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駅に向かって歩いていると、名前の携帯が鳴る。

「蘭ちゃん?どうしたんだろう…」

着信の相手は蘭で、名前は何かあったのではないかと少し心配になりながら電話に出た。

「もしもし、蘭ちゃん?どうしたの?」
『あ、あの…名前刑事…い、今ってもうご飯食べ終わりましたか…?』
「今?うん、もうご飯食べ終わって解散したから帰るところだよ」

蘭からの電話に出た名前は、違和感を覚えた。

「蘭ちゃん?今どこにいるの?なんだか声がくぐもってるし、外?」
『じ、実は…ちょっと怪しいなって思ってた人の車のトランクの中にいるんです』
「えっ?」

名前は思わず立ち止まる。

「な、何してるの!?怪しい人の車って…!」
『お、お願いします…来てくれませんか?多分、銃声が鳴ってて…』
「もちろん行くよ!位置情報教えてくれる?すぐに向かうから!」

大通りに出ると、名前はタクシーを拾った。

「運転手さん、とりあえず適当に走らせてください!」
「はあ??」

名前は蘭からの連絡をタクシーの中で待っていた。

「(蘭ちゃん…お願いだから無事でいて…)」

その後すぐ、蘭から場所が送られてきたので、名前は運転手に場所を告げて目的地に向かう。



着いたのはとある埠頭。

「こ、ここ…?」

タクシーから降りて歩き出す名前の耳に、一発の銃声が聞こえてきた。

「銃声!?」

名前が銃声が鳴った方向に駆け出そうとすると、右腕を掴まれた。

「!?」

後ろを振り返ると、そこには赤井がショットガンを左手に持ち、右肩にライフルを担いで立っていた。

「あ、あなたはバスジャックの時の…?」
「…何をしている」
「つ、通報を受けて…銃声も聞こえてきたので現場に向かおうとしていたところです」
「君はここで待っていろ。巻き込まれたくはないだろう」
「な、何を言ってるんですか?」

名前の問いかけには答えずに無視して歩き出す赤井の後を追う。

「おい」
「私は、日本の警察官です」
「…後悔する事になるぞ」
「もとより覚悟の上です」

そう答えると、赤井はあきれた様にため息をついたがそれ以上何も言わなかった。

「ここからは命の保証はない」
「…はい」

赤井と名前が埠頭の奥に進んでいくと、話し声が聞こえてきた。

「OK、カルバドス…挟み撃ちよ!さあ、あなた愛用のそのレミントンで、FBIの子猫ちゃんを吹っ飛ばして…」
「ホー…あの男はカルバドスっていうのか。ライフルにショットガンに拳銃三丁…どこかの武器商人かと思ったぞ」
「あ、赤井秀一!?そ、それに…たしかエンジェルと仲の良い刑事…」
「シュウ!」
「(あ、あれって女優のクリス・ヴィンヤード!?そ、それに…この人の名前…赤井秀一…?)」

名前は、埠頭にいたベルモットとジョディ、そして蘭と灰原、コナンの姿を確認すると「(ど、どういう状況…?)」と冷や汗をかいた。

「な、何かの撮影ですか…?」
「そんなわけないだろう。現実逃避をするな」
「そ、そうですよね…」

赤井はベルモットに向き直すと「まぁカルバドスは林檎の蒸留酒…腐った林檎の相棒にはお似合いってトコロか」と言った。

「腐った林檎?」
「アンタに付けた標的名。大女優シャロンが脚光を浴びたのは、舞台のゴールデンアップル!あの時のままアンタは綺麗だが…中身はシワシワのラットゥンアップルってな!」
「くっ!!」

ベルモットが拳銃を構えると、その前に赤井がベルモットの腹部にショットガンを撃ち込んだ。

「うっ!」
「ダメよシュウ!殺しちゃ…」
「安心しろ。防弾ジャケットやパッドを重ねて体中に装着している事ぐらい、奴の動きで分かる。アバラは二、三本折れただろうがな」

名前は目の前で起こっている状況が理解できなかった。

「な、何が起こってるの…?」
「それより見ろ!散弾で裂けた奴の顔を。やはり、あれがあの女の変装なしの素顔ってわけだ」

ベルモットは立ち上がり、眠っているコナンを抱きかかえるとそのままジョディの乗って来た車に乗り込んだ。

「コナン君!?」
「ちっ!ガキ連中が邪魔で…」
「う、撃たないでください!」

ベルモットは車を走らせると片腕を窓から外に出し、自分の乗って来た車のガソリンタンクを撃ち抜いた。
大きな音を立てて爆発した車を見て、赤井は口笛を吹く。

「あの体でミラーごしにガソリンタンクを撃ち抜くとは、やるねぇ」
「何感心してんのよ、人質取られて逃げられちゃったじゃない!!」
「テメエの車のキーぐらい抜いとけよ」
「イタタ…わ、悪かったわね…」

名前は「コ、コナン君が…」と車が走っていた方向を見た後、気絶している蘭と灰原に駆け寄る。

「蘭ちゃん、哀ちゃん…!」
「大丈夫よ。二人はただ気絶をしてるだけ」
「そ、そうですか…」

名前はジョディと赤井の方を見ると「あ、あの、どういう事ですか…?」と質問をする。

「お二人はあのバスジャックの時の乗客で、ジョディ先生は帝丹高校の英語教師で、あ、あなたは…赤井秀一…?」
「日本の警察官なら黒の組織の名前くらいは聞いた事があるだろう」
「そ、それは…ありますけど…」
「あの女は黒の組織の人間よ…。コードネームはベルモット」
「ベルモット…」

ジョディは「私はFBI捜査官のジョディ・スターリング…。あの女が帝丹高校のDr.新出に変装しようとしているという情報を得たから、英語教師として帝丹高校に潜入捜査をしていたの」と、改めて自己紹介をした。

「そうだったんですね…」
「シュウも同じ。FBI捜査官で、日本の警察には極秘で捜査しに来ているの…」
「FBI…捜査官の…赤井秀一…」

名前の反応を見た赤井は「君のその反応、すごく似ているな…」と言った。

「何?誰の事言ってるの?」
「…」
「…いや、何でもない」

ジョディは撃たれた腹部を押さえながら「とにかく、またきちんと説明するから…」と名前に言う。

「と、とりあえず救急車を呼びますね。私はコナン君を助けに行くので、後はよろしくお願いします」
「やめておけ」

赤井の少し冷ややかな態度に、名前は苛立ちを隠さず「どうしてですか!」と叫ぶ。

「これ以上首を突っ込むな」
「わ、私は日本の警察官ですよ!たとえ、危険だと分かっていても目の前で連れて行かれたコナン君を見捨てるわけにはいきません!」

名前がそう言うと、赤井は「…さすがだな、日本の警察は」と言ってジョディの方を見る。

「じゃあ後は任せた。長期休暇で来日していたFBI捜査官が、ガキの誘拐事件に巻き込まれたとでも言っといてくれ。あの女を逃した現状では、本当の事を話してもこの女以外誰も信じてくれんだろうし、結局本命は出て来ずじまい…」

そう言うと、赤井は名前の腕を掴んでジョディに背を向けた。

「え?」
「それに、俺はまだその茶髪の少女と顔を合わせるワケにはいかないんでな」
「ちょ、ちょっと!触らないでください!」

振りほどこうとする名前の腕を掴んで、赤井はそのまま歩き出す。

「ちょ、ちょっと何ですか!」

十分に離れたところで名前の腕を解放すると、赤井は名前と向き合うように立つ。

「あのガキのところに行く必要はない」
「どうしてですか?」
「あの女の狙いはあのガキじゃないからだ」
「…なんでそんな事があなたに分かるんですか」

名前は赤井の事を睨みつけると「とにかく、私はコナン君のところに行きます!」と言って歩き出そうとする。

「いい加減にしろ。相手は黒の組織だ!おまえのようなただの日本の警察官に何ができる」
「何ができるか分からなくても、何かをやらなくちゃいけないんです!誇りと使命感を持って国家と国民に奉仕するのが警察官だから!」
「…本当に、おまえらのようなジャパニーズはやりにくいな」
「何ッ!」

赤井は名前の後ろに回り、首筋を手刀で叩いて気絶させた。
地面に倒れる前に名前の体を支えると「…悪いが、ここで言い争っている時間はない」と、意識のない名前を車に乗せる。

「…やはり、あの時駅のホームで会った女だったか…」

昔、黒の組織の任務中に、駅のホームで妹の真純に声を掛けられた時の事を思い浮かべる赤井。

「という事は…バーボンとスコッチの関係者か…」

FBIの赤井秀一だと分かった時の名前の態度が、バーボンである降谷とそっくりな事に気づいた赤井は、名前が降谷と諸伏と知り合いだという結論に至った。

「…悪かった」

赤井は意識のない名前に向かってそう謝ると、車を走らせた。



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