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目暮は「ところで秘書のイリーナさん」と言いながらイリーナの方を見た。

「この”タキシードを取って来てくれ”という文に心当たりがありますか?」
「あ、ハイ…。多分それは社長サンが私に向けた伝言だと思いマス!今晩パーティーがありますから、それまでに取って来てくれと」

イリーナの答えを聞いた名前は「え?じゃあ、このメモは事件とは無関係って事ですか?」と聞く。

「ハ、ハイ…。社長サン、今日タレントの卵サンと食事に出ると言ってましたカラ、社長サンの留守中に私がここに帰って来ても分かるように伝言を…」
「…って事は、このメモをちぎって持って行ったのはあんたかね?」
「ち、違いマス!社長サン死んでるの見つけて電話して、警察の人が来るまで何も触ってないデス!」

イリーナはそう否定すると、机の上にある電話を指さしながら「で、でもタキシードの事知ってまシタ!留守番電話にもそう入れましたヨ」と言う。

「留守電…これか?」

点滅している留守電マークのボタンを目暮が押すと、イリーナが入れた留守電のメッセージが再生された。

『パーマーです。社長サン、もう出かけちゃったんでスカー?とりあえズ、社長サンに頼まれたファイル見つかったのでそっちに持って行きマス!あ、パーティーのタキシードはその後でデ…』

メッセージは午後1時27分に入っていた。

「しっかりと入っていますね」
「もしかしたら犯人はこれを聞いて慌てて逃げたのかもしれませんね」
「もしくは、我々にそう思わせるように犯行後にわざわざ吹き込んだか…」
「ええ!?」
「可能性はなくはないですね」

高木は手帳を見ながら「この”Bring my tux”に、何か隠された別の意味があるとしたら、それをごまかすためにわざと留守電にタキシードの事を…」と言う。

「そ、そんなひどいデス…」

そんな話をしていると、元太が「でもよー…」と話に入って来た。

「タキシードって言ったら、関係があるのは」
「やっぱり…モデルやってるこのお兄さんだよね?」
「あん?」

歩美がそう言うと、3人はトビーの方を振り返る。

「そりゃーモデルの仕事のほとんどは服を着こなす事だけど、タキシードじゃなくても着るぜ?あの社長さんも着ようとしてたしな!」
「とにかく、このメモをこちらで調査しますから、しばらく皆さんは別室で待機してもらいますよ!」

目暮はそう言って容疑者の4人、ジョディ、そして子ども達を別室に案内した。
名前や高木、千葉は引き続き容疑者からの証言の裏取りと、メモの解明を進めた。





「えー、調査の結果、秘書のイリーナさんが日本語の読み書きが苦手で、社長とのメールなどは全て英語で行っていた事や、ハルさんがこの近くの塾で英語教師をやっている事や、トビーさんがファッション誌のモデルをやっている事は全て事実だと判明した!」
「キャメルさんがFBI捜査官なのは、ジョディさんが証明してくれています」
「こっちからは以上だ!」
「では、もうしばらく待っていてください!」

目暮と高木がそう言って切り上げようとするが「ちょっと!例のメモの謎は解けたの?」とジョディが聞く。

「あ、だからそれはまだ捜査中で…」
「…正直、あのメモにあれ以上の意味があるとは思えないんですよね」
「…」

名前がそう言うと、ジョディは怪訝そうな顔をした。

「あ、あのー…ただ待っているだけなら2時間ぐらい抜けたいんですけど…」

ハルが「もうすぐ僕が担当する授業が始まるので…」と聞く。

「わ、私もホテルのレセプションに行って来てもいいでスカ?色々キャンセルしなきゃいけませんシ…今日、社長サンと会った人の事、何かわかるかもしれませんカラ…」
「そうねぇ…刑事と一緒に行くなら構わないんじゃない?」

目暮は「しかしハルさんには今日の授業を諦めてもらうしかありませんな」と答える。

「だったら休む事情を直接塾長に伝えたいんですけど…僕の塾、本当にこの近くなので」

ハルがそう言うと、目暮は「じゃあ高木君はイリーナさんに、千葉君はハルさんに同行してくれ!」と指示を出す。

「はい!」
「苗字君は、引き続きワシと一緒にこのメモの解読だ」
「分かりました」

高木達が事務所を出て行く姿を見ていたトビーが「フン…」と鼻で笑った。

「人が一人殺されたってーのに、授業やパーティーの方が気になるとは…いい神経してるねぇ…。そう思わないかい?警部さん?」
「(え…)」
「…」

名前はトビーの言った”パーティー”という言葉に反応した。

「(もしかして…あの英語の文章が読めなくて…)」
「What's the hell!」
「え?」
「どうかされましたか?」

名前とコナンは、ジョディの声に反応して同時に振り返った。

「例のタキシードのメモの意味、シュウならわかると思ったんだけど今朝から私の携帯、調子悪くてつながらないのよ」
「…赤井秀一ですか」
「え?」

ジョディから出た赤井の名前に、名前は顔を少しだけしかめた。

「ええ、そうよ」
「…この場にいないのに、話を聞いただけでメモの意味が分かるほど優秀な方なんですね」
「ちょっと、何が言いたいのよ…」

名前の言い方が気に入らなかったジョディが、名前に一歩近づくがそれをコナンが制止する。

「まあまあジョディ先生!携帯、調子悪いんでしょ?じゃあボクの携帯しばらく貸してあげるよ!」

ジョディは名前の事を軽く睨むが、すぐにコナンに向き合って「いいの?友達のメールとか電話番号とか入ってるでしょ?」と聞く。

「大丈夫だよ!メールはこの前データを移したし、電話番号はボクの携帯のSIMカードを抜けばわからなくなるし、ジョディ先生の携帯のSIMカードを差せば先生の携帯になっちゃうから!」

そう言ってコナンはSIMカードを抜いてジョディに渡す。

「僕の携帯、先生のと同じタイプだからね!」
「でも困るでしょ?携帯なかったら…」
「平気だよ!ボクもう1台持ってるからさ!」
「ありがとう!じゃあ使わせてもらうわね」

ジョディはコナンから携帯を受け取ると、自分のSIMカードを差した。

「けどさ、不思議だよね?外見は全然違う変わった形なのに、中身はよーく知ってる慣れ親しんだ元の携帯だなんて!」
「はあ?」
「何言ってんだおまえ…」

コナンの言葉にはてなマークを浮かべた元太達に、コナンは「だからー」と続ける。

「キャメルさんが実はFBIだったように、見た目で決めつけたらダメって事だよね、コナン君」

名前がそう言うと「うん!」とコナンが笑顔でうなずく。

「Oh, thank you!」

ジョディも「私にもあのメモの謎がわかったわ!」と言った。

「あ、盛り上がってる所悪いが…おじさんにも分かりやすく説明してくれんかね?」
「じゃあ教えてあげるよ。一発で犯人が分かっちゃう、とっておきの呪文をね…!」
「じゅ、呪文?」

そう言ったコナンに、目暮は「そ、それを唱えると犯人が分かると言うのかね?」と質問をする。

「うん!まあ、色々準備しなきゃいけないけどね!」
「準備とは?」
「まずは椅子を人数分そろえて、”しらんぷり”って言うだけ!簡単でしょ?」

コナンの呪文を聞いた目暮は「ほ、本当にそれで犯人が?」と目を点にして聞き直す。

「うん!新一兄ちゃんに聞いた呪文だから絶対だよ!試してみて!」

目暮は後ろを振り返って名前の事を見る。
その視線に気づいた名前は「目暮警部!本当に分かると思うので、試してみてください」と言って笑った。

「分かった…」

目暮は「おい、高木君!容疑者4人分の椅子を調達して来てくれんか」と、戻って来た高木に指示を出す。

「あ、でも事情聴取なら警察署に来てもらった方が…」
「いや、犯人を割り出すためだ!それさえあれば、分かるはずだから」
「ええっ?本当に!?」
「あ、ああ…多分な。苗字君とコナン君が言っておったからな」
「な、なるほど」

目暮に言葉に納得した高木は、ホテルのレセプションに行って、椅子を4人分持って来た。

「目暮警部!準備、整いました!」

空いている部屋を借り、名前と高木が4人分の椅子を一列に並べると「ウム!」と目暮が頷いた。

「では、容疑のかかった4人の方達はそれぞれ椅子の前に」
「な、何をする気ですか?」
「何か怖いデス…」
「尋問するなら個別の方がいいのでは?」

トビーは「まあ警部さんの言う通りにしましょうや。椅子取りゲームをやるわけじゃなさそうだし」と言いながら椅子の方に向かう。

「あ、まだ座らんように」

4人が椅子の前に立った事を確認した目暮は「オホン」と一回咳ばらいをする。

「4人そろったところでまずは…しらんぷり!」



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