26

目が覚めると、名前は本庁の仮眠室にいた。

「…何で?」

シャワー室でシャワーを浴びて、予備のスーツに着替えた名前はそのまま捜査一課に向かう。

「あ!名前さん」
「美和子ちゃん、おはよう」
「おはようございます。って、昨日一緒にいた男の人って誰なんですか!?」
「え?」

佐藤の言葉を聞いて、名前は「私、昨日どうしたの?」と質問した。

「気を失っている名前さんを、目つきの悪い男の人が運んで来たんですよ。ちょうど、私が捜査から戻って来たところで…。”寝てたから連れて来た”って言ってましたけど、どういう関係なんですか?」
「(赤井さん…誤魔化すのならもう少しちゃんと誤魔化してほしい…)」
「名前さん?」
「あー…た、多分お酒飲んでてそのまま寝ちゃったのかなー…」

名前がそう言うと「もう!いい年なんですから、あんまり無茶な飲み方したらダメですよ!」と佐藤が注意をする。

「うん、気をつけます」
「それじゃあ今日もよろしくお願いします」
「はーい!」

名前は佐藤と別れると、事件の聞き込みに向かった。



「すっかり遅くなっちゃったな」

傘をさしながら歩いていると、名前は下校途中のコナン達に話しかけられる。

「名前刑事!」
「こんにちはー!」
「よお!」
「みんなー!こんにちは!」
「事件ですか?」

光彦が聞くと「事件というか、事件の聞き込みね」と名前が答える。

「そうなんだ!そうだ!昨日、コナン君と哀ちゃんが誘拐されそうになったんだって!」

歩美の言葉に、名前は「え!そうなの?大丈夫だったの?」と言いながらコナンと灰原を見る。

「うん!全然大丈夫だよ〜!」
「ええ。たまたま近くにいたFBI捜査官に助けてもらったから」
「そっか!それなら良かった」

名前は「(良かった…。赤井さんが言ってたように、ベルモットの狙いはコナン君じゃなかったんだ…)」と、コナンの姿を確認して安心する。

「みんなも気をつけてね。最近、物騒な事件が増えてるから」
「そうします!」
「今日は名前刑事1人なのか?」

元太が質問をすると「ううん、一緒に聞き込みに来ていた後輩と、あっちで待ち合わせしてるんだ」と名前は道の向こう側を指さす。

「ん?おい、見ろよ!」

元太がそう言うと「あれって…高木刑事だよな?」と、傘をさしてキョロキョロとあたりを見回す高木の姿があった。

「なにやら挙動がおかしいですね」
「入ろうかどうか迷ってるみたい…」
「今日、高木刑事非番なの?」

コナンが名前に聞くと「そうだよ。だから私服で町中にいるのは全くおかしくないのに、怪しい動きだね」と答える。

「あ、宝石店に入りましたよ!」
「おい、まさか宝石盗む気なんじゃ…」
「そ、そんなわけないでしょ!」
「バカね、男が宝石店に入る理由は、大概プレゼントを買うためよ」

灰原がそう言うと「贈る相手は母・姉・妹・妻とか色々あるけど、顔を赤くしてそわそわしながら入ったとなると、その相手は気を引きたい女性かもしくは…喜ばせたい恋人だろーぜ」とコナンが続ける。

「お〜っ!!」

子ども達は瞬時に佐藤の顔を思い浮かべる。

「いいですね〜高木刑事!」
「2人は庁内でもよく噂になってるからね〜。やっと恋人同士になれて、高木君も嬉しいだろうな」
「そういう名前刑事には恋人さんいないの?」

歩美に聞かれた名前は「わ、私の事はいいの!」と誤魔化した。

「俺達も中に入ろうぜ!」
「いいですね!高木刑事がどんな物を選ぶのか興味があります!」
「一緒に選んであげようよ!」

そう言って3人は高木の入った宝石店へと向かった。

「あ、コラコラ!」
「いいじゃん!なんか楽しそうだよ!」
「コナン君もノリノリだね」

宝石店に向かうコナンと灰原の後を、名前も慌てて追った。
中に入ると、難しい顔をしながらショーウィンドウの中に飾ってあるブローチを凝視している高木を見つけた。

「(すごい悩んでるなー。それだけ美和子ちゃんが愛されてるって事だね)」

名前が笑っていると、高木の前に立った店の店員が「あの〜、よろしければ、直接手に取ってご覧になりますか?」と高木に聞く。

「あ、いえ…」
「お子様へのプレゼントならサイズをお詰めしますけど」
「お子様…?」

意味が分からないという顔をした高木に「これこれ!ダイヤがいっぱいくっついてるこの首飾りがいいんじゃねーか!」と元太が提案する。

「え?」
「でも佐藤刑事にはちょっとゴージャス過ぎませんか?」

高木の横に並んでショーウィンドウを覗き込んでいる子ども達に気づいた高木は「き、君達いつの間に…?」と驚いた顔をした。

「そーいえば佐藤刑事、4月生まれって言ってたよ!」
「4月の誕生石はダイヤ…」
「じゃあやっぱこれじゃんか!」
「あのねぇ、僕はまだ佐藤さんに贈るなんて一言も…」
「違うの?」
「…その通りです」

子ども達と高木のやり取りを聞いていた名前は、思わずふき出した。

「フフッ、高木君全部バレちゃってるじゃない」
「苗字さん!?何で一緒にいるんですか?」
「たまたま聞き込み中にみんなに会ったんだ。高木君が、宝石店の前で挙動不審な行動をとってたから見に来ちゃったよ」

高木は恥ずかしそうにすると「こ、この事佐藤さんには内緒にしてくださいね!」と名前に頼む。

「ハイハイ。それで、どれが気になってるの?」
「これです!この8万円のブローチを見せていただけますか?」
「あ、はい」

店員はブローチを取り出すと高木に渡す。

「おーっ!結構スゲーじゃん!」
「デザインもイケてます!」
「いいなー佐藤刑事!」
「そ、そうかい?」

高木は歩美の持っているブローチを見ながら「苗字さんはどう思いますか?これ、佐藤さんに似合いますかね?」と名前に聞く。

「うん、とっても綺麗なブローチだね。でも、そのブローチって」

名前が続きを言おうとするが、ガラスの割れる大きな音で名前の言葉はかき消されてしまった。

「え?」

音がする方を見ると、バイク用のフルフェイスのヘルメットを被った人物が金属バットでショーウィンドウのガラスをたたき割っていた。

「ちょ、ちょっと…!」
「おい、ちょっとあんた!?」

名前と高木はその人物に近づいていくが、その人物は気にせずバッグをケースの上に置くと、中からスケッチブックを取り出した。
左手には拳銃を持っており、スケッチブックには”このバッグに宝石を詰めろ!!”と書いてある。

「ほ、宝石強盗!?」
「(こんなところで発砲されたら…)」

拳銃を持っている犯人に、名前と高木は迂闊に近づくことができず、店員が言われた通りに宝石を詰めているところを見ているしかできなかった。

「高木君…」
「は、はい」
「あの人がお店から出たら勝負だよ」
「わ、分かりました…」

歩美は、持っていたブローチを落としてしまい、そのブローチが犯人の方に転がっていく。

「それはダメー!」

店員の後ろに隠れていた犯人がブローチを拾うために前に出て来たところで、高木が一歩前に出た。

「高木君!」
「警察です!今、丁度巡回中で仲間の刑事がそばに大勢います!あきらめて銃を捨てた方が身のためですよ?」

高木はデマカセを言いながら警察手帳を見せる。
高木の警察手帳を見た犯人は「ふっ」と笑うと、拾ったブローチをポケットに入れて店を飛び出した。

「(笑った?)」
「あ、ま、待て!!」

名前と高木が犯人を追うと、後ろから子ども達がついてきた。

「おい!刑事なんてどこにもいねーじゃんか!」
「いるわけないだろ?今日、僕は非番!さっきのはハッタリなんだから!」
「高木君、お店を出てからって言ったでしょ!拳銃を持った犯人に、丸腰で凄まないでよね!」
「す、すみません!」

犯人は裏路地に入ると、近くのビルの外階段を登る。

「か、階段登ってる!!」
「逃がしませんよ!!」

ビルの屋上に辿り着くと、犯人がフェンスの前に立っていた。

「君達は出て来ちゃダメだよ!」
「ここで待っててね」
「は、はい!」

名前と高木は慎重に犯人の元に向かう。

「もう逃げ場はありません!」
「銃を捨ててください…。きちんと罪を償いましょう」
「大人しく…な!?」
「え!」

犯人はそのままフェンスを飛び越えると、そのまま飛び降りようとする。

「ちょ、ちょっと…!」

名前と高木は急いでフェンスに近づいて犯人の飛び降りを止めようとする。
名前が手を伸ばし「ま、待って…!」と犯人のコートの裾に触れるが、そのまま飛び降りてしまった。
ドシャっという何かがたたきつけられる音が聞こえ、名前と高木が慌ててフェンスに足をかけて下を覗き込むと、引っ越し屋のトラックの上に飛び降りた犯人の遺体を確認する。
遺体は、ヘルメットが外れており、顔がむき出しになっていた。

「た、大変だ〜!!」
「ウソ…」

名前と高木は急いで階段を下りると、引っ越しのトラックの周りに集まっている業者に人達に声をかける。

「警察ですが、このトラックはあなた達のですか?」
「あ、ああ。何かあったのか?コンテナの上に何か落ちて来たみたいだが…」
「そ、それが…」

高木が答えようとすると、マンションの住人が顔を出して「きゃあああ!!ひ、人が死んでる!?」と叫び声を上げた。

「な、何!?」
「申し訳ないのですが、救急車と警察が来るまでトラックも荷物も動かさないでもらえますか?」
「に、荷物も?」
「ええ。一応、現場を保存したいので」
「おいおい、冗談じゃねーよ!今日中に引っ越しを終わらせなきゃいけねえのに…」

業者の人間は「救急車が来るまでは待つが、その後は勝手にやらせてもらうよ!」と言う。

「じゃあ、引っ越し主と話をさせてください!」
「ああ、猫田さんなら電話で呼んでこっちに」

そこに、引っ越し主である猫田栄信が「なんだね?この騒ぎは?」と言いながら現れた。

「あ、猫田さん…。なんかウチのトラックの上に人が落ちて来たらしくて…」
「人が?」
「ええ。ですからしばらく引っ越しの作業を中断して…」
「だったら早くあんたらの仲間を呼んで、やる事を済ませてくれ!こっちも都合ってもんがあるんだ!」

そう言って猫田は時計を見る。

「とりあえず、佐藤さん達に連絡しますね」
「…うん、お願い」



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