時計じかけの摩天楼04

職員達は電話を取ると、一斉に各地に指示を伝える、

「11号車、11号車。3分後にポイントを切り替える」
「芝浜駅、軌道回路確認。連動機オン。貨物車両は、至急待避線へ移動せよ」
「11号車、川品駅通過。10号車、芝浜駅通過」
「ポイント切り替え!」

ポイントを切り替えた後、11号車の運転士から無線が入る。

『これより、減速します』

ゆっくりブレーキをかけていく運転士。

『68キロ…66キロ…64…63キロ…』

速度が60キロに近づいていく。

『62…61…60キロ!』

その言葉に、目暮達は不安そうな顔をするが、名前は表情を変えずにいた。

『59…58キロ!』
「異常はないか!?」
『はい!異常ありません!』
「よし、そのまま減速して次の貨物駅で停止してくれ」
『フゥ…了解!』

運転士からの無線を聞き「やりましたな!」と目暮は安心する。

「いえ、まだ安心はできません。環状線は、あと20編成走っとるんです」
「日没まで時間もありません…。慎重に、かつ迅速に対応しましょう」
「はい」

そして、他の車両も続々とポイントを切り替えて他の線路に移ってから減速する。

『9号車、異常ありません!』
『20号車、異常ありません!』
「あと1編成です!」

最後の車両、10号車の連絡を待つ。

『こちら10号車!只今55キロです!異常ありません!』
「やったー!」

その言葉に、職員達は歓声を上げた。
名前も「良かったー」と安心した。

「やった!やりましたよ、大成功です!」
「いやあ、見事なお手編みですな!」
「ご苦労様でした!」

坂口と目暮が握手をする。

「名前君も、よく線路の間だと気づいたな!」
「速度60キロ以下で走行した場合に爆発する仕掛け、というのは理解できたのですが、日没までに取り除かない場合も爆発するというのが引っかかっていて。ライトや太陽に関係するのかな?って考えてたら、出てきました!」
「お手柄だったな!」
「毛利さん、ありがとうございます!」

名前は小五郎に褒められて、少し照れくさそうに笑った。

「ここからは、我々の仕事です」
「目暮警部!すぐに爆発物処理班と警察犬を手配します」
「ああ。頼んだ」



名前は本庁に連絡を入れ、目暮と2人で東都環状線に向かう。

「爆弾が仕掛けられているのは、午後4時以降、ビルや塀で日陰になっていない場所だ。捜す時は、太陽の位置を常に確認し、自分の影で爆弾を覆わないよう、十分注意するんだ!」

捜査員達は、少し線路から離れながら爆弾を捜す。

『爆弾、発見しました!』

名前と目暮は指示を出した後、コナンのいる病院に戻った。

「分かった」

目暮は通話を切ると「無事、5つの爆弾を回収したそうだ」と報告する。

「やった!」
「よっしゃ!」
「全て、工藤君の推理と苗字君の言っていた通りだったな」
「名前刑事も爆弾の仕掛け場所が分かったんでしょ!すごいねって新一兄ちゃんが言ってたよ!」

コナンに褒められた名前は「たまたまだよー」と言いながら笑った。

「日没まであと15分、危ないとこじゃったな」
「だが、喜ぶのはまだ早い」
「え?」
「仕掛けられていた爆弾は、盗まれた爆薬の量からして、わずか1/4だそうだ」
「そじゃあ、残りの3/4はまだ犯人が持っていると」
「ゲッ!」

そんな話をしていると、白鳥がコナンの病室に戻って来た。

「遅くなりました」
「で、どうだったかね?」
「はい。例の岡本市長の息子、浩平ですが今朝早くから伊豆の方へ出かけている事が分かりました」

白鳥は手帳を開いて報告をする。

「という事はシロか…」
「はい」
「犯人の候補がいなくなってしまいましたね」
「あの…爆弾事件の方は?」

白鳥の質問に「解決した」と小五郎が答える。

「えっ?」
「工藤君と苗字君のおかげでな。問題は、残りの爆弾とホシの正体だ」
「今分かっている事といえば、犯人は環状線沿いの5か所の近くには住んでいないという事くらいすかね」

小五郎のセリフに、目暮は「ん?」と質問する。

「だってそうでしょう!もし爆発していたら電車ごと吹っ飛んでくるかもしれないんですよ!自分の家の傍にわざわざ…」

そこまで言って、何かに気づいた小五郎は一度止まる。

「あっ!あの時!」

そう言ってコナンに近づく。

「キャリーケースの爆弾のタイマーを止めたのも、同じ理由だったんじゃないすかね?」
「あそこの近くにあったのは、確か…児童公園とマンションだったよね?」

名前がコナンに聞くと「うん」と答える。

「それだ!犯人はそのマンションに住んでいるんだ!」
「よし!そのマンションに直行だ!」

目暮の指示で名前と白鳥はマンションに行き、住人達に聞き込みをしたが、全員にアリバイがあった。

「空振り?」
「ああ。マンションだけでなく、付近の家も全て調べたんだが」
「全員シロでした」
「つ、疲れた…」
「名前刑事、お疲れ様」
「コナン君、ありがとうー…」

小五郎は「そうすか」と落ち込んだ様子を見せる。

「ねぇ名前刑事」
「ん?」
「環状線の爆弾は、どういう所に仕掛けられていたの?」

コナンはテレビを見ながら名前に聞く。

「えっと、普通の住宅街だよ?あ、でも一つは橋の上にあったみたいだよ!隅田運河の」
「橋の上?」
「この橋じゃないか?」

阿笠はテレビの画面を指さす。

「えっ?」

コナンと名前は、テレビの画面を見る。

「あ、そうそう。これです」
「…」
「何か気になるの?」
「この橋って、森谷教授が設計したんじゃない?」
「森谷教授って、あの建築家の?」
「うん」
「えっ?そうだったかな?」

小五郎もテレビを見るが、覚えていないのか返事は曖昧だった。

「その通りです」
「えっ?」

その場にいる全員が、肯定した白鳥の方を一斉に見る。

「森谷帝二の設計ですよ。その橋は昭和58年に完成したもので、鉄橋ではなく英国風の石造りの橋である事が当時かなりの話題を呼び、この橋の設計によって森谷帝二は日本建築協会の新人賞と取ったんです」
「白鳥君、詳しいんだね」
「建築に、興味があるもので」
「あっ」

コナンはテレビの音量を上げる。

『連続放火事件のニュースです。警視庁は』

しかし、小五郎がテレビの電源を切ると「もういいだろ、気が散る」と言った。

「はーい」

コナンは「ねえ、連続放火事件で被害に遭った家って、誰が設計したんだろうね?」と名前達に言う。

「えっ?」
「調べてみたら、面白い事が分かるかもしれないよ」
「もしかして…」
「面白い事ね…」



コナンに言われた白鳥が、すぐに連続放火事件で被害に遭った家の事を調べる。
すると、全ての邸宅が森谷の設計だった事が判明した。

「何だって!全部、森谷氏の設計?」
「はい。黒川邸をはじめ、水島邸、安田邸、阿久津邸と、放火された邸宅は全て森谷教授が30代前半の頃に設計したものでした」
「だと思った…」

名前は小声でコナンに「いつから分かってたの?」と聞く。

「こ、この前森谷教授のティーパーティーに参加した時に、彼のギャラリーで写真が飾ってあるのをたまたま見たんだ!」
「ふーん」

目暮は資料を見ながら「うーん」とうなる。

「これは偶然とは思えませんな」
「あの環状線の爆弾も、本当の狙いはあの橋だったのかなーって思ったんだ」
「あの橋?」
「ありうるな。ホシは連続放火事件のホシと同一で、森谷教授の設計したものを狙って…」
「あっそうか!分かりましたよ警部!」

小五郎はパンッ!と手を叩くと「犯人は森谷教授に恨みを持つ者か、その成功を妬んでいる者です。新一への挑戦は、カムフラージュだったんです!」と言う。

「なるほど、その可能性は高いな」
「私も同感です!」
「森谷教授に関係している人、という線で間違いなさそうですね」
「一連の放火事件は、みんな手製の発火装置を使ってました。今思えば、爆弾犯と共通するものがあります」

目暮は「よし!とにかく森谷教授に話を聞こう」と言って、病室を出ようとする。

「毛利君、案内を頼むぞ!」
「はて…どこだっけ?」
「おじさん!ボク、覚えてる!」

コナンはそう言うと、携帯を持って「案内するよ!」と言い、靴を履く。

「コナン君、もう大丈夫なの?」
「何言っとる!おまえはまだ!」
「もう治っちゃったよ!早く早く!」

コナンは上着を取ると、病室から出る。

「おお、こら!」
「元気だなー」

白鳥の車に乗り込むと、森谷の家に向かって車を走らせる。
車の中で、白鳥は「毛利さん。この先が丁度、例の爆弾のタイマーが一時止まった所ですよ」と言った。

「ほう…」

小五郎とコナンは車の窓から外を見る。
児童公園には、遊具と出入口の所にガス灯が設置されていた。

「…ったく、お粗末な爆弾のおかげで、とんだ無駄な捜査をしちまったよ」
「まあまあ目暮警部」

ぼやく目暮を、名前がなだめる。



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