「おい佐藤!!どうした!?」
「まだ確保できていないのでしょうか?」
「状況は!?被疑者は確保できたのか!?」
松本の問いかけに『管理官…残念ですが…先ほど被疑者、笛本隆策の死亡が確認されました…』と佐藤が答えた。
「何?被疑者が死んだ!?」
「え?」
その言葉を聞いた名前達は一斉に松本の方に視線を向ける。
『とうやら我々の突入時に笛本が飲んでいたワインの中に毒が混入されていたものと…』
「誰かに毒殺されたのか!?」
『いえ…。毒のビンやワインボトルがそばに置いてあるので、最初から警察が来たら自ら命を絶つ事を決意していたようです』
佐藤は現場の状況を伝える。
『爆弾を所持していたところを見ると、恐らく我々が強行に確保しようとした場合は爆死…。話す予知があるなら、毒を飲んで我々が落胆する様子を見たかったのではないかと…。被疑者は我々警察を恨んでいたようですから…』
「それが誤解だという事は話したのか!?」
『はい…。あなたが拉致した高木渉は、同じ警視庁の刑事だった伊達航との間違いで、しかも動機であるナタリーさんの首吊り自殺は、彼に捨てられたからではなく交通事故で彼が亡くなったからだと…』
「…班長…」
佐藤は『ですが、その話をした時にはもう毒を飲んでいて…。高木巡査部長を拉致している場所を話す前に…』と続けた。
「その被疑者の部屋から手掛かりになるような物は出なかったのか?」
『はい…。現在捜索中ですがまだ…。唯一発見したのは、拉致した時に奪ったと思われる高木君の携帯電話で…』
高木の携帯電話に残されていたメールを確認した佐藤。
そこには、笛本が友人のためにとった航空チケットを使って笛本の指定した場所に来てくれという内容だった。
「そっか。だから高木君の名前が乗客名簿になかったんだ…」
『被疑者が書いたと思われる、私宛の未送信メールもあり”警視庁の前の植え込みに高木刑事からの贈り物を置いた”と書いてありましたから、多分、最初はそうやって例のタブレットを渡そうとしたのではないかと』
「そして、偶然高木と知り合いの子ども達と出会い、タブレットを託したといわけか…」
『はい。その方が、置いている間に誰かに盗られる危険も消えますし』
松本は高木の居場所を探るために「他のメールに高木を拉致している場所を臭わす事は書いてないのか?」と聞く。
『はい…。”空港に着いたら迎えに行く”とだけ…』
「じゃあ引き続きその部屋の捜索を続行しろ!」
『はい!』
「何も出て来ない可能性が高そうですね…」
佐藤との会話を聞いていた白鳥は「なにしろ相手は、高木君を拉致している映像だけが見られるタブレットを我々に与えているのみ…。機能をほぼ無効にし、裏面の表記も全て削り取られ、映像の発信元は海外のサーバーを通していて未だにつかめていません…」と言った。
「最初から警察の前で自殺するつもりだたのなら、拉致している場所を示すような物は何も残していないかと…」
「やはり、ナタリーさん達の故郷の北海道ではないでしょうか?」
「ああ…。普通に考えればその可能性が高いが…」
目暮は「一応、地元の建設業者などに調べてもらっているんですが…映像に映っているような4階以上の建造物の工事現場で高木を発見したという報告はまだ…」と伝えた。
「苗字君、他にナタリーさんの事を知らないのか?」
「すみません…。伊達からはあまりナタリーさんの話を教えてもらえなくて…」
「そうか…」
「残る手掛かりは高木のあの映像だけか…」
高木の映像には、居場所のヒントになるような物は映っていないように見えた。
「雨か雪でも降ってくれれば場所が絞れるんですが…」
「映っていたのはカラスでしたっけ?」
「カラスが映ってたの?」
名前の言葉にコナンが反応する。
「え?うん、そうだよ」
「それ、録画してるならボク達にも見せて!」
コナンは「動物なら大人より子どもの方が色々詳しいと思うよ?」と自信満々に言う。
名前はカラスが映っていた場面をコナン達に見せる。
「うーん…ただのカラスだよなぁ?」
「ですね…」
「でもホラ、首のトコ灰色だよ?」
カラスの映像を見ていると、佐藤達が捜査一課に戻って来た。
「佐藤、戻りました!」
「それで?何か分かったか?」
「いえ…。パソコンのデータも全て消去した後のようで…。今、爆弾の入手経路をあたらせていますが、まだ何も…」
「そうか…」
佐藤は映像を見ながら、高木の無事を確認して少し安心した表情をする。
「オオ〜!!高木さん、足のロープを板の角で切りましたね!」
「そっか!左右の足を板の両脇からそれぞれ出せば落ちにくくなるわね!」
「高木君、もう少し頑張って!」
映像の中の高木は、足元に垂れ下がっているシートを足で手繰り寄せ、そのまま下に落とした。
「下に落とした?」
「シートが落ちた音で誰かに気づかせたいのか?」
「え…、ちょっと待って…」
シートが下に落ちたことで、高木が寝かされている板の下に爆弾が仕掛けられている事に気づいた名前は、画面を指さす。
「美和子ちゃん…こ、これ…」
「ば、爆弾!?」
「タイマーのような物が見えるな…」
「おい苗字…ナタリーさんが首を吊った時間分かるか?」
名前は「た、たしか…死亡推定時刻は1年前の明日…午前10時ごろだったかと思います…」と答える。
「お、おい…もしその時間に爆発するようにタイマーをセットしていたとしたら…」
「いかにあがいても残り18時間足らずで、高木は吹っ飛ぶというわけか…」
松本は腕時計で時間を確認する。
「そ、そんな…」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
映像を見ていた千葉は「ば、爆弾を固定しているガムテがはがれて今にも落ちそうです!!」と叫ぶ。
「た、高木君!!」
「大丈夫!高木さんも気づいて足で落とそうとしてる!!」
しかし、高木は落ちそうになっている爆弾を両足でつかみ、板の上に乗せた。
「え?」
「い、板の上に乗せやがった!?」
「何やってんだ高木!?」
高木の一連の行動を見ていた名前は「…多分、下に誰かいるんだと思います」と言う。
「え?」
「うん、ボクもそう思う。下で誰かの声が聞こえたから高木刑事は落とさなかったんだ」
「高木君の口をガムテープでふさいでいるのに音声が来ていない事に違和感があったけど、声が届く範囲に人が通るかもしれない場所にいるんだと思う…」
「じゃあ高木君は…その誰かを守るために…」
コナンは「やっぱり、名前刑事が言ってるように高木刑事は北海道にいると思うから、捜索するなら北海道に限定した方がいいよ!」と目暮に伝えた。
「なんでだねコナン君?」
「だって高木刑事と写ってるカラスは多分、西コクマルガラスだよ?大体ヨーロッパにいるカラスだけど、2回だけ日本に迷い込んで来た事があって、その2回とも北海道だったんだよ!」
「だが、それだけで北海道だと決めつけるのは…」
映像を見ていた名前が「目暮警部…コナン君の言う通り、やっぱり北海道です」と断言した。
「ん?」
「高木君の背景に映っている空に…サンピラー現象が…」
「何だ…?」
「日の出や日没後に、太陽の光や空気中のダイヤモンドダストに反射して柱状に輝いて見える現象です」
名前に続けて「それって寒い北海道ぐらいでしか見られないってネットに書いてあるよ!」とコナンが携帯の画面を見せる。
「おい…ダイヤモンドダストが発生する気温、知っているか?」
「た、たしか…氷点下20度以下だったと…」
「マ、マイナス20度以下!?」
白鳥の言葉に驚いた千葉を「で、でもかなり遠くに見えたからさすがに高木君のいる場所がマイナス20度以下ではないと思うよ?」と名前が落ち着かせる。
「それに近い場所にいる事は確かですね…」
「か、管理官…」
「ウム…」
松本はうなずくと「北海道だ!!高木が拉致されている場所を北海道だと断定する!!」と宣言した。
「道警に捜査協力を仰ぎ、北海道内の建設業者及び解体作業者全てに連絡!!再度調査するように要請しろ!!」
「はい!!」
指示を出し終わると、松本は「目暮!お前は佐藤と共に北海道へ飛べ!!」と伝える。
「被疑者のメールの友人という言葉から、現場に共犯者が潜んでいる可能性もある。拳銃の携帯を忘れるなよ!」
「はい!!」
「美和子ちゃん、気を付けてね…」
「はい!高木君を助けに行ってきます…!」