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「事件が解決したって…やっぱり彼の自殺だったと分かったんですか?」
「いや…上住貞伍さんの投身自殺はトリック。だから、わざわざ事件当時に動いていなかった方のエレベーターでこの6階に来てもらったんです」

6階に上がって来た昼川達に目暮が説明する。

「犯人はエレベーターを使って自殺だと偽装したと彼が言うんでね」
「彼って、ボクは…」
「ああ。世良君だったよね?」

コナンは「とにかく、話してくれる?世良さんの推理を…。間違ったところがないか、ボク達が聞いててあげるから」と言った。

「ああ…ちゃんと見ててくれよ!」
「(大丈夫かな…。それにしても、コナン君が、なんだかいつもより挑発的…)」

6階にいる事に疑問を持った2人が「でも、何でここなの?」と聞く。

「さっきも言ったけど、屋上に置いてあった靴や上着は投身自殺だと見せかけて、本当の犯行現場が別館の6階だと知られないためのフェイク。昼川さん、あんたがエレベーターと車椅子を使って、ここから貞伍さんを突き落としたのを隠すためのね!」
「ちょ、ちょっと待ってよ!!」
「彼が上から落ちて来た時、昼川さんは我々と駐車場の車の中にいたんだよ!?」

世良は「エレベーターのボタンを押しておけば、その場にいなくても電動車椅子に乗せた貞伍さんを自動的に2階から6階に運んで落とし、車椅子だけが再び2階に戻す事ができるんだ」と話す。

「まあ、長い釣り糸とその先につける数本の輪ゴムも用意する必要があるけどね」
「釣り糸と輪ゴム?」
「まあ聞かせてもらいましょうか。自動的に人を転落死させるっていう、その魔法のようなトリックを」

昼川にそう言われた世良は、今回のトリックを説明し始める。

「まず貞伍さんに会いに行って酒で泥酔させるのが絶対条件!酔いつぶれた後、彼を電動車椅子に膝を抱えた状態で乗せ、エレベーターの前に運び、6階で止まってたエレベーターの扉を開けてエレベーター内の扉の上にある鏡に、長い釣り糸の先に着けた数本の輪ゴムを引っ掛ける」

世良は釣り糸を見せながら「そして、エレベーターの外から1階のボタンを押して、無人のエレベーターを降ろし、1階から6階までの意図の長さを計って、再びエレベーターを6階に上げ、図った長さより30pぐらい短い位置で車椅子の前輪の間に釣り糸を結べばトリックスタート!」と続ける。

「釣り糸がどこかに引っ掛からないように手繰り寄せてから、貞伍さんを乗せた車椅子と一緒にエレベーターに乗り込み、2階で車椅子だけエレベーターの外に出し、車椅子が扉に向かって進むようにして扉を閉め、自分は1階に降りる」

そう言うと、世良はコナンの事を見ながら「1階についた時にこのボウヤに”これは別館専用だから乗らないで”って言ってたけど、あれはボウヤをエレベーターに乗せないため…。もし乗られたら、エレベーターの扉の上の鏡から妙な糸が垂れ下がっている事や、その糸の先がもう片方の扉から出てる事がバレてしまうしね」と言う。

「それに、なぜか2階と6階のボタンが押されてるって事が丸わかりになっちゃうからね!」
「に、2階と6階?」
「まあ、百聞は一見にしかず!実際にやってみようよ!」

世良はそう言うと「ねえ、名前さん!」と名前を見る。

「千葉君、準備はいい?」
『はい!2階と6階のボタンを押したエレベーターを、今から上に上げます!』
「エレベーターが2階に着けば、待っているのは扉に避けぎられながら前進し続けていた電動車椅子…」

2階では、到着したエレベーターに電動車椅子が乗り込んだ。

「このエレベーターは前後二つ扉で、1、2階と3階から上は開く扉が真逆。…となると、2階で乗せた車椅子は、この6階に着けば勝手に出て来るはず」

6階に到着したエレベーターの扉が開くと、エレベーターの周辺に置いてあるペンキ缶や段ボール箱で作られた道に沿って進んでいき、そのまま壁沿いに一直線に割れた窓ガラスの方に向かって行く。

「そして、車椅子の足掛けが窓の下の壁にぶち当たり、そのはずみで車椅子に乗せられた貞伍さんが窓の外に…」

世良はそう言うと窓の方に視線を向けた。
しかし、車椅子に乗っている人間の形をした人形は窓の外には飛んで行かず、車椅子に乗ったまま、車椅子は窓の下の壁に当たり続けていた。

「あ、あれぇ?」
「おい…これで落ちるはずじゃあなかったのかね?」
「も、もしかしたらこの車椅子を2階に戻すときに、振り落とされて窓の外に転落したのかも…」
「事前に聞いておった君の推理では、犯人は貞伍さんが転落死した後で車椅子を2階に戻したんだろう…」

名前は「(真純ちゃんの推理で大体合ってると思うけど…あと一歩…何かが足りない…)」と現場の状況を振り返る。

「(…そういえば、窓の傍に何かがぶつかって凹んだ跡のあるペンキ缶があったよね…)」
「確かに面白いトリックでしたけど…所詮机上の空論…。あなた方警察には失望しましたわ。そんな若者の絵空事を真に受けるなんて…」
『ペンキの缶ですよ』
「え!?」

コナンの持つ携帯電話から聞こえて来た新一の声で、悪かった空気が一気に変わる。

『犯人は、窓の傍に置いてあるその2つのペンキ缶を使って、被害者を突き落としたんです』
「そ、その声は…工藤君か!?」
「新一君だ!」
「そうだよ!ボクが新一兄ちゃんに事件の事を電話したらわかったってさ!」

そう言うと、コナンは持っていた携帯を目暮に渡す。

「そ、それで?ペンキの缶をどう使ったというんだね?」
『多分、名前刑事なら気づいていると思いますが、窓の下に大量にペンキがこぼれた跡がありますよね?そこに何かが置いてあった跡もあるはず』

新一がそう言うと、名前は「あそこですね」と指を差した。

『その跡に合わせてペンキ缶を横に倒して置いてみてください。ピッタリ合いませんか?』

目暮はペンキ缶を2つ、窓の下の壁に並べて「お!2つともピッタリ一致するぞ!!」と嬉しそうに言う。

『じゃあ、その2つの缶を両脇から足で押さえて、車椅子をもう一度窓から話して発進させてください!』
「えーっと車椅子は…」
「じゃあボクが」

世良は車椅子を移動させると「この辺からでいいのかなあ工藤君?」と大きな声で聞く。

『この辺って…僕は現場にはいないんだから判断しようがないけど…』
「そりゃそうか!んじゃ発進させるよ!」

世良が車椅子から手を離すと、先程と同じように車椅子が壁に沿って一直線に窓に向かって行く。

『窓の下の壁にペンキを垂らして固定してあったペンキ缶に…車椅子の足掛けがぶつかれば、足掛けの先が缶の下に滑り込んで後輪が浮き上がり、ひじ掛けが壁に当たり、その反動で被害者は窓の外に放り出されるというわけです!』

新一の言った通り、人形は車椅子から吹っ飛んで窓の外に放り出された後、下で待機していた捜査官たちによって受け止められた。

『そして、被害者が転落死したのを目の前で確認した犯人は、屋上に怪しい人影を見たと偽って屋上に行く口実を作り、屋上へ行くために6階で止まっていたエレベーターを1階に降ろしたんです』
「千葉君、エレベーターを動かして」
『了解!』

千葉がエレベーターのボタンを押すと、車椅子の前輪の間に結んだ釣り糸が引っ張られて、半回転しながらエレベーターの方に進んでエレベーターの扉に突撃し続ける。

『引っ張られる釣り糸が30p短い分、エレベーターの鏡に引っ掛けた輪ゴムが伸びきって切れ、犯人がエレベーターに乗る時には、エレベーター内には何も残っていないという算段ですよ!』
「そ、そういう事だったのか…!」
『後は、エレベーターが最上階に着いた時に、何か理由をつけてエレベーターから一番最後に出る状況を作り、出る前に6階と2階のボタンを押すだけ。そうすれば、来た時にようにエレベーターは6階で車椅子を乗せて2階で降ろし、後で警察に発見されても、犯行現場から離れた場所で、なぜか動き続けていた車椅子にしか見えませんからね』

新一がそう言うと、全てを認めた昼川が「私があの男を車椅子に乗せて地獄に叩き落してやったわよ!」と上住が考えた動く無人の車椅子のトリックを使った事を自白した。



罪を認めた昼川が連行されていくのを見届けた名前は「真純ちゃん、大活躍だったね!」と世良に声をかける。

「やめてよ名前さん!結局、ボクの推理は間違ってたしね」

世良は悔しそうな顔をしてそう言う。

「ほとんど正解だったじゃない。でも、いつのまに探偵になったの?」
「フッフッフ!かっこいいでしょ!ボクも兄貴達みたいに、人の役に立つ事がしたくてさ!」
「そっかそっか、でもあんまり危ない事に首を突っ込んじゃダメだよ」
「分かってるよ!」

世良は携帯を取り出すと「おっと、そろそろ行かないと。じゃあね、名前さん。久しぶりに会えて嬉しかったよ!またね!」と笑顔で手を振った。



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