03

術科訓練棟に移動している名前と松田、そして萩原と林。

「今日が初めての拳銃訓練だねー!」
「萩原君、テンション高いね!」
「そりゃあテンション上がるっしょ!なんてったって拳銃よ?」
「確かに、実は私もテンション上がってるのよね」
「凛子ちゃんも、いつもより目がキラキラしてるもんね!」

テンションの高い萩原と林の2人に比べると、テンションの低い名前。

「2人ともすごいねー。私、緊張しちゃって…上手く当てられるかな…」
「おまえは大丈夫だろ」
「陣平…」
「的当てなら得意だろ。変に考えすぎんな。大丈夫だ」
「うん…」

いつもと少し雰囲気が違う2人を見て、林は萩原に視線をやる。
しかし、萩原も少し寂しそうな顔をしていたので、林は何も聞けなかった。



「おまえらが手にしているのはSAKURA!日本警察正式採用5連発リボルバーだ!!」

名前は、自分の手の中にある拳銃を見つめ、ごくりとのどを鳴らす。

「(こ、これが…)」
「射撃検定は5発発砲を4セット実施!上位2セットの合計を得点とする!70点未満は落第だ!」

数人が横並びになり、一斉に的に向かって拳銃をかまえる。
松田たち5人と名前、林は同じグループで一緒に拳銃を撃つことになった。

「的以外にかまえた瞬間おまえらの首が飛ぶと思え!!」
「ひーおっかないねぇ」
「ハギ!おまえ真面目にやれよな」
「わかってるって!」
「始め!」

鬼塚教官の合図で、名前たちのグループが拳銃を撃ち始め、弾が的に当たる音が響く。

「名前ちゃん上手だね!」
「ほ、本当だ…!」

名前の撃った弾は、3発が真ん中に、残りの2発は9点の部分に当たっていた。

「なんか意外!本当に得意なんだね!」
「凛子ちゃんもすごいよ!」

林の的を見ると、5発とも全て7点から9点の間に当たっていた。

「5発ほぼど真ん中!やるねぇ降谷ちゃん!」

そんな萩原の声が聞こえてきて、名前は降谷の的を見る。

「わー、本当だ。降谷君ほぼど真ん中だ!」
「流石ね」

鬼塚は「降谷!なかなかいいセンスをしているが、上には上がいる事を覚えておけ!」と言った。

「貴様らの先輩に、最初の試験で満点!つまり20発全弾ド真ん中に的中させた天才がいるからな!」
「ヒュー♪」
「んじゃ、その天才は今捜査一課でバリバリの刑事なんでしょうねぇ!」
「い、いや…今は刑事を辞めて、米花町に探偵事務所を構えているそうだ」
「マジっスか?」

鬼塚たちの話を聞きながらも、名前は横で拳銃を撃っている松田に気を取られていた。

「陣平…」
「松田君は意外と…」
「クソ!全然当たらねぇ」
「どうした?松田。ケンカっ早いガキには拳銃は難しいか?」

そんな松田の背後から、嬉しそうな顔をした鬼塚が現れた。

「苗字の方がおまえより当たってるじゃないか」
「あはは」
「このチャカ、誰かが落としたんじゃないっスか?リボルバーは落下の衝撃に弱ぇから、もしかしたらシリンダーストップが破損してんじゃね?」
「いい加減な事を抜かすな!!さっさと撃て!」

そんな松田の言い分に、鬼塚は聞く耳を持たない。

「たく、屁理屈ばっかりこねやがって…」
「ちょ、陣平!?」
「ん?」

名前の焦った声を聞いた鬼塚は、もう一度松田の方を見る。

「あー、やっぱシリンダーストップいっちゃってたわ!バレルとシリンダーの軸線もズレてたし、これじゃー当たらねぇぜ」
「松田ァ!?」

松田は、拳銃をバラバラに分解していた。

「すぐに元に戻せ!!」
「あ゛?」
「あっちゃ〜またやっちゃったか…」
「やっちゃったね…」
「また?」

萩原と名前のつぶやきに降谷が反応する。

「陣平ちゃんは分解魔!ガキの頃から何でもかんでも分解しなきゃ気が済まねぇんだよ!」
「私の玩具もよく分解されたなー…」
「分解しまくってるから、その分メカには詳しいんだけどな!爆弾とか特に!」
「ね!」
「2人は松田と昔から仲が良いんだな」
「まあね!なんてったって幼なじみだからね!」
「そ、そうだね」

幼なじみということを、なるべく隠そうとしていた名前だったが、萩原によって鬼塚教場の人間にバレてしまった。

「名前ちゃんも松田君も昔からのクセが抜けてないみたいだし、多分隠すのは無理っぽいから早めにバレて良かったんじゃない?」
「それもそうだね」

松田が拳銃を分解したことで、鬼塚は訓練の中止を決めた。

「拳銃訓練は中止だ中止!!全員装備返却!松田はそこに立ってろ!!」

鬼塚がそう叫ぶと、学生たちは装備を返却し始めた。
そして、全員の装備が返却し終わった後に、補助教官が装備を数えると実弾が1発足りていないことが発覚した。

「本当ですか!?」
「はい!すべての拳銃を保管庫に戻した際に数え直したんですが…実弾が一発だけ足りませんでした。まぁ全てといっても松田の拳銃はバラバラのままなので、まだ回収していませんが…」
「ま、松田ァ!?」

そう言うと、鬼塚は松田に詰め寄る。

「なんでまで組み立ててないんだ!?」
「はぁ?立ってろって言ったじゃないっスか?」
「(陣平…それは屁理屈って言うんだよー…)」

松田の態度に、名前はヒヤヒヤしていた。

「まぁいい…くすねた弾をすぐに出せ!そうしたら今回は見逃してやる」
「弾なんて持ってないっスよ!全弾撃っちまって、空薬莢も補助教官に渡したし」
「ウソをつくな!貴様以外に誰がいる!?」
「あ゛ん!?」
「あ、あの!!」

名前は松田の横に駆け寄ると「ま、松田君は態度は悪いですけど、そういうウソをつくような人間じゃありません!」とかばう。

「なにィ!」
「まあまあ!ここは班長の自分に免じて鉾を収めてください!弾は必ず返却しますから!」

そこに伊達が助けに入る。

「鬼塚教官!屋根の補修工事をやっているんですが」
「天井の内側から作業をチェックさせて頂いても構いませんか?」
「ええ!ご案内します!」

そこに、工事の作業員たちがやってきて鬼塚と共に訓練場を出て行った。

「(わ…私、出しゃばらなくても良かった気がする…)」

名前は恥ずかしそうに俯くが、そんな名前に松田は「…さんきゅ」と小さな声でお礼を言った。
その声に顔を上げて松田のことを見ると、松田は名前と同じように照れくさそうにしていた。
しかし、すぐに顔をしかめると「あんだよ、テメェも俺を疑ってんのか?」と伊達を睨む。

「ん?おまえじゃないんだろ?」
「ああ…」
「だったら堂々としてろよ!俺が真犯人をあぶり出して自首させてやるからよ」

そう言って伊達は後ろにいる学生たちを見る。

「甘いなぁ班長は。疑いは自分で晴らさせないと、彼も父親のようになってしまう」
「てんめェ…オヤジの事知りもしないで」
「降谷君…」

まさか降谷からそんな言葉が出て来るとは思わなった名前は、傷ついた表情で降谷を見る。
名前の視線に気付いた降谷は、少しだけ困ったような顔をしたが、すぐに表情を戻す。

「ああ…知らないから教えてくれないか?君がなぜ警察官を目指しているのかって事もね」
「フン…教えてやってもいいが、そいつはテメェを殴り倒した後だ!!」
「陣平!?」

松田は降谷に殴りかかろうとするが、その瞬間天井から大きな音が聞こえてきた。

「え!?」

全員が一斉に上を見ると、天井の一部に穴が開き、そこから工事をしている作業員の1人が落下してきた。
天井の内側から確認作業をするために上の階の踊り場に居た鬼塚が気づき、両手を出して作業員を支えようとしたが、手すりを乗り越えてしまい、そのまま一緒に落下してしまう。
その際、作業員の命綱が鬼塚の首に巻きついてしまった。

「お、鬼塚教官!?」
「キャー!?」
「や、ヤベェぞ!!命綱が教官の首に!!」
「落下した作業員気絶してんじゃね?」
「屋根に登って綱を切るしか…」
「そんな時間ないし、また踏み外したらどーすんだよ!?」

学生たちは鬼塚のことを見上げながら焦っていた。
しかし、その中でも松田たち5人は冷静だった。
伊達の「おい、おまえら…やる事はわかってるよな?」の言葉を合図に「拳銃…」「弾…」「射撃…」「俺は土台…」と続き、諸伏は「じゃあオレは土台の上のつっかえ棒かな?」と言った。

「オウよ!んじゃ野郎共…行くぞ!!」
「え?」

伊達と諸伏は鬼塚の足下に走り出した。

「諸伏!!」

諸伏は伊達の肩に乗ると、両手で作業員の体を持ち上げた。

「!?」
「これで少しは楽になったはず…すぐに仲間が助けますから…」
「それまでくたばんないでくださいよ!」

床に座って拳銃を組み立てている松田の横に、名前も同じように座り込む。

「陣平…」
「どれくらいだ?」
「あん?」

降谷は松田に問いかける。

「その拳銃を組み立てるのにどれくらいの時間がかかる?」
「そうだなぁ…大体ワンラウンドだ」
「ワンラウンド?3分…そんなに?」
「ああ…ただ組み立てるだけなら30秒もかからねぇが、元々故障してた拳銃な上に、試射なしで正確に弾を発射できる精度が必要になる…」

降谷と話しながらでも、松田は手を動かし続けている。

「あのロープをパツキン大先生に一発で仕留めてもらわなきゃならねぇからな。今、萩原が見つけてくる来るであろう弾丸を込めて」
「…陣平」
「そんな不安そうな顔してんじゃねぇよ。絶対大丈夫だ」

松田はそう言うと、名前を安心させるように笑った。



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