漆黒の追跡者07

「…ッ、いったー…」

名前が目を覚ますと、大和以外にも一緒に東都タワーに入った参悟や重悟、荻野達も全員気を失っていた。

「ど、どういう事…?」

名前は「ここにいないのって、松本管理官だけ…。まさか、スパイは管理官に変装してたって事?」と気づいた。
電話の着信音が鳴り、電話に出ると佐藤からだった。

「も、もしもし?」
『名前さん!?やっと出た!大丈夫ですか!?』
「美和子ちゃん?」
『実は、さっき阿笠さんから連絡をもらって米花の森に行っていたんですが、そこで松本管理官が監禁されていたんです!』

佐藤の報告を聞いて「や、やっぱり…」とつぶやいた名前。

『やっぱりって…』
「実はね、私達が東都タワーに入った瞬間、誰かに頭を殴られて気絶させられたの。目を覚ましたら松本管理官だけいないから、きっと松本管理官に変装していたんだろうなって思って」
『そうみたいですね。気絶させられてたって事は、そちらの状況は不明ですか?』

名前が答えようとするが、上の方でヘリコプターの音と爆発音が聞こえてきて一瞬止まる。

『名前さん?』
「…あ、ごめん」
『大丈夫ですか?もうすぐ東都タワーに着きますけど、上空を飛んでいたヘリコプターが爆発しました』
「ヘリコプターが!?」

名前が驚いて大きな声を出すと「…イ、タタタ…」と頭を押さえながら大和が目を覚ます。

「大和警部!」
「…ああ、苗字か…。大丈夫か?」
「はい」

名前は佐藤に「美和子ちゃん、こっちに向かってるなら気をつけて来てね」と言って電話を切る。

「一体どうなってやがる」
「どうやら、松本管理官に変装していたスパイに気絶させられていたようです」
「何だと!」
「とりあえず、皆さんを起こしましょう。早く展望台に行かないとです!」
「ああ、そうだな」

名前と大和が、まだ気絶している参悟達を起こしていると、佐藤と高木、そして応援で駆けつけた目暮や警察官達が東都タワーに到着した。

「名前さん!」
「美和子ちゃん」
「大丈夫ですか?」
「うん、殴られた頭は痛いけど、大丈夫だよ」
「良かった…」

名前は「松本管理官は大丈夫?」と聞く。

「はい。とりあえず、食料はあったので大丈夫そうでしたが念のため、警察病院に搬送されました」
「そっか、良かった」



大展望台に移動すると、窓ガラスが粉々になっていた。

「な、なにこれ…」

あまりの惨状に、名前はめまいがした。

「名前刑事…」
「蘭ちゃん!それにコナン君!」

名前は蘭とコナンがいる事に気づくと、慌てて2人に駆け寄った。

「ど、どうしてここにいるの!?」
「すみません…。園子から、コナン君が東都タワーに入って行ったのをテレビで見たって教えてもらって、心配で来ちゃいました」
「来ちゃいましたって…。どうしてコナン君はここにいるの?」
「あ、えっとその、じ、実は新一兄ちゃんと平次兄ちゃんに今回の事件の事を相談してて、最後の犯行現場がここになりそうだって事に気づいたら足が勝手に…」

コナンが焦った様子で言い訳をしている姿を見て、名前は心の底から呆れた。

「もう!毎回言ってるでしょ!事件現場は子どもの遊び場じゃないの!いくらコナン君の頭が他の小学生と違って良いからって、1人で現場に来ちゃダメだって!」
「ご、ごめんなさい…」
「せめて新一君とか、大人と一緒に来てよ!特に今回は黒のそ」

名前は”黒の組織”と言おうとして口をつぐんだ。

「!?」
「じゃ、なくて…お、大人でも苦労するような難しい事件だったんだから!」
「う、うん…」

コナンに本気の説教をしている名前を「まあまあ苗字君。その辺で勘弁してやってくれ。コナン君のおかげで、真犯人である本上和樹を逮捕する事ができたんだから」と目暮がなだめる。

「犯人、ななこさんのお兄さんだったんですね」
「ああ。ななこさんを救えなかった悲しみが、憎しみに変わってしまったんだろう」
「きっと、和樹さんも7人が無理やりななこさんをエレベーターから降ろしたわけじゃないって事には気づいてたと思うよ」

名前は「どうして?」とコナンに聞く。

「和樹さんに話を聞きに行った時に、7人から花束が贈られて来ていたんだ。1つや2つなら、罪悪感から贈ったとも考えられるけど、7人全員ってなると、感謝の気持ちの花束だと思うんだよね」
「感謝の気持ち…」
「うん。きっと、ななこさんは自ら進んでエレベーターを降りたんだと思う。7人の身代わりで」
「…そっか。それでも…そうだって分かっても、和樹さんは納得できなかったんだろうね」

名前が悲しそうな顔でそう言うと、コナンも「だね…。すべての罪を水谷さんに着せようとしたのも、大切な妹と駆け落ちしたのが許せなかったんだって」と続けた。

「そっか…。コナン君、ありがとう」

コナンは「ところで名前刑事、頭は大丈夫?」と話を変える。

「な、ちょっとその質問は酷いよ?」
「違うよ!頭を殴られたって聞いたから!」
「フフ、分かってるよ。大丈夫だよ。まあ、少しコブができてるかな?」
「そっか」
「この後事情聴取になるから、コナン君もケガしてるけどもう少し辛抱してくれる?」
「大丈夫だよ」

名前はコナンの頭を撫でると「今回もありがとう」と微笑んだ。

「蘭ちゃんも、すぐに応急処置してもらうからね」
「ありがとうございます」

名前が立ち上がると、白鳥に呼ばれて「苗字さん、大丈夫ですか?」と聞かれる。

「うん、大丈夫だよ」
「殴られた時の様子を聞きたいのですが」
「それが、いきなりガツンで…」

隣に立っていた千葉が答えると「あっという間だったよね」と名前も同意する。

「その…何て言うか、面目ないです…」

千葉が白鳥に謝る。

「まあでも大きなケガがなくて良かったです」
「ありがとう。と言うか、白鳥君はどこに行ってたの?芝公園までは一緒にいたよね?」
「それが、芝公園で警部に状況報告の電話をしていたタイミングで横溝警部から連絡を頂いていたみたいで、出られなかったんです」
「なるほどね。一人ちゃっかり助かっちゃって」
「やだな、そんな言い方しないでくださいよ」

白鳥は冷や汗をかきながら苦笑いをする。



近くのテーブルでは佐藤がコナンと蘭に話をきいていた。

「じゃあ蘭ちゃん。詳しい話は後日聞く事になると思うから、その時はよろしくね」
「はい」
「今、帰りの車を手配してくるから、そこで待っててね」
「ありがとうございます」

佐藤が席を立って、蘭とコナンに車を手配しに行く。

「それにしても、まさか松本管理官に変装してるとは思わなかったね」
「うん。蘭姉ちゃん、大丈夫?体、痛くない?」
「大丈夫だよ。コナン君は?」
「ボクも大丈夫!蘭姉ちゃん、ちょっとここで待ってて」
「どこ行くの?」
「名前刑事のとこ!」

コナンは白鳥と話をしていた名前が1人になったタイミングを見計らって、もう一度の名前のもとへ行く。

「名前刑事!」
「ん?どうしたのコナン君?傷が痛む?」
「ううん、それは大丈夫」

コナンは名前の服を引っ張りしゃがませると「名前刑事は、松本管理官に変装してた男の人に見覚えがあったりする?」と小さな声で聞く。
コナンは、名前が黒の組織の名前を出そうとした事で、名前が黒の組織と何かしら関わっているのではないかと疑い、松本に変装していた黒の組織の人間、アイリッシュの事を知っているのかを聞き出そうとした。

「どうして?」
「ちょっと気になって!」
「残念ながら、私も初めて見たよ。まさか松本管理官に変装できる人がいるなんて思わないし!」

そう答えた名前の事を、コナンはジッと見つめた。

「(…ウソついてる感じはねえな)」
「ん?」
「ううん、ボクもビックリだよ!ありがとう!」
「うん」

名前がそう言うと、佐藤が「コナン君、帰りの車が用意できたわよ」とコナンの事を呼びに来た。

「佐藤刑事、ありがとう!」
「いいえ。千葉君が送ってくれるから、気をつけて帰ってね」
「はーい!」

蘭とコナンが帰った後、名前達も本庁に戻った。

「結局、あの亡くなっていた男の身元は不明みたいですね」
「そうだね…」

佐藤の運転する車の助手席で、名前は「(あの男の人…やっぱり黒の組織の人間なのかな…)」と考えていた。

「(零君が潜入している組織だし、私が変に調べようとしたら零君にも迷惑がかかりそうだけど…)」
「名前さん?大丈夫ですか?傷、痛みます?」
「ううん、大丈夫だよ」

名前は「(黒の組織には関わらない方がいいよね…?)」と結論を出して、考えるのをやめた。



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