名前が外守クリーニング店に着くと、店主である外守が洗濯機の前で何かをしていた。
「!!ああ、こんにちは」
「外守さん、こんにちは。従業員の方が誰もいないですけど、今日ってもしかして定休日でした?」
「そうなんだよ。今日はちょっと野暮用でね」
外守は、名前から洗濯機を隠すように立ち上がると「どうしたんだい?」と聞いた。
「実は、急ぎで出したい制服があったんですけど」
「すまないね…」
名前の持っていた袋を見て「もう、預かるのは難しそうだ」と答える外守。
「え?」
その時、住居になっている2階から物音と、女の子の「助けて!」という声が微かに聞こえてきた。
「…今、声が!」
「あ!こら、待ちなさい!」
名前は、外守の制止を振り切って店の奥にある扉を開けて2階に駆け上がると、足を縛られて寝かされている少女を見つけた。
「な!?大丈夫!?」
女の子に駆け寄ってケガがないか確認をする名前。
「外傷はない、か…」
「全く…見られたからには殺さなくてはいけなくなってしまったじゃないか」
「ヒッ!!お、お姉ちゃん!」
「大丈夫…!」
名前は立ち上がると、外守と正面から向き合う。
外守は名前との距離を詰めると名前の右腕を掴む。
しかし、名前は外守の前に出ている足のすぐ横に自分の足を置き、左手で外守の手首を持つと、180度向きを変えて足を引き、外守の横に並ぶ。
そして手を上げて、さらに180度向きを変えて外守の背後に回り、そのままの勢いで手を下げると外守は後ろに倒れた。
「お姉ちゃん!」
「もう大丈夫だよ!」
名前は女の子の傍に座り、足のロープを解こうとする。
「すぐに解いてあげるからね」
「お、お姉ちゃん後ろ!!」
「え?」
バチバチッ、という大きな音がして名前が後ろを振り向くと外守は持っていたスタンガンを名前の体に当てる。
「グッ…!」
全身に電気が流れ、筋肉が硬直して体が動かなくなった名前は、そのまま畳の上に倒れる。
「面倒なことをさせて」
「何を…」
「やめて!お姉ちゃんを離して!」
「有里…おまえは優しい子だね」
「ちが…!」
外守は名前の口にガムテープを貼り、両手と両足を縛ると押し入れの中に入れた。
「残念だが、おまえも道連れだ。準備ができるまでここで大人しくしているんだ」
「んー!!んー!」
押し入れの襖が閉まり、暗くなった押し入れの中で名前はポケットの中に入っている携帯を取り出そうとするが、体が麻痺して上手く動けない。
「(もう!!)」
奥の方でカチカチという音が聞こえてくることに気づいた名前は、動かせる範囲で首を動かして押し入れの奥を見る。
「(ば、爆弾!?)」
そこには爆弾が仕掛けられていた。
「(タイマーは…流石に見えないか…)」
名前は、絶体絶命のピンチを迎えていた。
同じ頃、風呂掃除をしていた松田達は、諸伏の話を聞き、諸伏の両親を殺害した犯人が外守なのではないかという結論に至った。
「そうか!そうだったんだ!あの時、オレは押し入れじゃなくクローゼットに隠れていて、クローゼットのスリット越しに犯人の姿を見ていたんだ!」
諸伏は、自分が隠れて犯人を見ていた場所を勘違いしていたことに気づく。
「上と下がスリットで見えなかったとしたら、外守さんの向かい合った観音像のタトゥーもゴブレットに見える!」
「犯人が肩を押さえた時に二の腕に付いたタトゥーが見えなかったのは、血塗れの手で二の腕からなぞるように肩を押さえてたから、血で隠れていたってワケね!」
5人は急いで外守のクリーニング店に向かう。
「そう…ずっと引っ掛かっていたんだ。外守さんが独り暮らしだという事に…だよな?ゼロ!」
「ああ!コンビニ強盗に監禁された時に外守さんが言ってたな。”娘のオヤツを買いに来た”って」
「その外守のオッサンが長野弁を話す入江のオッサンと同郷だってんならもう間違いねぇ…15年前、諸伏の両親を殺したのは外守一だ!!」
外守が諸伏の両親を殺した動機は、娘である有里が小学校の遠足中に腹痛を訴え、担任である諸伏の父親の車で病院に搬送されたが手遅れの盲腸炎で亡くなった事。
外守は娘の死を受け入れる事ができず、諸伏の父親が病院ではなく娘をさらったと思い込んだ事にあると気づいた諸伏。
「だからあの時、外守さんは”もういいよー!出ておいで有里〜”って歌ってたんだ…」
「おい、まさか…その子によく似た女の子の行方が知れなくなっているのって…」
「まあ、そいつは聞いてみるしかねぇなァ…本人に直接!!」
降谷は走りながら風呂掃除前の、名前と松田の会話を思い出していた。
「…なあ松田」
「あ?」
「…確か苗字さんは、クリーニング店に行くって言っていたんだよな?」
「だな」
「…」
「…何だよ、ゼロ!…大丈夫だろ!外守のオッサンは、俺たちが犯人だって気づいた事を知らないだろ」
「…ああ。だが、もしも…もしも今日、外守さんが何か行動に起こそうとしていたとしたら…」
「…名前…」
降谷の言葉に、松田は冷や汗を流す。
「とにかく急ごう」
「…ああ」
5人は外守クリーニング店に着くと、松田はクリーニング店の扉を開ける。
「おい!外守のオッサン!!いるかー!?」
中に入ると誰もいない。
「従業員も一人もいないなぁ…」
「定休日とか?」
「つーか名前ちゃんもいねぇじゃんか。もう帰ったんかな?」
「電話してみるか」
松田は携帯を取り出すと、電話をかける。
「…出ない…」
「出ない?」
「もし寮に戻ってんなら電源切って預けてるはずだからコール音は鳴らねェ。それなのに鳴るってことは、まだ外にいるはずだ」
「…ってことは、どこかにいるってことか」
そう言いながら降谷は店の中をぐるっと見渡す。
「?」
降谷は洗濯機を見ると、不思議な点に気づく。
「(ん?洗濯機と洗濯機がコードでつながってる…何で?)」
降谷は洗濯機の扉を開けようとするが、それに気づいた松田が大声を出して止める。
「!?触んな!!」
「!」
「そいつは爆弾だ!!」
「ば、爆弾!?」
松田の言葉に4人が反応する。
「ああ!他の洗濯機にも連動してっから、この商店街が丸ごと吹っ飛ぶかもしれねぇな…」
松田は洗濯機の中を覗きながら「まあ、この右端のヤツが大元みてーだから、こいつを止めりゃー何とかなりそーだ」と言った。
「そういえば外守のオッサン工学部出身だったな」
「でも何で爆弾なんか…」
「とにかく松田は爆弾の解体!ゼロと萩原はこの周辺の住人の避難を!オレと諸伏は外守さんを捜してみる!!」
伊達は「わかったらすぐ動け!!」と指示を出す。
「オゥ!!」
「待った!」
しかし、その指示に松田が待ったをかける。
「悪いけど…俺は今、手がこの状態だから細けェ作業は無理だ。まぁ萩原なら俺の代わりが」
「オゥよ!任せろ!!…って言いたい所だが、実は俺もあの猫にひっかかれて…」
そう言って萩原は包帯が巻かれた左手を見せる。
「マジかよ!?」
萩原の指を見た松田は「しゃーねぇな…手先が器用そうなゼロ!おまえが解体してくれ!」と降谷に言う。
「ぼ、僕が?」
「俺が教えてやっからよ!名前にだってできんだから、おまえにもできるって!」
「…わ、わかった…」
降谷が返事をすると、萩原は焦りを隠しながら「…できれば、俺も捜す側に回りたいんだけど」と言った。
「住人の避難はどうすんだよ?」
「それは、班長か諸伏ちゃんに」
「いや、諸伏は当事者だから必要だし、俺よりもおまえの方が住人の避難役に最適だろ」
「班長顔こえーからな!」
伊達の言葉に松田が同意する。
「けど…」
「萩原、大丈夫だよ。苗字さんが心配なのはわかるけど、オレたちが女の子と一緒に絶対助けるから」
諸伏がそう言うと、萩原は軽く息を吐くといつもの表情に戻り「…わかった。頼んだぜ、二人とも!」と言った。
「任せろ!」
「ほんじゃ、住人を避難させて来るわ!」
「ああ!パニックにならねぇようにな!」
「モチのロン!」
萩原はそう言うと外に出る。
「じゃあ、俺と諸伏は外守さんを捜すから、爆弾の解体は任せたぜ?」
「オゥよ!…名前の事、頼んだぜ」
「わかった!」
伊達と諸伏は、扉を開けて階段を見上げると「とりあえず、2階に行ってみるか」と言って階段を上がる。
「おーい!外守さん!ちょっと話を聞きたいんですが…」
階段を上がり切った所にある扉を開けながら「外守…」と、外守の名前を呼ぼうとする伊達。
伊達と諸伏は、失踪中の女の子が外守に抱っこされているのを発見した。
「!?」
「大きな声を出すな…やっとこの子が眠った所なんだから…」