんな目立つ場所から、双眼鏡で帝丹高校を見ていたあんたの負けだよ」
目暮が言い終えると、犯人は歩道橋から下を見て、下を通ったバスの上に飛び乗って逃げようとする。
「しまった!!」
「え?」
反対の歩道橋から佐藤が同じように飛び降りる。
「さ、佐藤さん!?」
「ちっ!」
犯人がバスから飛び降りると、佐藤も拳銃を取り出して追いかける。
「い、いかん!!」
「佐藤さん!!」
高木が佐藤の後を追うが、名前はその場から動かない。
「苗字さん?」
「…私…この犯人は…絶対に自分で捕まえるんだって…そう思ってました…」
名前はこぶしを握り締めると「だけど…犯人の顔を見たら…足が…動かなくて…」と言って、自分の足を叩く。
「やめてください、苗字さん」
「…やっと…やっと捕まえられるんだって思ったのに…」
「いいんですよ、それで」
戸崎がそう言うと、名前はその場に座り込み、逃げて行った犯人の方を見た。