時計じかけの摩天楼07

「やっぱり、さすがにお客さんを全員あそこから避難させるのは厳しそうだね」
「ど、どうやってここに来たんですか?」
「あの天井の点検口を使ってだよ!」
「た、たまに忘れちゃいますけど、名前刑事もやっぱり刑事さんなんですね」
「現役バリバリの刑事だよー!」

蘭が意外そうな顔をしてそう言うので、名前は慌てて警察手帳を見せた。

「電話、新一君?」
「あ、はい!」
『名前刑事もそっちに着いたか?』
「うん」
『そしたら名前刑事に爆弾を見せてくれ。あの人、爆弾に詳しいみてえだから、任せておけばあとは大丈夫だ』
「分かった!」

名前は、爆弾を見ながら「結構大きいねー」と苦笑いした。

『一応、オレが爆弾の設計図持ってっから、名前刑事が迷ってそうなら指示も出せるからって伝えてくれ!』
「名前刑事!新一が爆弾の設計図を持ってるから、指示も出せますって言ってます」
「あ、うん。さっき受け取っておけば良かったな」

名前は「(これくらいなら複雑じゃなさそうだし、設計図が無くてもいけそうだけど…念には念を)」と思い、蘭から受話器を借りる。

「もしもし、新一君?」
『はい』
「念のため、設計図と照らし合わせながら解体したいから、話しながら解体してもいいかな?」
『はい!』

新一の返事を聞いた名前は、爆弾の周りを見てから「振動感知装置はついてなさそうだから、ドアの前に移動するね」と言って受話器を置き、爆弾を持ってドアの前に移動する。
その後ろを蘭が追いかける。

「新一君!聞こえる?」
「はい!聞こえます!」
「新一…!」
「蘭!大丈夫か?」
「う、うん…」

名前は、少しだけ安心したような顔をした蘭を見て微笑むと、袋を破いて爆弾を取り出す。
胸ポケットから解体用の道具が入ったポーチを取り出すと、外側のカバーを外す。

「名前刑事…」
「うん、この感じなら10分もあれば十分だよ!」
「本当ですか?」
「うん!だから蘭ちゃんも、そんな不安そうな顔しないで」
「は、はい…」

名前は外にいる新一に向かって「まずは黄色いコード!」と叫ぶ。

「はい!お願いします!」

黄色いコード切り、次は緑のコードを切る。
名前は、念のため設計図を持っている新一に切るコードの色を伝えてから切っていた。

「フゥ…次は、白…じゃなくて水色だね!」
「そうです!」
「…焦りこそ…最大のトラップだよね」

慎重に解体を進めていき、最後の1本となる。

「後は黒いコードだけですね!」
「うん!」

名前は黒いコードを切るが、タイマーは止まらない。

「え…なんで?」

タイマーは動き続けていて、残りは5分。

「あっ!」
「名前刑事!?どうしました?」
「下の方にコードが隠れてた…赤と青のコード」
「何!?本当ですか?」
「うん…これは、設計図にも載ってない?」
「…載っていません…」
「という事は、完全に森谷教授のオリジナルかー…」

名前は冷や汗を流した。

「名前刑事…。新一!どうすればいい?2本とも切っちゃう?」
「バカ野郎!片っぽはブービートラップだ!切った瞬間に吹っ飛んじまうぞ!」
「そ、そんな…」
「さーて…どっちだろう…」

名前が考えていると、ビルの広場に設置されている時計の鐘の音が鳴る。

「0時…あと3分か…」
「…新一」
「ああ?」

赤と青、どちらのコードを切ればいいか考えている新一は、ぶっきらぼうに返事をする。

「ハッピーバースデー、新一」
「えっ…」
「今日は、新一君の誕生日なんだ…」
「だって…もう…もう言えないかもしれないから…」
「(蘭…)」
「蘭ちゃん…」

3人の間に沈黙が広がるが、その沈黙を破ったのは新一の「切れよ…」の一言だった。

「えっ?」
「2人の好きな色を切ってください」
「でも、もし外れてたら…」
「フッ、かまやしねえよ。どうせ時間が来たらお陀仏だ。だったら、2人の好きな色」
「で、でも…」
「新一君…」
「心配しないでください。2人が切り終わるまで、オレはここから離れません。蘭…死ぬときは一緒だぜ」

大きな振動が起り、上から瓦礫が崩れてきそうになる。
名前は爆弾を持ち上げて、急いでドアの前から離れる。

「(まだまだこれからの2人に…あんな悲しい思い、絶対にさせない)」

名前は、そう決心すると「…蘭ちゃん」と名前を呼んだ。

「はい?」

名前はその場に爆弾を置き直すと「…死なせないよ。絶対に」と蘭に言う。
その時、降谷との会話を思い出す名前。


「ねえ、零君」
『ん?』
「零君は、運命の赤い糸って信じる?」
『赤い糸?ずいぶんロマンチックだな』
「だって、今”赤い糸の伝説”っていう映画が話題になってるんだよ?気にならない?」
『そうだな…。僕の赤い糸は君とつながってるから気にならないかな』
「零君…」
『何だよ』
「零君の方が、よっぽどロマンチストだよ!」
『僕達は運命の相手なんだろ?だから、切らずに待っていてくれ』
「…うん!」

それはゴールデンウイークに入る前、降谷と映画の話をした時の会話だった。


「…名前さん」
「ん?」
「…青です」
「…だよね」

名前は小指を見せて「赤い糸」と言うと、蘭と2人で笑い合う。
ニッパーを持ち直し、名前は青いコードを持つとコードを切る。
残り2秒でタイマーが止まり、蘭と残された客達が歓声を上げた。

「よ、良かったァ…!」
「名前刑事!」

蘭が泣きながら名前に抱きつくと、名前も蘭を抱きしめ返す。

「ありがとうございます!名前刑事!」
「ううん、蘭ちゃん達のおかげだよ」
「もう、正直ダメかと思いました」
「未来ある若者を、こんな所で死なせはしないよ!」

名前がそう言うと、蘭は「アハハッ!名前刑事、セリフがおじさんみたいですよ!」と言って笑う。

「そ、そこはせめておばさんにしてよー!」

他の客達も名前と蘭の周りに集まって来ると「あ、ありがとうございます刑事さん!」と口々にお礼を言った。

「いえ、みなさんが無事で良かったです」

みんなで喜んでいると、映画館のドアが壊されて「大丈夫ですか!?」と救助隊が中に入って来る。
救助隊に助けられて、蘭と一緒に外に出ると、小五郎が蘭に駆け寄って来た。

「蘭!良かった!!ケガはないか!?」
「お父さん!大丈夫よ」
「いやあ、本当に蘭君が無事でよかったな、毛利君!」
「はい!ありがとうございます!」
「苗字君も、ケガはないかい?」
「はい!大丈夫です!」

小五郎がレポーター達に囲まれたため、名前と目暮はその場から離れた。

「それにしても、苗字君。お手柄だったな!」
「設計図があったので、それに新一君のサポートのおかげです」
「それもあるが、やはり君の知識のおかげだよ。爆発物処理班を待っておったら、間に合っていなかった」
「ありがとうございます!」

名前は嬉しそうな顔でそう言うと「(陣平と零君のおかげだね!)」と心の中で思う。

「それじゃあ、ここは任せて、我々は本庁に戻ろうか」
「分かりました!」
「それでは、行きましょう」
「バカな…」

白鳥が森谷を連れて来ると、森谷は信じられないという顔をしていた。

「…森谷教授、爆弾はその場にいなくても人の命を簡単に奪える凶器なんです。しっかり反省して、罪を償ってください」
「ッ!クソッ!」

白鳥、目暮の間に森谷を乗せ、名前は本庁に向かった。



「あら!」

蘭はコナンを見つけると「コナン君!心配して来てくれたんだ?」と駆け寄る。

「うん、まあね」
「どうしたの?その包帯」
「あ、ちょっと転んじゃって」
「気をつけなきゃダメよ」

蘭はそう言うと「ねえコナン君、新一見なかった?」と聞く。

「え、あれ?さっきまでいたんだけど…」
「もう〜せっかくプレゼント買ってきたのに」
「そういえば、新一兄ちゃんが不思議がってたよ!”蘭なら絶対赤いコードを選ぶと思ったのに、何で青いコードを選んだんだろう”って」

コナンからの質問に、蘭は「だって、切りたくなかったんだもん」と言った。

「赤い糸は新一と…つながってるかもしれないでしょ?」

”赤い糸の伝説”のポスターを見上げながら笑ってそう言った。

「名前刑事も同じ意見だったよ!そういう人がいるんだね!」
「そうなんだ!それって、さっき車の中で話してた幼なじみの人かなー?」
「え?コナン君、名前刑事とそんな話してたの?」
「ちょ、ちょっと話の流れでね!」

蘭は不思議そうな顔をすると「ふーん、それなら今度ポアロで会った時にでも聞いてみよっと!」と言って笑う。



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