「あ、零君。まだ陣平に報告に行けてないや」
「なら今度一緒に行かないか?僕も一緒に報告したい」
「うん、もちろんだよ。そしたら今度、時間作ってね」
「必ず作るよ」
そう約束した2人は、後日、一緒に松田のお墓を訪れた。
「零君、お待たせ」
「いや」
降谷は待ち合わせ場所に現れた名前の姿を見て「綺麗な色のコートだな」と、名前が着ていたコートを褒める。
「ありがとう!3年以上前に買ったコートなんだけど、全然着てなくて」
「…なんとなく、名前が明るい服を着なくなったとは思っていたけど、勘違いじゃなかったんだな」
降谷がそう聞くと、名前は「うん」とうなずいた。
「陣平がずっと黒いスーツを着てたのは、研ちゃんを思ってだったんだ。私も、お墓参りに行く日と11月7日だけは黒のスーツ着てたんだけどね」
「そうだな。2人はいつも黒いスーツだったな」
「陣平の事件の後は…どうしても明るい服を着る気分になれなくて…。犯人を捕まえるまで、暗い服ばっかり着てたんだ。一種の願掛けかな?」
「なるほどな。じゃあ、無事に逮捕できたから、明るい色も解禁だな」
名前は「うん!せっかくなら、自分に一番似合う色で陣平に報告したいなって思ったんだ」と答える。
「似合ってるよ」
「ありがとう」
2人は松田のお墓の前で両手を合わせると、目を瞑る。
「(陣平…お待たせ。陣平と研ちゃんの敵…ようやく取れたよ。長い間待たせてゴメンね。今日はお祝いに、2人が好きだったお酒を一緒に飲んでお祝いしようね)」
松田への報告が終わり、目を開けた名前は隣から視線を感じて横を見る。
「どうしたの?」
「…いや、本当に羨ましいなと思ってな」
「え?」
「そこまで想い合える3人の関係が羨ましい」
「フフフッ、何それ」
名前が笑うと、降谷はお墓の方を見て「名前の事は、僕が守る」と宣言した。
「僕がおまえの…おまえ達の分まで、必ず幸せにするから安心してくれ」
「零君…」
「改めて、報告だ」
「ありがとう」
降谷は名前の左手を取ると「もう少し、待っていてくれ。全てを終わらせて、必ず迎えに来るから」と言って薬指に口づけを落とす。
「はい」
名前が笑って答えると、降谷も同じように微笑んだ。
「悪い、そろそろ仕事に戻らないと」
「そうだよね。わざわざ時間作ってくれてありがとう」
「名前はこの後どうするんだ?」
「毛利さんのところに行こうかなって思ってるよ」
降谷は「毛利さんって、あの探偵の?たしか、ポアロという喫茶店が下にあったよな?」と聞く。
「うん。零君よく知ってるね!私、あのポアロでよくご飯食べたりしてるんだ」
「…それで?何で毛利さん?」
「ちょうど3年前、陣平の事件のすぐ後に毛利さんと会って話したんだ。色々話したから、一応逮捕できたって報告しようかなって思って」
「なるほどな」
名前は「それに、コナン君にももう一度ちゃんとお礼を言いたいから」と続けた。
「…そのコナンって少年はすごいな」
「本当だよね!小学1年生なのに、大人顔負けの推理力だよ!」
「…」
何も答えない降谷に、「零君?」と名前が名前を呼ぶ。
「ああ、いや…何でもない」
「そう?それで、夜は千速さんとご飯食べに行くよ」
「萩原のお姉さんか。相変わらず、仲が良いな」
「うん。千速さんにも久しぶりに会うし、ちゃんと報告してくるよ」
「それがいい」
降谷は時計を見ると「おっと、そろそろ本当にまずいな。また連絡する」と言って走り出す。
「ありがとう!またね!」
「ああ!」
降谷と別れた後、名前はそのまま毛利探偵事務所に向かった。
「毛利さーん」
チャイムを鳴らし、返事を待たずに扉を開けた名前。
「ったく、全然だめじゃねーか!」
中には椅子に座って競馬の中継を聞いている小五郎の姿があった。
「毛利さん!こんにちは!」
「おお!名前君か、どうした?」
「今日はご報告があって来ました」
「何だァ?結婚でもするのか?」
小五郎の言葉に「そ、そんなワケないじゃないですか!」と名前は慌てて否定する。
「3年前、私の幼なじみが殉職した話をしたのを覚えてますか?」
「ああ、あの話か…。もちろん、覚えてるよ」
「その犯人を、先日、ようやく逮捕しました」
名前がそう言うと、小五郎は吸っていたタバコをポロっと落とした。
「ほ、本当か!?」
「わー!毛利さん、タバコ!」
「うわっ!」
小五郎は落としたタバコを拾うと、灰皿に押し付けて火を消した。
「いやー!良かったな!そうか、逮捕できたのか!」
「はい!コナン君の協力もあって、何とか」
「コナン?ああ、インタビューを受けてるのをテレビで見たぞ。まったく、あのガキはすぐ事件に首を突っ込む…!」
小五郎がそう言うと、名前も「それは同感です」と苦笑した。
「だけど、今回はコナン君の協力もあって、無事に犯人を逮捕する事ができました。コナン君にも改めてお礼を言いたいなって思ってたんですけど、コナン君はまだ帰ってないですか?」
「ああ。そういやそうだな」
「阿笠さんのところかな?」
そんな話をしていると、蘭と園子が帰って来る。
「あっれー!名前刑事!どうしたんですか?」
「こんにちは、蘭ちゃん、園子ちゃん」
「こんにちはー!」
「ちょっと毛利さんに用事があってね」
名前が答えると「それより、2人はその荷物どうしたの?」と、蘭と園子が持っている荷物を見て質問をする。
「フッフッフッ!聞いてください名前刑事!私とおじさま、この後季節外れのハロウィンパーティーに行くんです!」
「季節外れのハロウィンパーティー?」
「船上パーティーみたいなんです。そこで何か犯人捜しゲームみたいなものがあるみたいで、それにお父さんと園子も参加するんです」
「へー!」
「私は楽しそうだからですけどね!」
名前は「蘭ちゃんは行かないの?」と聞く。
「い、行くわけないじゃないですか!そんな化け物のパーティーなんかに!」
「そ、そうなんだ」
「蘭は怖いのダメだからね〜。という事で、私達は今から仮装します!」
「楽しそうだね〜」
「名前刑事も一緒に行きます?」
園子が名前の事を誘うが「ごめんね。今日は知り合いのお姉さんとご飯食べに行く予定なんだ」と言って断る。
「なんだー、残念!」
「ご飯いいですね。どこで食べるんですか?」
「横浜で。その人が神奈川県警の交通部に所属してるから、仕事終わりにね」
「素敵ですね〜!」
名前は時間を確認すると「それじゃあ、私はそろそろ行きますね。毛利さん、園子ちゃん、パーティー楽しんできてください」と言いながら席を立つ。
「名前刑事も!」
「おう」
「蘭ちゃんも、またね」
「はい!」
横浜に到着すると、仕事終わりの千速と合流し、近くのカフェに入った。
「千速さん、最近忙しいですか?」
「そうでもないぞ」
「なんだか久々ですね」
「そうだな。そういえば、この前重悟が世話になったな!」
千速がそう言うと「あの広域連続殺人事件の時の事ですよね!私の方こそお世話になりました!」と名前が答える。
「重悟も名前に会えて良かったって言っていた」
「本当ですか?」
「ああ」
千速はコーヒーを飲むと「ニュースを見たぞ。逮捕してくれたんだな、あの爆弾犯を」と言って笑う。
「…やっとです。7年も待たせちゃいました」
「研二と陣平も喜んでるだろうな」
「だといいんですけど」
名前は「私だけの力じゃないんですけどね」と言った。
「あの少年か?」
「はい。ニュースでインタビューを受けていた男の子、江戸川コナン君って言うんですけど、すごく頭が良くて、今回の逮捕にも力を貸してくれたんです」
「…そうか。それなら、私もいつかお礼をしないといけないな」
「多分、いつか会える日が来ると思いますよ。コナン君、すーぐ事件に首を突っ込むんで」
「そうなのか。陣平みたいだな」
千速がそう聞くと「はい」と言って笑った。
「良い顔で笑うようになったな」
「そうですか?」
「ああ。それに、服。名前が明るい色を着ているのは久しぶりに見たぞ」
「…陣平が亡くなってからは、なかなか明るい服を着る気分になれなくて。でも、犯人を逮捕できたので。ようやく明るい服を解禁しました」
名前が答えると、千速は笑いながら「やっぱり、名前には明るい服の方が似合う!」と言った。
「千速さん、ありがとうございます」
ご飯を食べ終えると「それじゃあ、千速さん!またご飯行きましょうね」と言う。
「ああ、またな」
そんな名前に、千速も笑顔で応えた。