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「名前さん!美和子います?」
「美和子ちゃん?まだ戻って来てないみたいだけど…何か用事だった?」
「いないなら大丈夫です!」

捜査一課に戻って来た名前は、入口で宮本に話しかけられた。

「あら?新人さん?」
「名前さんは会うの初めてでしたっけ?」

名前は、宮本の隣にいる女性に目を向けると「初めまして。捜査一課の苗字名前です」と自己紹介をする。

「初めまして!先月杯戸署から転属になりました、三池苗子です!」
「杯戸署からという事は、私の後輩だね」
「はい!苗字さんのご活躍は丸警部からもよく聞いてました!」
「丸警部は元気?」
「とっても元気ですよ〜!久しぶりに苗字さんに会いたいと言ってました」

懐かしい上司の名前が出て来て、テンションの上がる名前。

「また連絡してみてくださいね!」
「うん」
「それじゃあ名前さん、私達は美和子に見つかる前に退散しますね〜!」
「なんだかよく分からないけど、行ってらっしゃい」

宮本と三池を見送ったのと入れ替わりで、佐藤が捜査一課に戻って来た。

「名前さん、お疲れ様です」
「美和子ちゃん、お疲れ様!」

佐藤は自分の席に戻ると、机の引き出しを開けた。

「あれ?」
「ん?どうしたの?」
「名前さん、私の車のキー、知りませんか?」
「車のキー?」

名前は、引き出しの中をゴソゴソと探している佐藤の隣に立つと「ないの?」と引き出しの中を覗く。

「そうなんですよ。さっきから探しているんですけど…」
「ごめん、見てないや」
「どこに行ったんだろう…」

佐藤は「ねぇ、高木君」と、電話をし終わって捜査一課に戻って来た高木にも声をかける。

「私の車のキー、知らない?」
「ああ、それなら由美さんがさっき持って行きましたけど」
「由美が?」
「”ちょっとデコるけどヨロシク〜♪”って…」

高木の言葉を聞き、佐藤は「デコるって…さてはまたあの変なステッカー貼ってイタズラする気ね!」と呆れたような顔をした。

「ああ、あのステッカー」

名前は、宮本が佐藤の車にイタズラで貼ったステッカーを思い出す。

「フフッ、あれは…面白かったね」
「もう!名前さん笑いすぎですよ!」
「ステッカー?」
「若葉マークに似せた”恋愛初心者運転中”ってヤツよ!この前、そのステッカーに気づかずに殺人現場に乗り込んじゃって大恥かいたんだから!」

佐藤が恥ずかしそうにそう言うと「ま、まあ、若葉マークのようなマグネット式や吸盤式のステッカーならすぐにはがせますよ」と高木がフォローする。

「そうだけどさ!」
「車使うの?」
「今日は諦めます。イタズラされた車じゃあすぐには乗れないですから」
「それもそうだね」

名前はそう言うと、その時の事を思い出してもう一度フフッと笑った。







「よく降るなー…」

朝から一日雨の今日、名前の心は少しざわついていた。

「何も起きずに、無事に平和な1日で終わりますように」

名前のつぶやきを拾った目暮が「残念ながら苗字君」と言いながら近づいてきた。

「事件ですかー?」
「事故の可能性もあるが、詳細は不明だ。結婚パーティーをしているレストランの駐車場に停めてあった車が突然炎上したらしい」
「車が炎上…!」
「高木君、千葉君、君達も一緒に現場に向かうぞ」
「はい!」



現場に到着すると、すでに車は鎮火されていて、中から1人の遺体が発見された。

「火の回りが早く、遺体は真っ黒でした…。現在、歯の治療痕の照合をしてもらっています」
「ただ状況的に、車の持ち主である加門初音さんだと思います」
「分かりました」

現場検証を終えた警察官は「車が燃える直前に、加門さんから自殺をほのめかす電話があったそうです」と続けた。

「警部!車に旅行用のトランクが2つ入ってました」
「2つ?」
「ハネムーンに行く準備をしてたんでしょう…。亡くなった彼女は明日、私の旧友と結婚する予定でしたから」

駐車場に現れた小五郎を見て「毛利さん!いらしてたんですね」と名前は挨拶をする。

「またお前か…」
「今日は旧友と彼女の結婚前のパーティーだったんですよ。それに私も呼ばれていました」
「でも、何でそんな幸せな人が自殺を…」
「さぁ…マリッジブリーってやつじゃねーのか?」

小五郎と一緒に駐車場に出て来たコナンが炎上した車の傍にしゃがむと「ねぇ、これって付け爪だよね?」と名前を呼ぶ。

「え?」

名前もコナンの隣にしゃがみ「本当だ。…綺麗なブライダルネイルだね」と落ちていた付け爪を拾った。

「この付け爪…」
「何かあった?」
「…ちょっと調べてもらってくるね」

名前は拾った付け爪を持って、目暮の元へ行き「目暮警部!この付け爪なんですけど、爪の先に何か付着していないか調べてもらってください」と手渡した。



雨脚が強くなり、名前達はレストランの中に避難した。

「だいぶ雨が降ってますね」
「本当に」
「あ、苗字さん、そこ滑りやすくなっているので気をつけてくださいね」

高木に足元を注意するように言われた名前だったが「うん、ありがと…ってわっ!」と、高木の気遣いも虚しく滑って転びそうになる。
しかし、名前が転ぶ前にレストランのウエイターの男性が名前の事を抱きとめた。

「す、すみません!」
「大丈夫ですか?」
「(え…)」

ウエイターの声に聞き覚えがあった名前は、勢いよく顔を上げて、ウエイターの顔を見た。

「(れ、零君…?)」

名前の視線に気づいたウエイターの格好をした降谷は、ウィンクをすると「ケガはありませんか?」と聞く。

「あ、はい…。大丈夫です」
「良かったです。足元、気を付けてくださいね」
「ありがとうございます…」

そう言うと、降谷は名前から離れた。

「(な、何で零君がこんなところに…?しかも、メガネかけてウエイターの姿で…)」

名前は降谷の後ろ姿を凝視しながら困惑していた。

「警部!やはり付け爪にはわずかに皮膚が付着していました」
「やはり…。となると、その付け爪に付いていたのは、彼女が車の傍で誰かと争った時に付着した犯人の皮膚の可能性が高いな」
「と、いう事は…殺人ですか?」

小五郎がそう言うと「だ、誰だ!?誰が初音を殺ったんだよ!?」と、加門の婚約者で、小五郎の旧友である伴場頼太が目暮に詰め寄る。

「えーっとあなたは、彼女と婚約していた伴場頼太さんですよね?」
「ああ、そうだよ!!」
「この手のケガ、どうされたんですか?」

目暮は、伴場の手首を掴みケガをしている右手の事を聞く。

「こ、これはさっき転んだ時にコップの破片で…」
「では、このヘアブラシに見覚えは?」

そう言って目暮はヘアブラシの入った袋を取り出して伴場に見せる。

「あ、ああ…俺のだよ。旅行用のトランクに入れたはずだけど」
「これから採取した毛髪のDNAを照合した結果、彼女の付け爪に付着していた皮膚のDNAとほぼ一致したんですよ」

目暮が先程聞かされた結果を伝えると、伴場は「な、何言ってんだ!?」と叫んだ。

「お、俺が初音を殺したっていうのかよ!?」
「伴場さん、落ち着いてください。まだ完全に一致したわけではないので」
「そ、そうですよ!できれば、あなたの承諾を得て正確に鑑定したいんですが…」

興奮した様子の伴場に「落ち着けよ伴場!お前はやってないんだろ?」と小五郎が声をかける。

「あ、当たり前だ!!」
「でも、彼女に抵抗されてひっかかれた傷をごまかすために、わざと僕に殴りかかってケガをしたって場合も考えられますよね?」

そこに降谷が話に入っていく。

「な、何だとてめェ!?」
「フン、よく言うぜ…。愛しい女が誰かの物になっちまう前に殺したんじゃねぇのか?ウエイターさんよォ!」
「え?」
「(え!?)」

別のパーティーの招待客である男性の話を聞き、名前は思わず顔をしかめる。

「ど、どういう事かね?」
「(どういう事なの零君!!)」

無言で降谷を睨む名前に気づき、降谷は心の中で「(僕が君以外を愛しているわけないだろ!)」と反論して名前を睨み返した。

「自分で言わねぇんなら俺が言ってやるよ!」
「(伴場さん言っちゃってください!)」
「こいつは初音と密会してた…愛人なんだよ!!」

伴場の言葉に、名前は「えー!?」と思わず大きな声を上げる。

「そ、そうなのかね!?」
「苗字さん、驚きすぎじゃないですか?」
「ご、ゴメン…」

降谷はフッと笑うと「そりゃー会ってましたよ」と伴場の言葉を肯定。

「なにしろ僕は彼女に雇われていた、プライベートアイ…」

かけていたメガネを取った降谷は「探偵ですから…」と続ける。

「(あ、そういう事)」

降谷のセリフを聞いた名前は、安どの表情を浮かべた。



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