「うわっ!な、何するんだ!」
「やめとけ」
「しかし、凶悪犯相手に2人だけじゃ…」
「2人で十分だ」
オホン、と目暮が咳ばらいをすると「そ、それでは会議を続けよう…」と仕切り直す。
「目暮警部、よろしいでしょうか」
「苗字君、何か気がついた事があるのかね?」
「はい。多分、麻雀パイは、被害者7人が宿泊していたホテル”ベガ”のエレベーターの事だと思います」
「宿泊していたホテルのエレベーターだと?」
名前は「はい。まだ調べている途中なのですが、6階の宿泊客は全部で9人。7人は被害者で、後の2人は本上ななこさんという女性と、彼女の恋人の水谷浩介さんです」と説明する。
「火災が起き、非常階段が使用不能になっていたため、1機しかないエレベーターを使って逃げないといけない。水谷さんはその時ホテルにはいなかったようなので、ホテルには8人」
名前は立ち上がるとホワイトボードの前に立ち「しかし、このエレベーターの定員は7人でした。1人だけ乗る事ができなかったんです」と続ける。
「と、いう事は…7人は自分達が助かるために、本上さんをエレベーターから引きずり降ろして…」
「置き去りにしたって事ですか!?」
「そ、それは分からないけど…。この麻雀パイの裏の縦線はエレベーターのドアを示していて、赤い印は6人が乗っていたエレベーターの位置。ピンズの1の陣野さんは、多分後から乗ろうとした8人目だったんじゃないでしょうか」
「なるほど…。それなら水谷という男が怪しいな」
大和は「じゃあこの残った左下は、本上ななこの位置だったって事か?」と聞く。
「恐らくそうだと思います」
「後はこの裏のアルファベットと三角形ですが」
荻野がそう言うと「そうですよね…この文字…」と佐藤も同じように考え込む。
「とにかく、まずはその水谷という男に事情聴取だ!本上ななこの実家にも至急向かうように!」
「分かりました。そしたら佐藤、高木は水谷浩介の家に、白鳥、千葉は本上ななこの実家に向かってくれ」
「はい!」
「残りはこの麻雀パイの謎を解くぞ」
「はい」
名前と残った警部達は、引き続き麻雀パイの謎を解くために知恵を振り絞っていた。
「七夕の夜、ベガという名前のホテル…7人の被害者…七夕…星…あっ!」
名前はもう一度ピンズの裏に書かれたアルファベットと三角形を見ると、ホワイトボードに貼られている殺害現場が記された地図を剥がして机に広げる。
「苗字さん?」
「どうした?」
ペンで被害者7人の殺害現場に記載されていたアルファベットと三角形を書き込む。
「…やっぱり」
「え?」
「何だ?」
名前は警部達の方に地図を見せると「この7つの犯行現場は北極星と北斗七星の中の6つの位置を示していたんです!」と言う。
「何ィ?」
「ピンズの1と7は、北極星と北斗七星の形を…、アルファベットはそれぞれの星にふられたギリシャ文字のアルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、イプシロン、ゼータ、イータの大文字なんです!」
「ほ、本当かね?」
「はい。犯行現場の写真と、実際の星の写真を重ねてみると、ほぼ一致します」
荻野はそう言ってパソコンの画面を見せる。
「(だけど、北斗七星には後1つ、メラクが残ってるけど…7人が殺害されたからこれで終わりって事なのかな?)」
そこに、事情聴取に行った佐藤と高木から電話がかかってくる。
「何?コナン君が?」
『はい。どうやら水谷さんと本上さんが駆け落ちして、2人で暮らしていたアパートに話を聞きに来ていたそうです』
「全く…」
『毛利さんに頼まれたと言っていたそうです』
「毛利君に?分かった。2人の共通の趣味が星空の観察という事なら、やはり犯行現場が北極星と北斗七星で間違いないだろう」
『戻ります』
「ああ、分かった」
通話を切った目暮は「水谷浩介と本上ななこの住んでいたアパートにコナン君が訪ねて来ていたそうだ」と名前に伝える。
「コナン君が?いつもの事ですけど…まったくもう」
「いつもの事なんですか?」
「はい」
名前と目暮があきれた顔をしていると、今度は白鳥から電話がかかってくる。
「目暮だ」
『警部、白鳥です。本上さんの実家で聞き込みをしたのですが、ななこさんのお兄さんから新たな証言が得られました』
「証言?」
『はい。先日会った時に”許せない者が8人、まだ1人残ってます”と言っていたそうです」
「何?それじゃあ犯人は、もう1人殺害する気なのか」
『ええ、恐らく…。それと、ここへもコナン君が来たそうです』
「コナン君が?」
目暮の言葉を聞いていた名前は「こっちもか…」と大きなため息をついた。
「警視、犯人は水谷浩介では?」
「ああ。恐らく、間違いないだろう。だが、残りの1人とは誰だ?次の犯行場所はどこなんだ?」
聞き込みに行っていた佐藤と高木、白鳥と千葉が戻って来ると、会議が再開された。
「捜査の結果、容疑者が判明し、もう1件、殺人を犯す可能性がある事も分かった。しかし、容疑者の居場所も犯行を犯す場所も分かっていない。誰か、何か思いつかんか?」
目暮はそう言うと、全員を見るが、聞かれた刑事達は渋い顔をするだけだった。
「クソッ、こうしてる間にも…」
「誰かがやられちまってるかもしれねえな」
「う〜ん…」
「うむ…」
名前は「あの、松本管理官…」と松本を呼んだ。
「さきほどお伝えした北極星と北斗七星の位置なのですが、まだメラクの場所が残っているんです」
「何?」
「メラクの位置と対応する場所を地図で表すと…」
名前は荻野を見る。
「警視、北斗七星の残りの星の位置と対応する場所は芝公園です」
「よし、目暮は水谷浩介を緊急手配してここで待機。残りの者は、芝公園に向かう。急げ!」
「はい!」
名前は大和と荻野を車に乗せると、芝公園を目指す。
芝公園に向かっている途中、前を走っていた佐藤と高木の乗った車が芝公園とは逆の米花の森方面に向かう道の右に曲がって行った。
「え?高木君?」
「左だ」
大和にそう言われた名前は「はい」と、高木達の車を気にしながらも左に曲がる。
芝公園に到着すると、白鳥が佐藤と高木に電話をかける。
「ダメです、管理官。高木も佐藤も出ません」
「構わん、放っておけ」
松本は「よし、水谷はこの近辺に潜んでいるはずだ。手分けして見つけ次第確保しろ!」と言った。
「はい!」
芝公園の中を探すが、見つからない。
「松本管理官、東都タワーの方に水谷さんを見ていないか聞いてみましょうか?」
「…そうだな。それがいい」
名前達は東都タワーに移動しようとするが、その前に重悟から電話がかかってくる。
「もしもし?」
『おう。東都タワーで水谷を見かけたそうだ』
「東都タワーで?分かりました、そちらに向かいます!」
電話を切ると「松本管理官!やはり水谷さんは東都タワーにいるようです!」と伝える。
「分かった!すぐに東都タワーに向かう!」
名前達が東都タワーに急いで向かうと、参悟と重悟に連絡をもらった他の刑事達も集まっていた。
「どうやら水谷は展望台にいるようですぜ」
「何?展望台に?」
「はい!この女性が目撃したそうです」
「出て行ったところは?」
「いえ、見ていません」
案内係の女性の返答を聞き、松本は「うむ…」と少し考えると「よし、被疑者は大展望台にいるとみて間違いない」と言った。
「そこに誰かを呼び出し、最後の犯行を犯すつもりだろう。これから突入して、被疑者を確保。被害者を保護する。被疑者は凶器を所持しているはずだ。心してかかれ!」
松本は警備員に「中の照明は、そのままにしておいてください」と頼んだ。
「分かりました」
「行くぞ!」
「はい!」
そう言うと、全員で中に入る。
「二手に分かれますか?」
「そうだな」
「それでは…」
「ウッ!!」
「え?」
名前と話していたはずの大和が急に地面に倒れたのを目撃した名前は「や、大和警部!?」と大和に駆け寄る。
殺気を感じて振り返ろうとしたところを何かで殴られた名前も、大和と同じように気を失った。