「これで全て解決したと思ったら大間違いだ。私が抹殺したかった建物はもう一つあるんだ」
「えっ」
コナンはパネル写真を見ると「まさか…米花シティービル!」と言った。
「もしかして、完全な左右対称じゃないんですか!?」
「バブルの崩壊で建築予算がなくなるというバカバカしい理由のためにね。私の最大にして最低の作品だ!君達に私の美学は分かるまい!」
森谷はそう言うと、時計を見る、
「さて、10時まであと1分」
コナンは、新一の誕生日を祝うために米花シティービルのシネマ1で待っている蘭に電話をかける。
シネマ1インフォメーションと電話が繋がり、蘭に代わってもらう。
『はい、毛利ですけど』
「蘭姉ちゃん!今すぐそこを出て!」
『え?』
10時になあると、米花シティービルの出入り口のゴミ箱に仕掛けられていた爆弾が次々と爆発。
電話口から大きな爆発音が聞こえてきたため、コナンは「蘭姉ちゃん!大丈夫!?蘭姉ちゃん!」と何度も蘭の名前を呼ぶ。
「貸せ!」
小五郎はコナンから携帯を奪うと「おい蘭!どうした!?返事しろ!蘭!」と呼びかけるが応答はない。
「ま、まさか…爆弾?」
「クソッ!」
携帯を放り投げると、小五郎は森谷に詰め寄って胸倉を掴む。
「てめえ!蘭を一体どうする気だ!」
「ハハハハッ…まだあそこのロビーの出入り口と非常口を塞いだだけだ。お楽しみはこれからだよ」
「何?」
「おい工藤!どうせどこかで聞いてるんだろ?早く行かないと大事なガールフレンドがバラバラになってしまうぞ」
「てめえ許さねえ!!」
「毛利さん!」
小五郎が森谷を殴ろうとするが、目暮と白鳥が止める。
「暴力はいかん!」
「あっ!」
「えっ」
森谷は胸ポケットに仕舞ってあった紙が見えてしまっている事に気づいて焦る。
「な、何を小僧!」
コナンは焦っている森谷と胸ポケットからはみ出ている紙に気づき、森谷に飛び掛かると紙を奪う。
「コ、コナン君!それは?」
「これは…」
紙を広げて中身を見ると、そこには設計図が描かれていた。
「何だ?爆弾の設計図か?」
「何!」
「新一兄ちゃんに渡してくる!」
コナンは立ち上がって走り出そうとするが、目暮が止める。
「待ちなさい!今、爆発物処理班を出動させるから」
その瞬間、外から大きな爆発音が聞こえてきた。
「また爆発!?」
名前達は窓に駆け寄ってカーテンを開けると、米花シティービルの方向が爆発による火災で赤く光っているのを確認する。
「(爆発物処理班なんて、待ってられっかよ!)」
コナンがギャラリーから出て行こうとするのを、今度は森谷が止める。
「待て!」
コナンは立ち止まると、森谷の方を振り返る。
「工藤に会ったらこう言っておけ。”おまえのために3分間作ってやった。じっくり味わえ”ってな」
「…?」
コナンは理解できないという表情をするが、そのまま走り出す。
「待ちたまえコナン君!」
「目暮警部、私が行きます!」
「苗字君」
「コナン君…爆発物処理班なんて待ってられないって思ってそうなので」
「…頼んだぞ」
「はい!」
そう言うと、名前はコナンの後を追いかける。
「白鳥君、森谷教授を頼むぞ!」
「はい!」
目暮は白鳥に森谷の事を任せると、小五郎と一緒に名前達の後を追う。
「コナン君!」
米花シティービルまでの足が無い事に気づき、森谷邸の前で立ち往生しているコナンを呼ぶ名前。
「乗って!」
「名前刑事!」
コナンが名前の車に乗り込むと「しっかりつかまっててね!」と言って、一気にアクセルを踏む。
「新一君は?」
「さっき新一兄ちゃんにも連絡したよ!米花シティービルに向かってると思う!」
「という事は、森谷教授の所で合流すれば良かったね」
「…」
名前はコナンの様子を見て「…大丈夫?」と声をかける。
「え?」
「蘭ちゃんの事が心配なんだね」
「…うん」
「大丈夫だよ。さっきチラッと爆弾の設計図見たけど、そんなに難しくないから、その程度なら10分もあれば十分解体できるよ!」
そう言ってのけた名前に、コナンは「名前刑事って、爆弾に詳しいの?」と聞いた。
「私じゃなくて、私の幼なじみがね」
「幼なじみ?」
「うん。小さい頃から何でもかんでも分解しては組み立ててを繰り返して、機械に詳しくなった幼なじみ」
「名前刑事にも幼なじみがいるんだね」
「…うん。それで、爆弾の解体についても幼なじみからしつっこく教えられたから、私もそこそこ知識はあるよ」
「そっか」
「だから大丈夫。…なんてったって、爆発物処理班のエースだった人直伝だからね」
名前はコナンを安心させるように言うと、米花シティービルに急いだ。
「着いた!」
米花シティービルには警察、救急、消防が続々と集まっていた。
名前とコナンは車から出ると、急いで中に入ろうとするが避難誘導をしている警察官に止められる。
「あー!コラコラ、ここは立ち入り禁止です!」
「警視庁の苗字です!」
「ご、ご苦労様です!」
名前の警察手帳を見た警察官が、敬礼をする。
「状況は?」
「爆発自体はおさまっているのですが、爆発の衝撃による建物の崩壊が酷いです」
「なるほど」
「避難は随時進んでいるのですが、5階の映画館に閉じ込められた人達の救出までには、もう少し時間がかかりそうです」
「…分かりました。ありがとうございます!」
名前はそう言うと、コナンに「多分、森谷教授のさっきの言葉から、映画館の中に一番大きな爆弾が仕掛けられているよね」と言う。
「うん…」
「…ここで待ってるつもりは?」
「ないよね」
「だよね」
即答するコナンに、名前は少しあきれながらも「行こう」と言って、ビルの中に入る。
米花シティービルには警察、救急、消防が続々と集まっていた。
「(蘭、待ってろ!今行くからな!)」
名前とコナンは瓦礫を避けながら進んでいるが、時折瓦礫が崩れてくる。
「ううっ!」
「コナン君!大丈夫!?」
「う、うん…」
映画館の前まで到着したが、非常ドアの前は瓦礫で塞がっており、ドア自体も変形してしまって全く開かない。
「どうしよう…」
「…あの点検口…」
「え?」
名前は、天井にある爆弾の衝撃でできたすき間と開いた点検口を見つける。
「瓦礫を登っていけば、天井裏の点検口まで行けそう」
名前は落ちていた石を拾うと点検口に向かって思いっきり投げる。
投げた石が、映画館の中に落ちるのを音で確認すると「うん、向こうとつながってるね」と確信した。
「まさか、名前刑事…」
「あの点検口から中に入るから、私が映画館にある爆弾を解体する」
「だったら逆に、中からあの点検口を通ってこっちに避難すればいいんじゃないの?」
「多分、中には女性のお客さんとかご老人とか、上がるのが無理な人もいると思うの。爆発前に救助隊が来てくれるのが一番だけど…タイマーも分からないし。爆弾を解体する事が、全員が無事に生き残れる方法だと思うんだ」
名前はそう言うと、ニコッと笑う。
「ならボクが行くよ!」
「子どもがそういう事を言わないの!」
少し強めに名前が言うと、コナンは驚いた顔をする。
名前は、すぐにいつもの表情に戻すと「コナン君は戻っててもいいよ?」と優しく言う。
「ボクはここにいるよ!」
「でも…」
「…」
真剣な顔で真っすぐ名前の事を見るコナンの瞳を見て、名前は「分かった」とうなずく。
「でも、もし危ないなって思ったらすぐに避難してね」
「うん」
名前は瓦礫をよじ登り、天井の点検口に手をかける。
「よし、これならなんとか…」
点検口から天井裏に入る事に成功し、中を進んで映画館を目指す。
映画館の中では、インフォメーションの電話が鳴る。
「もしもし…」
『ら、蘭か?』
「し、新一?」
コナンは変声機を使って新一の声で蘭に電話をする。
『ラッキー!まだ電話線切れてねえみてえだな』
「何してたのよ!いつもいつも肝心な時にいないんだから…ホントいつも、いつも…分かってるの?私が今どんな目に遭ってるか」
『ああ、知ってるさ。瓦礫で塞がれた非常ドアのすぐ前まで来てるからな』
「え?」
新一にそう言われた蘭は、ドアの方を見る。
『ここまでは何とか、瓦礫のすき間を抜けてこられたけど、爆発のショックで…ドアが変形したらしくて、どうしても開ける事ができねえんだ』
新一はそう言うと『ところでよ、ロビーの中にアタッシュケースとかトランクとか、変な物ないか?』と蘭に聞く。
「変な物?」
蘭は一度受話器を置き、ロビーの中を覗き込むとピンク色の大きな紙袋を見つけてカウンターに置く。
受話器を持ち直し「何なのこれ?すごく重くて大きいよ。デジタルの時計みたいなのついてる…」と新一に伝える。
『気をつけろ!そいつは爆弾だ!』
「ば、爆弾!?」
『蘭、時間は!?』
「ちょっと待って…」
蘭はタイマーを確認して「42分7秒よ」と答える。
『って事は…』
「爆発は0時3分だね」
「名前刑事!?」
蘭は、突然名前が天井から飛び降りてきた事に驚いた。