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ニューベイカホテルの近くで事件の聞き込みをしていた名前と高木の元に、無線連絡が入る。

『ニューベイカホテルの39階で殺人事件発生。近くにいる警察官は、至急、現場に急行せよ』
「了解!」
「高木君、早く乗って!」

名前はパトカーに飛び乗ると、アクセルを踏み込んだ。





「名前刑事!高木刑事!」
「コ、コナン君!?」

ホテルの入り口にパトカーを止めて降りたところで、コナンに呼び止められる。

「コナン君、それにみんなも。何してるの?」
「これからホテルでご飯を食べようと思ってて」
「ホテルでかい?リッチだね〜」
「阿笠さん、大変ですね」
「いや〜…」

たくさん食べる年ごろの子ども達を連れた阿笠を見て、名前は少し同情した。

「それより2人はどうしたの?」
「佐藤刑事に内緒でデートですか!?」

光彦の言葉を聞き、高木は慌てて「そ、そんなワケないでしょ!事件だよ!」と否定した。

「事件?」
「あ、高木君…」

名前は事件の内容を話そうとする高木を止めようとするが、その前に「そうだよ!このホテルの1室で殺人事件が」と、高木は続けた。

「えぇっ、殺人事件!?」
「このホテルでですか〜!?」
「しー、しー!これはまだ発表されてないんだから!!」
「その発表されてない情報を、何で子ども達に話しちゃうかな…」
「す、すみません。コナン君なら助けになってくれると思ってつい…」

高木が答えると「コナンだけじゃなくてオレ達だって!」と元太が怒りながらそう言った。

「そうですよ!ボク達は少年探偵団ですからね!」

子ども達が関わる気満々でいる事に気づいた名前は「ほーら、こうなる」と高木を睨む。

「それで?殺されたのは?」

コナンが話を戻そうと質問をすると「このホテルの39階に事務所を構えている外国人タレントプロダクションの社長さんなの」と、名前が答えた。

「苗字さんだって答えてるじゃないですかー」
「こうなったらコナン君達にも協力してもらいましょう」
「そうですね」

高木は「発見したのはそこの秘書で、事務所に戻ったら社長が血まみれで椅子に座っていたそうだ…。上半身の数か所を拳銃で撃たれてね」と詳細を教える。

「秘書の話だと、社長は今日、タレントの卵と会う約束をしていたそうなの。だから怪しいのはタレントの卵なんだけど、社長が街で見かけてスカウトした人で、秘書はまだ会った事がないから顔も名前も分からないらしいのよ」
「じゃあ秘書から通報があった時間は?」
「今から2〜3分前だよ!犯行時刻はその1〜2分前、丁度近くで聞き込みをしていたから、すぐに来られたんだ!」
「何で分かるの?殺された時間」

名前は「その秘書は、2階下の倉庫として使っている部屋で整理をしていたんだけど、今から5分ぐらい前に社長に調べ物を頼まれて、1分後にその結果を報告しようと電話をしたら留守番になってなんだって」と説明する。

「…だとしたら、まだこのホテルの中にいるかもしれないね、犯人」
「どうして?」
「だってホラ、3基あるエレベーターの内、2基は故障中と点検中。1基動いてるけど、みんながそれに乗るからなかなか来ないし、屋上のレストラン街から降りて来るお客さんできっと満員だよ!」

コナンはエレベーターの前に集まっている人だかりを指さした。

「そっか。満員だと乗れないかもだし」
「拳銃を撃った後の火薬の臭いをさせて満員のエレベーターに乗るのは、避けますよね!」
「という事は、階段を5階上って屋上に行ってレストラン街で食事をしているか、そのフロアのトイレに隠れてるか…汗だくで階段を降りてるか…」
「どれにしても、日本語が話せてタレントができそうな外国人なら、見つけやすいよね?」

名前は「それじゃあ高木君はレストラン街に向かって日本語の話せる外国人を見つけてきてくれる?私は目暮警部にこの事を伝えて来るから」と指示を出した。



「目暮警部!」

名前は39階にある事務所に向かい、目暮と秘書のイリーナ・バーマーと合流した。

「苗字君、やっと来たか」
「遅くなりました。状況は?」
「やはりこの部屋には誰もおらずだ。今日会うはずだったタレントの卵についても、顔も名前も分からんままだ」

そこに「警部!」と言いながら高木が子ども達と一緒に現れた。

「2人見つけました!!日本語ペラペラの怪しい外国人を!」

高木の連れて来た外国人、ハル・バックナーとトビー・ケインズを見た目暮は「…どの辺が怪しいんだね?」と聞く。

「1人は屋上のレストラン街をうろついていて、もう1人はそこのトイレに潜んでいたんです!」
「だから、それで何で怪しいと?」
「苗字さんとコナン君に言われたんですよ。エレベーターが1基しか動いていないなら、今挙げた場所にいる外国人が容疑者だと!」

そう言いながら高木はコナンの方を見て笑顔になる。

「苗字君が一緒にいながら、また勝手に事件の内容を話したのかね?」
「す、すみません…」
「つい…いつもの癖で流れるように…」

呆れた顔をした目暮に名前と高木は謝った。

「でもいいじゃない!!」
「こうやって容疑者を連れて来れたんですから!」
「文句いうなよなー!」
「ハハ…」

目暮は「で?その2人しかいなかったのか?」と聞く。

「あ、いえ。合流した千葉達に階段を調べさせている所で…」
「警部!!」

そんな千葉が「もう1人いました!!汗だくで階段を降りていた、かなり怪しい外国人が!!」と言いながら事務所に入って来る。

「ホラ、早く入って!」
「あ、だから私は違うんですよ…」
「いいからさっさと…しろ!!」

千葉が腕を引っ張り、中に引き込んだのは見るからに怪しそうな外国人、アンドレ・キャメルだった。

「ど、どうして…!?」

コナンのつぶやきを聞き取った名前は「コナン君、知り合い?」と聞いた。

「あ、いや…」

名前の質問をコナンは笑って誤魔化した。

「警部、容疑者も揃った事ですし、事件を整理しませんか?」
「そうだな」

事務所の中には、椅子に座ったまま拳銃で射殺された須内廉治の遺体があるだけで、特に争ったような形跡はない。

「秘書の証言によると、本日午後1時25分ごろ、倉庫として使っている2階下の部屋で整理をしていたところ、社長から”調べ物をしてくれ”との電話があり、その1分後に折り返し社長に電話をかけたら留守電になってしまい、ピックアップした資料を持ってここへ来たらこの状態だったと…」

目暮はそう言うと、後ろを振り返り「それで間違いありませんかな?」と、イリーナに聞く。

「ハ、ハイ…。そして私、すぐに警察に電話しまシタ!警察来るの早くてビックリしましたケド…」
「丁度、この近くで聞き込みをしていたので、1時30分にはここに到着しました」
「…となると、犯人が逃走に使える時間は5分前後か」

高木は「ええ!その時間はここのエレベーターの3基の内2基が使えず、しかもお昼時!動いている1基で下に降りようとすれば、屋上のレストラン街から降りて来るお客さんで満員だったと予想されます」と伝える。

「満員だと乗れないですし、6発も拳銃を撃った後なので火薬費の臭いが相当だと思います」
「犯人の行き場所は、階段を5階上がってレストラン街に行き、何食わぬ顔で食事をしているか…」
「そのレストラン街のトイレに隠れているか、39階から1階まで階段で降りるかの3択になりますね!」

目暮は、高木と千葉が連れて来た3人の外国人の方を見る。

「屋上のレストラン街をうろついていたトビー・ケインズさんと、そのフロアのトイレに潜んでいたハル・バックナーさんと、階段を汗だくになって駆け降りていたアンドレ・キャメルさんの3人が怪しいというわけだな」
「おいおい、うとついてたなんて人聞きが悪いなァ…」

そこにトビーが「俺は何を食べようか品定めしてただけだせ?」と話に入る。

「ホォー…日本語ペラペラですな!」
「ああ。父がアメリカ人で母が日本人!おかげでモデルをさせてもらっているよ!彫りの深い顔に生まれたからね…。知らないかい?”アンノン”ってファッション誌!たまに俺、載ってるんだけど」
「後で確認を!」
「はい!」

そしてハルも「あ、あのー…僕もトイレに隠れていたわけじゃありませんよ!ちょっと生徒の事で悩んでて…」と伝える。

「生徒?」
「あ、僕、この近くの塾で英語教師をやらせてもらってるんですが、そこの生徒の1人が好きになってしまって…。屋上のレストランに呼び出すつもりで来たのに、いざとなったらその言葉が思いつかなくて…」
「だから青い顔してトイレから…」
「は、はい…。悩むとこもりたくなるので…」

目暮はあきれた顔で「ホー…」と相槌を打った。



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