画面の中の揺れが止まると、画面の中にカラスが写る。
「多分、カメラが固定されている棒か何かにカラスが留まったので、その振動で画面が揺れていたのではないでしょうか?」
「なるほどな…」
「とにかく問題の首吊り自殺で高木に何らかの恨みを持った人物の犯行である可能性が極めて高い!!詳しい捜査資料を持っている所轄と連携し、被疑者を割り出せ!!」
「はい!!」
松本が指示を出すと、刑事達が一斉に捜査一課を出て行く。
「松本管理官」
「ん?」
名前は「もしかしたら、高木君は北海道にいるのかもしれません」と伝える。
「なぜそう思う?」
「光彦君達にタブレットを渡した男性の”明日、明後日”という言葉…。あれは北海道の方言なので」
「何だと!?」
名前がそう言うと「し、しかし、その男が犯人だとは限らないんじゃないのかね…?」と目暮が話に入る。
「高木君が調べていたのがナタリー・来間さんの首吊り自殺の件だとしたら…。彼女も北海道出身なので、北海道の方言を使った男性と関係があると考えてもいいのではないでしょうか?」
「ナタリーさんの?」
「だが、高木がなぜその女性の自殺の事を調べていたのかが問題だ」
松本の疑問に「そうですよね…」と名前も疑問に思う。
「(ナタリーさんとの接点は、班長の彼女だったという事くらいだし…)」
「うむ…」
「松本管理官、目暮警部、私はナタリーさんの周辺の人間関係などを中心に調べてみます!」
「分かった」
「何か分かれば、すぐに報告をしてくれ」
「はい!」
名前は返事をすると、高木が確認していたという事件の資料を確認するために、資料室に向かった。
携帯の着信音で飛び起きた名前は「ヤバ!寝ちゃってた…!」と、あわてて電話に出る。
『もしもし名前さん?今どこにいますか?』
「美和子ちゃん、おはよう。ごめん、高木君が調べてた事件の資料とか確認してたらいつの間に寝ちゃってた…」
『昨日も遅かったですもんね』
「やっちゃったよー…。それで、どうしたの?」
佐藤は『今、警視庁の前でコナン君達といるんですけど、コナン君が名前さんに確認したい事があるみたいで、出て来られますか?』と聞く。
「もちろんだよ。すぐに行くから、少しだけ待ってて!」
名前はすぐに資料室から走り出した。
「名前さん!」
「美和子ちゃん!それに、みんなも…お待たせ!」
警視庁の前で、佐藤、そして子ども達が話をしながら待っている姿を見つけると、名前は駆け寄った。
「名前刑事、確認したい事があるんだけどいい?」
「もちろん。何か気づいた事があった?」
コナンは頷くと「もしかして、ナタリーさんって伊達刑事の彼女だった?」と質問する。
「か、彼女?伊達さんの!?」
「うん。カレンダーに毎日のように英語で”DATE”って書き込まれてたんでしょ?それって”デート”じゃなくて、伊達さんの名前の”ダテ”だったんだよ。デートのつづりも、伊達のローマ字もどっちも”DATE”でしょ?」
「た、たしかに…」
コナンの話を聞いた名前は「うん。ナタリーさんは班長の彼女…婚約者だったんだ」と少し寂しそうな表情で答えた。
「そっか…英語の先生だから…。私、頭の中でDATEをデートって勝手に変換してたのね…」
「あの日に起きた事件、全部美和子ちゃんと高木君が担当したもんね」
「はい…。完全にデートだと思っていました」
コナンは「その人が自殺した日もデートの約束をしてたみたいって言ってたよね?」と佐藤に聞く。
「え、えぇ…。それがもしも伊達刑事と彼女がどこかへ出かける約束だったとしたら…」
「彼女は伊達刑事が交通事故で亡くなった事を知らずに待ち続け、捨てられたと絶望し命を絶ったかもしれないよね?」
「そ、そんな…」
コナンの推理を聞いていた名前は「それはないよ」と否定する。
「え?」
「班長が亡くなった日…ナタリーさんも病院に来ていたの。あの日…班長はナタリーさんのご両親に会いに、二人で北海道に行く予定だったのよ…。婚約者だったナタリーさんにも班長が亡くなった事が知らされて、実際に会いに来ていたから、知らずに待ち続けたって事はないわ」
「そうだったんですね…」
名前は「でも、高木君が早上がりをする直前に会った時に”男同士の約束を果たしに行く”って言ってたから、班長に何かを頼まれた高木君が、彼女のご両親に会いに行ったのかもしれないね」と補足した。
「そうかもしれないですね…。それに、名前さん以外、ナタリーさんが伊達刑事の死を知っていたって知らなかったので、高木君が勘違いしている可能性もありますね」
「うん…。コナン君の推理通り、ナタリーさんが捨てられた事に絶望して命を絶った、と推理した高木君が彼女の遺族にその事を伝えに行こうとしていたのかもしれない…」
伊達から譲り受けた手帳に貼られていたナタリーのプリクラを見て涙ぐんでいたという話を思い出した佐藤は「プリクラに映っていたのがナタリーさんで、事件の資料で顔を確認したから伊達刑事の彼女だって事に気づいたって事ですね」とうなずいた。
三人の話を聞いていた光彦は「で、でもちょっと待ってください!それは伊達という刑事さんの事ですよね?」と話に入る。
「高木と関係ないじゃんか!」
「彼女が親に、自分の彼の名前はデートと紛らわしいDATEじゃなく、警視庁の刑事のWATARUさんだと言ってたとしたらどーだ?」
名前は頭を抱えながら「ナタリーさんの遺族に”彼女の事で報告したい事があるから会いたい”って、連絡してきた高木君を”彼女を捨てて自殺に追い込んだワタルという名の警視庁の刑事が、一年も経ってからのこのこ会いに来るって思い込むね…」と推理した。
「で、でも彼女の両親は彼女の遺体を引き取りに来る途中で事項に遭って…」
「じゃあ彼女の遺体は誰が?」
「た、たしか同じ英会話教室の年配の先生で…彼女の遺品もその人が…」
佐藤は「そ、そういえば彼女の遺体を引き渡し時にその先生、泣き崩れてたとさっき所轄から報告があったわ!同郷で、娘のように思ってたって…!」と、所轄からの報告を思い出す。
「北海道の方言を話す、英会話教室の男性…。彼女の遺品を受け取った…」
「うん!間違いない!高木刑事を拉致したのはその人だ!!彼女の遺品から携帯のメールを見て、彼女が伊達刑事と同じ名前の高木刑事に捨てられ自殺したと思い込んじまったんだよ!!」
名前が「急いで松本管理官に報告!」と佐藤に叫ぶと、佐藤もうなずいた。
捜査一課に戻った名前達は、さきほどコナン達と話した内容を松本に報告した。
「被疑者を特定した!!氏名は笛本隆策!先月、病気を理由に英会話教室を辞め、故郷である他移動へ帰ったと思われる!北海道の住居は不明であるが、以前住んでいた都内のマンションを引き払っていない事を踏まえると、そこに潜伏している可能性もある!」
高木を拉致した犯人である笛本の居場所を都内のマンションだと仮定した松本は「ただちに急行し、見つけ次第身柄を確保!!高木の居場所を吐かせろ!!」と指示を出した。
「はい!!」
笛本のマンションに向かった佐藤と捜査一課の刑事達数名。
名前は、佐藤が送って来るであろう笛本の写真をコナン達と一緒に捜査一課で待っていた。
『どう?この人で間違いない?』
「うん!」
「間違いありません!」
「このおっさんだぞ!!」
佐藤から送られてきた写真を確認した子ども達の言葉を聞いて「犯人を確保できそうだし、これで高木君の居場所も分かって解決だね」と名前はホッとする。