21

伊達と諸伏は部屋の中を見回すが、名前の姿は確認できなかった。

「外守さん…何を…」
「これから父ちゃんとあの世に遠足に行くんだよ。な?有里?」
「やっぱり自分の娘だと思い込んで…」

諸伏は「その子は有里ちゃんじゃない!!」と叫んだ。

「違うものか!!おまえが会わせてくれたんじゃないか!!」
「オ、オレが!?」

外守は「本当はあの日、クローゼットで寝ているおまえに気づいていたが、殺さないでやったんだよ」と言った。

「有里と仲が良かったおまえのそばにいれば、おまえの親がどこかへ隠した有里に、いつか会わせてくれると思ってな」
「なるほど…犯人が諸伏のそばにいたのは偶然じゃなかったワケか…」
「それ以上近づくな!さもないと爆弾を爆発させる!」

伊達と諸伏が、少しずつ近づいてきていることに気づいた外守は、爆弾の起動装置を持ってそう言った。

「本当は有里が生まれた今日の午後4時半に、仲良く旅立つつもりだったんだがな…」



伊達と諸伏、そして外守の3人の会話を、名前も押し入れの中で聞いていた。

「(そうか…諸伏君は、殺害されてしまったご両親の事件の事を調べていて、その犯人が外守さんだったんだ…)」

体の麻痺と硬直が少しずつ解けてきた名前は、ポケットに入れていた携帯電話を取り出し、手探りでリダイヤルボタンを押すと、下の階にいる松田の携帯に繋がる。



「違っ!!その線はトラップだ!!」

洗濯機に仕掛けられた爆弾を解体している松田と降谷。
配線を見ながら松田が指示を出し、松田の指示通りに降谷が線を1本ずつ切っていく。

「慌てるなゼロ…焦りこそ最大のトラップだぜ?」
「ああ…」

松田は携帯が鳴っていることに気づくとポケットから取り出し、液晶を確認する。

「名前!!」

液晶には名前の名前が表示されていて、慌てて電話に出る。

「名前!?おまえどこにいんだ!?」
「―…ッ」
「あ?もしもし?」

松田は何度も呼びかけるが、電話口からは何も応答がない。

「何だ…?どうなってんだ…」
「松田、次は…」

降谷に聞かれた松田は、電話はそのままにもう一度配線を見る。

「それだ。その赤い線を切ったら止まるはずだ」
「わかった」

そう答えると、松田はもう一度電話に向かって「名前!?おい!返事しろ!!」と呼びかける。

「ふぅ…」

降谷が最後の線を切ると、タイマーが止まる。

「よし、上出来だ、ゼロ!」
「…苗字さん、返事しないのか?」
「ああ…」
「とりあえず、僕たちも上に行こう」
「だな」

松田と降谷が2階に上がろうとするタイミングで、萩原がクリーニング店に戻って来た。

「爆弾の解体終わった?」
「ああ」
「バッチリ避難させたのに骨折り損かよ?」

3人が階段の方に移動すると、2階から伊達と女の子、そして諸伏と外守が下りて来た。

「お!上手く行ったみてーだな?」
「ああ!そっちも解体、間に合ったようだな」
「名前は?」
「上にはいなかったよ」

萩原は降りてくる外守に「おいオッサン!俺たちが来る前に女の子が来ただろ?俺たちと同じ警察学校の生徒」と詰め寄った。

「…もう無理だ」
「何が?どこにいる?」
「…2階の押し入れの中だ。だが、もう間に合わない」
「何言ってんだテメェ…」

外守の言葉に、松田は殴りかかろうとする。

「じ、陣平…」

名前の声が聞こえ、松田は殴ろうとするのをやめて声のする方を見る。

「名前!」
「名前ちゃん!」

名前は口に貼られたガムテープを剥がすことができたが、縛られたロープを解く事はできず、這いつくばりながら移動して2階の扉から顔を出した。

「大丈夫か!?」
「待って!!爆弾!」
「もう解体したから大丈夫だよ」
「ちが!」

松田と萩原が2階に上がろうとするのを止める名前。

「今、何時だい?」
「え?午後4時29分だけど…」

外守は諸伏に時間を聞くと「すまなかったなボウヤ…あの世で親御さんに詫び入れて来るわ…」と言って、階段を駆け上ると名前を抱えて階段を何段か降りてから、名前を下に向かって放り投げた。

「へっ!?」
「お、おい!!」
「ウソだろ!?」
「名前!!」

階段の下にいた降谷が、名前の名前を叫びながら階段を駆け上り、名前が落ちる前に抱きとめる。

「名前!?大丈夫か!?」
「ふ、降谷君…!」

降谷が名前の事を抱きとめた瞬間、2階から大きな爆発音が鳴った。

「ば、爆発!?」
「2階にもあったのか!?」
「あ!」

外守は爆発によって火災が起きている2階の部屋に逃げて行った。

「くそっ!」
「よせ諸伏!!」
「もう間に合わねぇ!!」
「引き返せ!!」
「ヒロォー!!」

4人は外守を追って2階に上がる諸伏を止めるが、諸伏はそのまま2階に駆け上がる。

「表!!桜!!!」

諸伏はそう言うと、外守のことを追って2階の部屋に入る。

「何言ってんだ?表に桜なんか咲いて無…」

松田がそう言うと、4人は松田の肩にかかっている教場旗を見る。

「そうか!これを広げて…」
「外に出て、スタンバイ!」
「急げ!」

降谷は名前のことを抱きかかえると「しっかり掴まっていてくれ!」と言って外に出た。
外に出て、2階の窓の下に移動すると、降谷は名前の事を地面に下ろす。

「ここにいてくれ」
「うん」
「ゼロ、急げ!」
「ああ!」

4人は。教場旗の端を持って広げると、2階の窓から飛び降りて来た諸伏と外守を旗で受け止める。

「ふう…」
「し…死なせてくれよ…」
「そいつは無理ですよ。ちゃんと罪を償ってもらうまではね…」

諸伏の無事を確認した伊達は、警察に電話をした。

「名前!大丈夫か?」
「陣平…うん、大丈夫…」

松田は、名前が縛られているロープを切りながら名前に声をかける。

「ケガは?」
「スタンガンでバチってされたけど、それぐらいかな?」
「クソ!」
「でも名前ちゃんが無事で本当に良かったよ…もう少し遅かったら名前ちゃんも爆発に巻き込まれてたから…」

萩原の言葉に、名前も「本当に…そうだよね…」と顔を青くする。

「何はともあれ無事で良かった」
「うん。ありがとう…」
「救急車も呼んだから、病院行ってこい」
「うん」

名前は震える手を後ろに隠しながら答える。
そんな名前に気づいた降谷は、名前に近づき、後ろに隠した手を握る。

「ふ、降谷君?」
「…本当に大丈夫か?」
「え?」
「震えている。…それに、手首から血が…」
「あ、ああそれね。ロープが食い込んで擦り傷ができちゃったみたい。そんな痛くないから大丈夫だよ」

降谷は心配そうな顔をして名前を見ると「無理して笑わなくていい」と言った。

「あ…うん。でも、本当に大丈夫だよ。この手の震えは、さすがにこんな事件に巻き込まれるとは思わなかったから、そのビックリで震えてるだけだから」
「…ならいいんだが」
「うん。そうだ!さっき、階段で受けとめてくれて本当にありがとう!」

名前の言葉に、松田も「それだ!マジで助かったぜ、ゼロ!」と同意した。

「ああ。松田も萩原も指をケガしていたしな。僕が受けとめないとって必死だった」
「さっきの降谷ちゃん、確かにかっこよかったな〜。男の俺でも惚れちまう所だったぜ!」
「萩原に惚れられても困る」

降谷がそう返すと、名前は思わず笑い声をあげた。

「ふふっ。みんなあんな事件に巻き込まれたのに、いつも通りですごいね」
「今までも色んな事件に巻き込まれてるからな」
「だいぶ慣れたな!」

そんな話をしていると、警察と救急車が到着し、外守は警察署に連れて行かれ、名前と失踪中だった女の子は病院に運ばれた。
松田達5人は警察に事情を説明し、警察学校へと戻る。



警察学校に戻った後、鬼塚への説明を降谷に任せて4人は風呂掃除を再開するために風呂場に急いだ。

「いやー、にしてもゼロ!あの時名前のこと名前で呼んだな?」
「バッチリ呼んでたねェ」
「あんな必死なゼロ、久しぶりに見たかも」
「アツい奴だとは思っていたけど、人の為にあんな風になるんだな」

松田が「やっぱゼロの奴、名前のこと好きだろ」と言うと、諸伏が驚いた顔をする。

「松田は嫌じゃないの?」
「あ?何が?」
「その…ゼロが苗字さんのこと本当に好きだったら…」

諸伏の質問に、松田は呆れた顔をした。

「嫌なワケねーだろ。俺は、名前に幸せになってほしいって思ってんだよ」
「そうなんだ」
「名前の事を、全部ひっくるめてちゃんと幸せにしてくれんならゼロでも大歓迎だぜ」

そう言って松田は笑った。

「ほら、喋ってねーでさっさと終わらせるぞ。ゼロの時間稼ぎもそろそろ限界だろ」

伊達がそう言うと、4人は掃除用のブラシを持ってラストスパートをかける。
鬼塚が確認に来る前になんとか掃除を終えると、4人はその場に座り込み、いつの間にか寝入っていた。



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