42

「た、探偵だと!?お、おかしいじゃねぇか!?」

降谷の言葉を聞いた伴場は「初音に雇われた探偵が、何で初音とオレの結婚パーティーの店で偶然ウエイターをやってんだよ!?」と問いかける。

「偶然ではありませんよ。僕がアルバイトとして採用されたこの店を、パーティー会場に選んでもらったんです。初音さんだったでしょ?この店に決めたのは」
「そ、そうだけど…い、一体何のために!?」
「もちろん、あなたの動向を監視するためですよ」

伴場は「お、俺の監視?」と驚きながら復唱する。

「初音さんに頼まれたんです。浮気性のあなたに女がいないか調べて見張ってくれと。だからわざとあなたのズボンにケーキの染みをつけたんです。女性に言い寄られないように…。まぁ、あなたはそんな染みも気にせず女性と仲良くされていたようですが」

降谷はそう言うと、窓から見える駐車場の車を見ながら「もっとも、僕が彼女にそう頼まれていた事を証明しようにも、初音さん本人はこの店の駐車場に停めた車の中で焼死してしまったみたいですけど…」と続けた。

「しかし、僕が彼女に依頼を受けていた事は、そのサングラスの彼が証明してくれそうですよ?」
「え?」

先程降谷に愛人疑惑を被せた男性の方を見ながら「僕が彼女に伴場さんの身辺調査の途中経過を報告していた現場に、居合わせたようですし」と言って笑う。

「何なんだねあんたは!?」
「あ、いや…」
「恐らく、彼もまた探偵なんでしょう」
「た、探偵!?」

このレストランには小五郎、降谷、サングラスの男性の春岡参治、そしてコナンの4人の探偵が終結していた。

「依頼主は新郎である伴場さん。彼女が最近誰かと会っているようなので、探ってほしいと依頼され、密会現場を突き止める事はできたが、相手の男は帽子とフードを被っていて顔が分からない。でもその時に聞いた男の声がウエイターの僕と似ていたので、僕をテーブルに呼んで注文をし、改めて声が同じなのを確認して、同一人物だという事をサインで伴場さんに伝えた、という所でしょう」

降谷の推理を聞いて「(やっぱり零君はすごいなー)」と名前は感心した。

「その直前に伴場さんを携帯でトイレに呼び出したのは、店内に例の男がいるかもしれないからこれから確かめると伝えるため…。ですよね?」
「あ、ああ、そうだよ!まさかあんたが探偵だと思わなかったんだ。尾行してもまかれたし…」

降谷は名前に視線を向けると、一瞬不服そうな顔をしてからニッコリと笑った。

「(わー…私が疑ったから零君拗ねちゃった)」

名前は眉毛をハの字に下げて、申し訳ない気持ちをアピールする。

「で、でも彼女が謎の男と会っている事を知ってて結婚しようとしてたんですか?」
「普通本人に確かめるだろ?」
「その密会以来、男とは会ってねぇって探偵さんが言ってたし、探偵を雇って彼女を調べていたなんて知られたら嫌われると思ったんだよ!お互い養子だって事まで打ち明け合った仲だったから…」

伴場の言葉を聞き「(二人とも養子って…すごい偶然)」と名前は思った。

「まぁ、実際はお互い探偵を雇って相手を探っていたようだがね」
「俺に依頼してくれりゃあこんな優男、探偵だってすぐに突き止めてやったのによ!」
「頼めるかよ!お前は有名で顔バレしてるし、後で彼女に紹介するつもりだったしよ…」

小五郎は「でもなぁ、俺に任せてりゃ彼女も自殺なんてしなかったと思うぞ?」と言った。

「彼女が車の中で火をつけた原因は、この店でのお前のご乱行を、この男が彼女に電話でチクったからかも知れねーんだからな!」
「ぼ、僕はそんな電話してませんよ!それに、酔って女性にじゃれついてた程度でしたし、あれを電話で聞いたとしても自殺するとは…」

名前は「電話…。伴場さん、あなたが初音さんの車が炎上する直前に、彼女に電話をかけて自殺をほのめかすメッセージを受けたんですよね?」と聞く。

「あ、ああ…。泣きながら”サヨナラ”って…」

そう言うと、伴場は携帯電話を取り出して着信履歴を見せる。

「ホラ、今夜8時54分!通話履歴が残ってるだろ?」
「110番通報された時間は?」
「えーっと、9時21分です」
「30分近く時間差があるのはなぜですか?」
「し、知らねーよ!」

蘭が「あ、電話したのわたしなんですけど、先に救急車や消防車を呼ぶのに色々手間取っちゃって…」と答えた。

「でも、救急車や消防車が到着した時には、もう手がつけられないぐらい車の中が燃えてたみたいですけど…」
「でもさー、おかしくなーい?」

蘭の話を聞いていたコナンが「普通、車の人が乗る場所って燃えにくい物で作ってあるのに、なんであんなに燃えてたの?」と聞く。

「そ、そうね…。時々爆発してたみたいだし…」
「車の中にスプレー缶や紙や段ボールがたくさんあったの。スプレー缶が爆発したり、紙や段ボールに引火したから、あんなに燃えたみたいだよ」
「ふーん」
「なぜそんな物が車内に?」

目暮に聞かれた伴場は「今夜、パーティーが終わったら2人で車に型紙あてて、スプレーでデコる予定だったんだよ…」と答える。

「そのデコッた車で2人で結婚式場に乗り込んでみんなを脅かしてやろうって…。も、もちろんみんなには内緒だったから誰も知らねーと思うけど…」
「(みんな車デコるの好きだなー)」

名前は昨日の宮本の事を思い出す。
伴場は焦りながら「う、嘘だと思うならメール見てくれよ!ちゃんと材料揃えたってメールが彼女から来てるからよ!」と言って、メールの画面を名前達に見せた。

「初音さんからの最後のメールは…今夜8時18分にネイルサロンが終わった報告の物ですね」
「あ、ああ。ネイルサロンから写メを送って来たみたいで」
「…」
「という事は、初音さんが可燃物が大量に乗った車と一緒に30分後に戻って来る事を知っていたという事ですな?」

目暮にそう指摘された伴場は、顔を青くした。

「お、おい…何言ってんだ!?」
「つまり、あなたなら店をこっそり抜け出し、駐車場で彼女を待ち伏せて気絶させ、車に押し込んで焼殺できたという事ですよ」

目暮は、状況や付け爪に付着した皮膚のDNA鑑定の結果などから伴場が一番の容疑者であると伝えた。

「で、でもそのDNAはピッタリ一致したわけじゃねーんだろ!?」
「ほぼ、という事は…その皮膚が先ほどまで降っていた雨や泥などで汚染され、完全なデータが取れなかったためだと思いますが、血縁者じゃない限り、ゲノムのほぼ一致はまずありえない事を踏まえると…そのDNAは同じ人物のDNAと考えた方が自然ですけどね」
「な、何だとてめェ!?」

伴場は降谷の方を振り返ると、拳を振り上げて殴りかかる。

「(あ!伴場さん危ない!)」

しかし伴場の拳は軽くかわされて、伴場は床に派手に倒れ込んだ。

「や、止めてください暴力は…!」

降谷は「毛利さん、彼の足を押さえて!また殴りかかって来られたら…!」と小五郎にお願いするが「んな必要ねーよ」と小五郎が答える。

「(足…?)」
「おい伴場、落ち着けって。まだあのヘアブラシに付いていた髪がお前のだって決まったわけじゃねーし、ちゃんとお前のDNAを取って調べてもらえばいいじゃねーか」

降谷が不自然に伴場の足、と強調した事に気づいた名前は、四つん這いになって小五郎の話を聞いている伴場の足元に視線をやる。

「口ん中の粘膜を綿棒で採取するだけだからよ!」
「(靴底に…何だろう?…クリームかな?)」

伴場の靴の裏には、床に落ちた時に踏んだケーキのクリームが残っていた。

「では、DNA鑑定の承諾をしていただけますね?」
「あ、ああ…」
「じゃあこちらへ…」

高木は伴場を近くのテーブルに誘導する。
伴場のDNA鑑定が終わるまで、名前はもう一度レストランの周辺を見て回るために出口に向かって歩き出し、降谷の横を通り過ぎようとする。
降谷の横を通り過ぎた瞬間「後で説明する」と、降谷が小さな声で名前に伝えた。

「(きっと公安のお仕事関係だろうから、ちゃんとした説明は期待してないよー)」

名前は軽くうなずくと、レストランの外に出た。

「駐車場に出るドアは2つ…。事件当時は雨が強かった関係でレストランの後方にあるこの扉は鍵がかかっていた、という事で間違いないのね?」
「はい。オーナーに確認したので間違いありません」
「ありがとう」

外にいた警察官からそう聞いた名前は「という事は、正面の出入り口からしか出られないって事か…。伴場さんが犯人なら、誰かが覚えてると思うんだけどな…」と思った。

レストランの裏側に回ると小さな窓があった。

「ここは…たしかトイレの窓…。でも、ここに大きな水たまりがあるから、ここを通って外に出たのなら靴とかズボンの裾が汚れるはず…」

名前は、伴場が犯人だった場合、どのように店内から駐車場に向かったのかを考えるが答えが出ない。

「えー…どう考えても伴場さんに犯行は無理じゃない?」



>> dream top <<