時計じかけの摩天楼03

子ども達が病室から出て行くと「それにしても、肝心な時に工藤君は一体どこへ行ったんだ?」と目暮がぼやく。

「本当ですよね」

名前は返事をしたタイミングで、新一の携帯電話が鳴る。

「ん?」
「待て、コナン!」

コナンが電話に出ようとすると、小五郎が止める。

「いいか?犯人だったら俺が代わる」
「うん」

コナンは返事をすると、電話に出る。

「もしもし?」
『よく爆弾に気づいたな、褒めてやる』

コナンは小五郎を見て頷くと、携帯電話を小五郎に渡す。

『だが、もう子どもの時間は終わりだ。工藤を出せ!』

小五郎は携帯電話を受け取ると、スピーカーにしてベッドの上に置く。

「そうだな、ここからは大人の時間だ」
『誰だおまえは!工藤はどうした?』
「工藤はいない。俺が相手になってやる!俺は名探偵毛利小五郎だ」

小五郎が名乗ると『フフフッ…いいだろう』と電話口の爆弾犯が言う。

『一度しか言わないからよく聞け。東都環状線に5つの爆弾を仕掛けた』
「何!」
「5つの爆弾!?」
「ウソ…」

爆弾犯は『その爆弾は、午後4時を過ぎてから時速60キロ未満で走行した場合、爆発する』と説明する。
名前は腕時計で時間を確認する。

「(あと10分…)」
『また、日没までに取り除かなかった場合も爆発する仕掛けになっている。一つだけヒントをやろう』

その場にいる全員が、ヒントを聞き漏らさないように携帯電話に近づく。

『爆弾を仕掛けたのは…東都環状線の××の×だ』
「んん…」
『×の所には漢字が1字ずつ入る。それじゃあ、頑張ってな毛利名探偵』

それだけ言うと、電話が切れる。

「た、ただの脅しでしょう。環状線に爆弾なんて…」
「いや、ヤツは本気だ」
「2つの爆弾事件が無かったら脅しとも思えますけど、今回は本当だと思います」
「ああ。恐らく午後4時に起爆装置がスタンバイの状態になって、その後で、速度が60キロを割ると爆発する仕掛けになっているんだろう」

名前は携帯を取り出すと「本庁に連絡を入れますね」と言う。



東都鉄道ターミナル駅の東都鉄道総合指令室。
指令長の楠は、運行部長の坂口から衝撃の事実を告げられる。

「えっ!?環状線に爆弾!?」
「たった今、警視庁から緊急連絡が入った」
「分かりました!すぐに全車両を止めて車内点検を…」
「いや、止めるわけにはいかないんだ!」
「え?」
「その爆弾は、午後4時を過ぎてから時速60キロ未満で走行した場合、爆発する仕掛けになっているらしい…」
「何ですって!?」
「えっ!」

職員達も驚く。
楠は環状線の全車両に70キロ以上で走行するよう指示を出し、全車両の運転士が指示通り速度を上げたため、午後4時を過ぎても爆弾は爆発しなかった。



午後4時を過ぎて、目暮の電話が鳴る。

「そうですか、分かりました」

電話を切った目暮は「とりあえず、爆発した電車はなかったそうだ」と伝える。

「良かったです…」
「分かりましたよ、目暮警部!」
「何が分かったんだね?」
「ホシの言っていた”××の×”は、”座席の下”か、あるいは”網棚の上”ですよ。そこに爆弾が置いてあるんです」

小五郎がそう言うと「”車体の下”という事も考えられるぞ」と目暮が言う。

「そうですね。”車体の上”もあり得ますし、”車両の間”とかもあります」
「そ、そうか…」
「当てはまる字が多くて、あのヒントだけを頼りに考えるのは難しいですね」
「そういえば歩美君達、米花町に戻るのに緑台駅から環状線に乗ってるんじゃないか?」

阿笠がそう言うと、コナンは急いで歩美の探偵バッチに連絡を入れる。

「歩美ちゃん聞こえるか?」
『コナン君!聞こえるよ!』
「今、どこにいる?」
『環状線の中よ』

歩美の返事を聞き「やっぱり…」とコナンがつぶやく。

『なぁコナン、一体何がどうなってんだ?』
『まさか”ば”のつく物が仕掛けられてるんじゃないでしょうね?』
「心配すんな、何でもねえよ」

同じタイミングで、目暮にも電話がかかってくる。

「目暮です。はい、はい…そうです。いや、ですから!環状線の車内だけとは限らないんですよ、爆弾は!」

コナンは通話ボタンを離すが、車内にいる子ども達に目暮の声は聞こえてしまった。

『爆弾!』
『やっぱり!』
『それじゃ私達…死んじゃうの?』
「そんな事はない!必ず隠し場所を見つける!」

コナンは子ども達を励ます。

『コナン君…』
『クソッ!コナンだけに任せておけるか!俺達も頑張ろうぜ!こんな時こそ、少年探偵団の出番だ!』
『少年…』
『探偵団…!』
『そ、そうですね。爆弾は車内にあるみたいですから』
『よーし!少年探偵団、出発!』
『お〜っ!』

元太の声に2人が応えた後、3人の声が聞こえてこなくなり、コナンは「お、おいおまえ達!」と呼びかける。

「チッ…切っちまいやがった。大丈夫かな、あいつら」
「きっと大丈夫だよ」
「名前刑事…」
「3人も少年探偵団でしょ?」
「でも…」
「それに、危ない事はしないと思うよ。コナン君も、3人を信じてあげて」
「…うん。そうだね」
「それに、なんとなくだけど、車内に爆弾が仕掛けられてるとは思えないんだよね…」
「え?」

目暮が「はい、分かりました」と言って電話を切ると「本庁の中に合同対策本部ができた」と言う。

「ワシと苗字君は東都鉄道の指令室に行く」
「はい!」
「君も行くか?」

目暮が小五郎に聞くと「はっ!お供します!」と敬礼する。

「それじゃあ、コナン君はお大事にしてね」
「あ!名前刑事!さっきの…」
「何か分かったら連絡ちょうだい。目暮警部の連絡先は知ってると思うけど、一応私の連絡先もコナン君に教えておくね」

名前はコナンと連絡先を交換すると、目暮と小五郎の後を追って病室を出た。




指令室に着いた名前、目暮、小五郎の3人は坂口から報告を聞く。

「それじゃあ車内から不審物は発見できなかったんですか」
「はい。現在走行中の21編成、全車両を車掌がくまなく捜したんですが、荷物は全て持ち主がいました。…で、そちらの方は?」
「沿線の数か所から撮影されたビデオでも、車体の下に爆弾らしき物は見つかりませんでした」
「そうですか…」
「となると爆弾は一体どこに…」

名前は「あの、目暮警部…」と言いかけるが、同じタイミングで楠がやって来て「大変です部長!乗客達が騒ぎ出しています!」と叫んだ。

「なっ!」

電車は30分以上ノンストップで走り続けているため、乗客達が騒ぎ始め、駅では暴動にもなりかけていた。

『指令長!もう限界です!』
「もう少し頑張ってくれ!」

車掌から無線が入るが、限界だった。

「毛利君!なんとか爆弾を見つけ出す方法はないのか!?」
「う〜ん…」

名前は、もう一度目暮に声をかける。

「あの、目暮警部。多分、爆弾が仕掛けられているのは線路の間だと思います」
「何?線路の間!?」
「はい。多分、爆弾にタイマーがセットされていて、何秒間か光が当たらないとタイマーが0になって、爆発する仕掛けになってるんじゃないでしょうか」
「どういう事かね?」

名前が続きを話そうとすると、目暮の携帯が鳴り「目暮だ」と電話に出ると、相手は新一だった。

『警部!工藤です』
「おおっ!工藤くん!待っとったぞ」
『阿笠博士から話は聞きました。爆弾の仕掛けられている場所は、環状線の座席の下でも、網棚の上でも車体の下でもありません。線路の間です』
「何!?やはり線路の間なのか!」
『え?』
「いや、苗字君も同じ事を言っておってな」
『そうだったんですね』

目暮が名前の方を見ると、名前は頷いて「新一君に、続きを」と言う。
目暮は携帯をスピーカーにして、その場にいる全員に聞こえるようにする。

『環状線が爆弾の上を通過すると、全車両が通過するまで何秒間か光が遮られます。ひと車両の長さが20メートルとして、10秒で200メートル。時速60キロだと、秒速約16.7メートル』
「そうなのかね!?」
「はい。つまり、200メートル走るのに12秒ほどかかるという事です」
『そうです。そのギリギリ爆発しない時間が、時速60キロで通過した時の時間なんです』
「なるほど!」

新一は『ですからすぐに、環状線を他の線に移してください』と続ける。

『環状線の線路から離れさえすれば、止めても危険はありません』
「分かった。苗字君も、同じ意見だな?」
「はい。線路のどこに仕掛けられているのかが分からないので、まずは線路を移すのがベストだと思います」

目暮は電話を切ると「坂口部長、お聞きになったとおりです」と言う。

「うむ…」

坂口は指令室にいる職員達に「3分後に11号車を芝浜駅貨物線引き入れだ!準備にかかれ!」と指示を出す。



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