「なにしろ日本とアメリカの両方でやってるから、16時から21時が就寝時間!」
そう言いながら、男は部屋の中に入る。
「後はずっとパソコンつけっばなしだから電気代くっちゃってねぇ」
「ほー…」
「だから子どもの声が庭から聞こえてくると集中できなくて、仕方ないから化け物屋敷だと思わせて子ども達を追っ払おうと、あなた方がさっき説明したトリックを仕掛けたワケです!」
男はそう言うと「まさか全て見破られるとは思いませんでしたが」と続けた。
「…諸伏君?」
「ん?」
部屋の中に入ってすぐの壁に立てかけられているゴルフバッグを見ている諸伏に、名前は小さな声で話かける。
「気になるの…?」
「…うん」
伊達は自分の時計を見て日付を確認すると「…じゃあ昨日、7月4日の夜も大変だったんじゃないですか?」と聞いた。
「え?」
「ホラ、FOMC…連邦公開市場委員会での議長発言でだいぶ長期金利が上昇しちゃって、アメリカ相場荒れてましたから!」
「そ、そうなんですよ」
伊達からの質問に男は「昨夜もずっと画面に張り付いてて…なぁ?」と仲間の男達に同意を求める。
「え、ええ…」
「完徹っスよ!!」
3人の言葉に、名前達5人は一斉に笑う。
「え?」
何もわかっていない男達に「7月4日は何の日でしょう?」と名前が問いかける。
「7月4日はアメリカの独立記念日」
「日本市場は開いてても」
「祝日であるアメリカ市場は閉まってる」
「それを知らねェのにデイトレーダーだとォ?」
「さあ、話してもらいましょうか?アンタらが一体何に電気を使ってたかを」
伊達は「デイトレーダーでもないのに、電気代が1か月3万円越えは、いくらなんでも高過ぎるでしょ?」と質問する。
「あ、いや…実は我々パソコン関係の修理業者で…ここの家主にメンテナンスを頼まれて、パソコンやモニターを1台1台チェックしていたんですよ」
そう言うと、男は机に置いてあるパソコンやモニターを指さす。
「御覧の通り、数が多いので1日じゃ終わらなくて、泊まり込みで…」
「じゃあ何でデイトレーダーなんてウソを?」
「説明するのが面倒…というか…デイトレーダーに憧れてたんで、一度なりきってみたくてねぇ」
男がそう言うと、諸伏は「でも、この子達を脅かす必要はなかったんじゃないですか?」と聞いた。
「あんな手の込んだお化けトリックまで仕掛けて」
「子どもに庭を荒らされたら家主に悪いと思って…」
「それにしてはやり過ぎじゃないですか?」
「そうですね…ちょっとやり過ぎたと反省してますよ」
男は「まあ家主は海外旅行中で、明日帰って来るから明日来て頂ければ本人から詳しく…」と話を続けたが、その前に松田が壁にある鍵穴に気づいた。
「おやおやァ?鍵穴があるのにノブがねぇな。この先に隠し部屋でもあるのかな?」
「え!?」
男は焦った声を出すが、松田は気にせず鍵穴の側に置いてある机の引き出しを開ける。
「鍵、鍵っと!おっと引き出しの中にあるじゃねーの!」
松田は鍵を持ち上げると「あの鍵穴には合いそうにねぇけど…」と鍵穴と鍵を見比べる。
「引き出しの中のこの鍵穴には合いそうだ」
引き出しの内側にある鍵穴に鍵を差し込み、鍵を回すともう一度同じ引き出しを引き出す。
「鍵、2個目発見!」
二重になっていた底に隠されていた鍵を見つけると「どうやらこの鍵で当たりみてーだな」と言って、壁にある鍵穴に鍵を差し込んで回した。
「あ…ちょっ!」
男の制止を無視して松田が壁を押すと、ギイイと音を立てながら壁の一部が開いた。
「オーッ!」
中には大量の植物が栽培されていた。
「こいつは大麻!日本じゃ栽培が禁止されてるマリファナってヤツだな!」
「やはりか」
「そんなことったろーと思ったぜ」
「大麻の栽培は光量と室温を調整しなきゃなんねぇんだ!だからボウズが言ってた通り、カーテンを閉め切ってエアコンと照明をつけっぱなしにするから電気代が跳ね上がるって寸法よ!」
そんな松田の言葉に男は「い、いやぁ我々も驚きです!まさかあの家主がこんな事をしてたなんて…」と言う。
「じゃあこの紙切れはどう説明します?」
降谷は新一の持っていた紙を男たちに見せる。
「”山モモワ”と、我々日本人はそう読んでしまいますが、これは日本の漢字とカタカナに似せたアルファベット!”山”はW、”モ”はEで、”ワ”はD、つまり”山モモワ”をアルファベットに直すと”WEED”で雑草。マリファナのスラングになるというワケです!」
「要するに、この紙切れは1g6千円っていう大麻の値札!万が一、日本の警察に見つかった時に備えてこんんな値札にしたんだろうが、この紙からアンタらの指紋が出たら決定的な証拠になるんじゃないか?」
そこまで指摘をされた男は「オイ!銃のバッグを!!」と言って、銃を取り出そうとする。
「って、あ、あれ?」
しかし、置いてあったはずのゴルフバッグがなくなっていることに気づく。
「もしかしてこのゴルフバッグ?」
「!?」
諸伏は背負っているゴルフバッグを見せながら「玄関にまとめてあった雑誌や新聞は競馬ばっかだったし、下駄箱にもゴルフシューズがなかったから変だなァと思って、預からせてもらったよ!」と言った。
「諸伏君ナイス!」
「てめェ!!返せェ!!!」
男は諸伏に殴りかかろうとするが、諸伏の前に入った降谷から右ストレートを食らって返り討ちにあう。
「えー…オレがやろうと思ってたのに」
「あ、悪い」
残りの2人はその隙に部屋から逃げ出した。
「逃がすか!!」
「待ちなさい!」
「そいつは任せた!」
逃げた2人を松田、伊達、そして名前の3人が追う。
「おいおい…ウソだろ!?パンクしてるじゃねぇか!!」
1人は車で逃げようとするがパンクしていることに気づく。
「車、使わせるワケねぇだろうがよ!!」
そこに伊達が後ろから近づいて確保する。
「もう1人はどこだ!?」
後ろの茂みからバイクのエンジンをかける音が聞こえてくる。
「ん?」
「陣平、もしかして!」
その言葉と同時に、後ろの茂みからバイクに乗った男が飛び出してきた。
「やっぱもう一台隠してやがった!!」
「萩原君に電話しよ!」
松田は萩原に電話をかける。
「ハギ!そっち行ったぞ!!」
『あいよ!』
「な、なるべく安全運転で!」
『オッケー!』
松田は電話を切ると、ちょうど良く応援に駆け付けた警察官が到着した。
「ここに大麻を栽培している者がいると通報を受けたのですが…」
「君達、警察学校の生徒かい?」
「そうです!」
「お手柄だけど、授業の方は大丈夫なのかい?」
「まあ、なんとか!」
松田は「それよりも、後1人いるんだけどよ、そっちに連れてってくれ!」と言い、萩原にもう一度電話をかける。
「ハギ、今どこだ!?」
『4丁目の工事中のビルの前で止めてやったよ!』
「んで?ガキは無事か!?」
『おっと忘れてた!』
数秒後に『楽しんでもらえたみたいよ!』と萩原から返って来た返事に名前は安心した。
パトカーに乗って、名前と松田は萩原の元に向かった。
「おいおい、FD何でこっち向いてんだ?」
「イヤな予感しかしないね…」
松田と名前は、パトカーを降りながら萩原達が乗っているFDが進行方向とは逆を向いている事に気がつく。
「ったく…派手にやっちまってんじゃねーか!」
鬼塚のFDは、車体の後ろ側が凹んでいた。
「こりゃーまた鬼公に大目玉だな…」
「安全運転で、って言ったのに…」
「まあまあ、大麻密造者を捕まえたってことでチャラにしてもらわないと!」
男を警察官に引き渡すと、名前と松田もFDに乗り込み、屋敷に戻る。
「大丈夫だった?」
「うん!とーっても楽しかったよー♪」
「す、すごいね!」
「こりゃあ大物になんな」
「本当にね」
屋敷に戻った4人。
蘭は新一と合流すると「お兄ちゃんたちとお姉ちゃんバイバーイ!」と言って2人で仲良く帰って行った。
「遅かったなぁ、おまえら…!」
「ゲッ!」
「お、鬼塚教官…!」
「めっちゃ怒ってるじゃーん」
松田、萩原、そして名前は、降谷、諸伏、伊達と共に鬼塚にこってりと絞られたのだった。