「了解。とりあえず、向かいのビルの路地裏から張り込もうか」
「ですね」
名前と千葉は、強盗傷害事件の犯人に似た男を見かけたという通報を受け、その男が出入りをしているというビルの向かいにいた。
「それにしても、すぐそこに毛利探偵事務所があるのに、犯人もよくあのビルに出入りしていますよね」
「本当だよね」
その男の出入りしているというビルの向かいには、毛利探偵事務所のビル。
犯人の度胸に、名前と千葉は感心していた。
「なかなか動きを見せないね」
「張り込みの嫌な所ですよね…お腹空いたなァ」
「千葉君、本庁出る時に何か食べてなかったっけ?」
「サンドイッチ食べたんですけど、やっぱりパンじゃお腹が満たされなくて…」
そう言って千葉はお腹をさすりながら恥ずかしそうに笑う。
「そしたらおにぎりとか買ってきてあげるから、ちょっと待ってて」
「え!いいんですか?てか、僕が買いに行きますよ!」
「いいよ、いいよ。だけど、ちゃんと張り込みはしっかり続けててよ!」
「分かりました!ありがとうございます!」
名前は近くのコンビニまで走る。
「とりあえず、何個かおにぎりと…ゼリー飲料も買っておこうかな」
おにぎりを数種類選び、ゼリー飲料と共にカゴに入れると、レジに向かう。
お金を払ってコンビニから出ると、向かいの道を小五郎が歩いている事に気づいた名前。
「あっ、毛利さんだ」
「おおっ、何だ何だ!?今日は当たりまくってるじゃねーか!!」
イヤフォンをつけて新聞を片手に嬉しそうな顔で歩いている小五郎に、名前は近寄ると少し大きめの声で話しかける。
「毛利さん!こんにちは」
「おお、名前君」
小五郎は振り返ると、片方のイヤホンを外して名前と向き合う。
「何聞いているんですか?」
「競馬だよ、競馬!今日は勘がさえたのか、当たりまくってんだ!」
そう言って嬉しそうに笑う小五郎に「すごいですね!でも、ほどほどにしないと蘭ちゃんや英理さんに怒られちゃいますよ」と言って笑う。
「いいんだよ!」
「蘭ちゃんはお家ですか?それともコナン君とお出かけとかですか?」
「ん?蘭なら、あの探偵ボウズの隣の家の博士の家で推理ゲームやってるぞ」
「推理ゲームですか?」
「おう。本当は俺に試してほしいって言われたんだけどな、もうすぐ競馬のメインレースが始まるから先に帰ってきたんだよ」
小五郎はそう言うと「おっと、そろそろ時間だ。名前君は捜査か?」と聞く。
「はい!私も近くで張り込みをしてて、お腹が空いた千葉くんのためにコンビニに」
そう言って名前は手に持っていたコンビニ袋を見せる。
「そうか、頑張れよ!」
「ありがとうございます!」
名前は小五郎と別れると、毛利探偵事務所の近くの路地裏に戻る。
「ごめん、お待たせ」
「遅いですよー苗字さん!」
「ごめんごめん。お腹空いたよね」
千葉は名前からコンビニの袋を受け取ると「わー!ありがとうございます!生き返る〜!」と言いながら、名前の買ってきたおにぎりを食べる。
「どう?」
「動きはまだありませんね」
「そっか…。長丁場になりそうだな〜」
「本当ですね」
名前は買ってきたおにぎりを食べながら「ねえ千葉君。競馬ってそんなに面白いのかな?」と質問する。
「え?なんですか急に。僕、競馬なんてやりませんよ」
「そうだよね。さっき毛利さんに会ったんだけど、これから競馬のメインレースがあるからって言っててさ。競馬ってそんなに面白いのかなーって思ったの」
「まあ、人によるんじゃないんですか?賭け事とかレースが好きな人は好きなんじゃないんですかね?」
「そういう事かー」
食べ終わった名前と千葉は、路地裏から少し体を出すと、引き続き張り込みをする。
そこで、名前は張り込み先のビルの隣、毛利探偵事務所の向かいのビルの屋上で何かが反射した事に気づいた。
「(ん?)」
張り込み用に使っている双眼鏡を取り出すと、屋上を見た。
「(ライフル!?)」
屋上にいたのは、全身黒ずくめの集団。
男と女が毛利探偵事務所に向かってそれぞれライフルを構えている姿が見えた名前は「(毛利さんが狙われてるの!?)」と思い、千葉に「千葉君、後は頼んだ!!」と叫んで走り出す。
「ええ!?どうしたんですか!」
名前は千葉の呼びかけを無視して屋上の方を見ながら毛利探偵事務所に向かう。
「(あの銀髪の人…たしか、トロピカルランドの事件の時にいた…)」
帽子をかぶった銀色の長髪の男、ジンの姿を確認した名前は、トロピカルランドのジェットコースター殺人事件の時に現場にいた男だという事を思い出した。
そして、そのジンの隣にはベルモットが立っている事にも気づく。
「(あの人はベルモット…。という事は、あそこにいるのは黒の組織の人間って事?)」
名前は急いで毛利探偵事務所の階段を駆け登ると「毛利さん!!」と大きな声で名前を呼びながら事務所の扉を開ける。
「ん?名前君?」
小五郎が名前に気づいて立ち上がろうとした瞬間、小五郎の後ろの窓ガラスに何かが当たり、大きなヒビが入った。
「!?」
「な、なんだぁ!?」
小五郎は窓を開けると「コラァ!!どこのどいつだ!!」と怒鳴る。
「ごめんねー、ちょっと強く蹴り過ぎちゃって…」
「て、てめえ…」
名前も窓の方に駆け寄るとコナンがジョディと一緒にいる事に気づき「(何でコナン君がFBIの人と…)」と戸惑った。
「それより競馬どうなった?そのイヤホンで聞いてんでしょ?」
「あ〜!!てめぇのせいで外しちまったじゃねーか!」
「毛利さん、ケガは?」
「俺よりも窓ガラスだよ!どうしてくれんだあのクソ坊主…!」
名前は向かいの屋上を見ると、黒の組織の人間達が走り去っていく後ろ姿を確認して安どの表情を浮かべる。
「ん?」
「…と、とりあえず窓ガラスが完全に割れなくて良かったですね!」
「それはそうかもしれねーけどよォ…」
「今日は競馬で当たりまくったって言ってたじゃないですか!それで修理費がまかなえますよ!」
「ああ〜…俺の賞金が…」
小五郎はうな垂れながら「…で、どうした?張り込み中だったんだろ?」と名前に聞く。
「あ、えっと、その…し、下のポアロでコーヒーでも買おうかなと思って!毛利さんもよければ飲みますか?」
「コーヒー?なら濃ーいヤツを頼む。今から修理業者に電話だよ…」
涙目になっている小五郎に「了解しました!」と声をかけて、名前は急いで階段を降りて外に出る。
「彼らの車は米花町5丁目から西へ…追跡を」
「まあ、途中でまかれてしまうだろうがな」
「…」
ジョディ、そしてFBI捜査官であるジェイムズ・ブラックと一緒にいるコナンは、名前が自分の方に向かってきている事に気づく。
「ゲッ!?名前刑事!」
「…コナン君…」
「…彼女は?」
ジェイムズがジョディにそう聞くと「あの時、シュウと一緒にいた…日本の警察官です」と答える。
「そうか、彼女が…」
「ジョディさん…。それに…」
ジェイムズは「FBI捜査官のジェイムズ・ブラックです」と言って、右手を差し出す。
「ご丁寧にありがとうございます。警視庁捜査一課の苗字名前です」
名前は、胸ポケットから警察手帳を取り出して中身を見せながらジェイムズに名乗った後、コナンの事を見ながら「それで、FBI捜査官のお二人とコナン君の関係は?」と聞く。
「…時々コナン君に知恵をもらっているのよ。それは日本の警察も一緒でしょ?」
「…我々が極秘で捜査に来ている事を、君は知っているのだろう」
名前が、ベルモットとの事件でその場に居合わせた事を知っているジェイムズは「彼は重要な参考人なんだ」と続けた。
「だからって、小学生の男の子を危ない事に巻き込むのはいかがなものでしょうか」
「…そうね。気をつけるわ」
「お願いします。私達が言える事ではないかもしれませんが、コナン君をこれ以上危ない目にあわせたくないので」
「名前刑事…」
名前はコナンと目を合わせるようにかがむと「コナン君も、必要以上に事件に首を突っ込まないでよ!」と注意をする。
「ハーイ。ごめんなさい…」
「それじゃあ私は張り込みに戻ります。コナン君、私毛利さんにコーヒー買って行くって約束しちゃったから、ポアロのコーヒー買って行ってあげてくれるかな?」
「うん、いいよ」
小銭を取り出してコナンに渡すと、名前はその場を後にした。
「…」
千葉の待っている裏路地に向かいながら「(FBIが捜査しているのは黒の組織…という事はコナン君は黒の組織と何か関係があるって事…?)」と考えていた。