「(スタンガン!…そっか。犯人は人質になってるお客さんに成りすまして、この銀行から脱出つもりなんだ。持って来た爆弾を使って…)」
犯人の男達が全員同じ格好をしている事を思い出し、人質の中から5人を選び、着ていたジャンパーと目出し帽を被せて強盗犯グループに見せかけ、自分達は客のフリをして逃げる。
「(1人で来たお客さんから選べば誰も気づかないって事か)」
「くそっ!!こーなったら金庫ごとぶっ飛ばしてやる!!野郎共、手伝え!!」
「(…金庫を開けようとして爆弾を使おうとしたら予期せぬタイミングで爆発して、選ばれた5人とさっき紙を見せられて何かの指示をもらった支店長、そして余計な事ばっかしているジョディを巻き込んで爆死…。計画は失敗に終わったように見せるってわけね)」
男の叫んだ言葉を聞いた名前は、犯人達の狙いを全て理解した。
仕込みが終わった男達は、自分達の目と口をふさぎ、両手を縛って人質の中に紛れるように座った。
「(多分、選ばれた5人のお客さんと支店長、ジョディはカウンターの中かな…。私達が爆発に巻き込まれないところにいるはず…)
名前は「(…犯人達も人質の中に紛れた…よね?)」と、誰も動いていない事を祈りながら後ろで縛られている腕をお尻の下に通して前に持っていく。
「(きっと、爆発までそんなに時間はないから…なんとかしなきゃ)」
口をふさいでいるガムテープを剥がしていると、かすかにガラガラという台車を動かす音が聞こえてくる。
「(え?誰かいる…?)」
そしてボンっという大きめの音が聞こえた。
「(な、何?爆弾?)」
様子を確認するために、名前は急いで手首に巻かれているガムテープを剥がそうとした。
「よーし、次は全員立って、俺の声がする方にゆっくりと歩いて来てもらおうか!!」
「!?」
「いいか!ゆっくりだぞ!前の奴にけっつまずくんじゃねぇぞ!」
男の指示が聞こえ、名前や客達は立ち上がり声のする方に歩いて行く。
「(…誰?)」
名前は、歩きながら口を使って手首のガムテープを剥がした。
「あんたら3人だったんだね?」
「!?」
「(コナン君!?)」
聞き覚えのある声が聞こえて来た事に驚き、名前は急いで目元のガムテープを剥がす。
「計画にない事を指示されて動かないのは、強盗犯本人達だけだからね!」
たまたま銀行に居合わせたコナンが「よーし!まずは銀行員さんのガムテープを剥がして、入り口を開けてもらってくれ!」と、一緒に来ていた歩美、元太、光彦に指示を出した。
「機動隊が中に入ったらこの3人と、廊下で縛られてる奴とトイレでのびてる男を…」
「誰がのびてるって?」
ジョディをトイレに連れて行った時に、ジョディに顔面を蹴られて気絶していた男が意識を取り戻し、トイレから戻って来ていた。
男はコナンの首を後ろから拘束すると「あの外国人女といい、このガキといい…何だってんだ!?」と悪態をつく。
「おい!そこのガキ共!こいつの首をへし折られたくなかったらカウンターに入って拳銃を持って来い!」
「ええ!?」
「こうなったら籠城作戦だ!地獄の果てまで付き合ってもらうぜ?」
「(コナン君!)」
拘束されているコナンを助ける為に、名前は急いでコナンの元へ駆け寄る。
しかし、名前はコナンの元に到着する前に誰かが発砲した拳銃の弾が男の肩に当たり、男は撃たれた反動でコナンを解放した。
「コナン君!」
「名前刑事!?」
名前はそのまま男に跳び膝蹴りを食らわせると地面に着地し、コナンに駆け寄った。
「だ、大丈夫!?」
「ボ、ボクは平気だよ…。今の発砲って、もしかして名前刑事?」
「いいえ。私じゃないわ…」
「じゃあ…一体誰が…」
名前とコナンは客達の方に視線を向けるが、誰が撃ったのかはわからなかった。
「突入ー!!!」
銃声を聞いた機動隊が銀行の中へ突入し、強盗犯グループは全員確保された。
「無事に犯人達が捕まって良かったわね!」
「本当に、無事で何よりじゃ!」
「まあ当然の結果ね。江戸川君とFBI捜査官、そして日本警察がいたんだもの」
外に出ると、銀行前で心配して待っていた灰原と阿笠と合流する。
「いや、今回は」
「この子達、少年探偵団のお陰よ!」
「まぁ…」
「それほどでも…」
「あるぜ!」
名前は「今回、私は全く役に立ってなかったけどね」と苦笑した。
「どうしたの?浮かない顔して」
「最後に犯人を拳銃で撃った人、誰だったんだろうって思ってさ」
灰原にそう聞かれたコナンが答えると「私も気になったんだよね。あの状況で撃てる人っていなくない?」と名前も同意した。
「うん。ジョディ先生は気絶してたし、名前刑事は犯人に跳び膝蹴りを食らわせるために走ってたし…あの状況で撃てる人なんていないよね」
「!!」
「ジョディ?」
ジョディは辺り見回しながら名前とコナンに「ねえ!見なかった!?人質の中にいたでしょ!?」と聞く。
「え?誰が?」
「知り合いでもいたの?」
「しかし、とんだ災難だったなジョディ君」
そこに、ジェイムズとキャメルが合流する。
「さっきまで酒屋にいたから気づかなくて…」
「で?誰がいたのかね?」
「そ、それが…」
ジョディは一瞬考えた後「いや、何でもありません。今のは忘れてください…」と言った。
「ジョディ?」
「…さ、今日は飲みましょう!お金も降ろしたし、名前も一緒に飲めるしね!」
「あー…その事なんだけどね」
名前が言いにくそうにしていると「おーい、苗字!!」と名前を呼ぶ声を聞こえて来た。
「このまま本庁です〜」
名前は泣きそうな顔でそう言った。
「あら、そうなの?」
「うん。事件の事…一番わかってるだろって…。そりゃあわかってるけどさ!非番だけどさ!お仕事ですから!」
悔しそうな顔でそう言う名前に、ジョディは「それなら仕方ないわね。また今度、一緒に飲みましょう」と提案する。
「ありがとう。絶対飲もうね」
「これ、私の連絡先よ。登録しておいてね」
そう言ってジョディは名前に連絡先を教えた。
「それじゃあ、私はこのまま仕事してきます」
「ええ、またね」
名前はそう言うと、残念そうな顔で特殊事件捜査犯の警部の元へ向かった。
「…ジョディさん、いつの間にあの人と仲良くなったんですか?」
「え?」
「この前の事件の時、結構ギスギスしていたじゃないですか」
名前とジョディの親しげな雰囲気を見たキャメルが、不思議そうな表情で質問した。
「話してみたらいい子なの。って、年上にいい子って言ったら失礼よね」
「え!?あの人、ジョディさんよりも年上なんですか!?」
「そうよ。だからキャメルよりも先輩よ」
「い、意外です…。自分よりも年下だと思ってました…」
そう言ったキャメルに「まあ、名前刑事は童顔だからなー。昔と全然変わんねぇよ」とコナンが言う。
「昔?」
「コナン君って、名前刑事とそんな前からの知り合いなんですか?」
「あ、え、って、蘭姉ちゃんが言ってたんだよ!」
「蘭さん?」
コナンは「そう!蘭姉ちゃん、名前刑事と3年くらい前から知ってるんだって!」と誤魔化すように答えた。
「へー!蘭お姉さんと名前刑事って、前からの知り合いなんだね!」
「何がきっかけだったんでしょうか?」
「今度聞いてみようぜ!」
そう言って盛り上がる3人に「おい、おめーら。あんまり人の過去をあれこれ詮索すんじぇねぇぞ」とコナンが釘をさす。
「どうしてですか?」
「人には聞いてほしい過去と、聞かれたくない過去があるんだよ。そういう事を考えずにあれこれ聞いて、結果、それが相手を傷付ける事に繋がる事もあるって理解しておけよ」
コナンがそう言うと「た、たしかにそうだよね…」と歩美が納得する。
「オレもテストの点とか聞かれたくねーしな…」
「人間、誰しも隠したい過去の一つや二つ、ありますからね」
「そういう事」
そんな子ども達のやり取りを聞いていたキャメルは「ほ、本当に小学1年生かい?」と驚いた。
「最近の子は大人びているな」
「大人びてるって言葉で片付けていいのでしょうか?」
キャメルはそう言って苦笑した。