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佐藤の言葉を聞いた歩美は「なんだ〜デートじゃないんだ…」と残念そうな顔をした。

「ああ、それに、問題のデートは来週のはずですしね」
「え?」
「ウーム…てっきり来週のその日曜日が待ちきれなくて、2人で勇み足しちゃったと思ったのに考えすぎだったか…」
「由美ちゃんの推理は外れたね」
「ちょ、ちょっと…どーしてそんな事知ってんのよ!?」

佐藤が顔を赤くしながら宮本に聞く。

「美和子ちゃん…」
「あら、みんな知ってるわよ!今度出来たトロピカルマリンランド行くんでしょ?」
「み、みんなって…」
「刑事をなめないでください。あなたの非番の日に彼が休暇届けを出せばすぐに読めますよ」
「なんか高木君、取調室にぶち込まれてみんなに尋問されたらすぐにゲロったそうよ」

佐藤、宮本、白鳥が話している内容を聞きながら、歩美は「ねぇ、何で2人がデートに行くだけでそんな事になるの?」と名前に聞く。

「それはね、美和子ちゃんが捜査一課のマドンナだからだよ〜!美和子ちゃんの事が大好きな人がいっぱいいるの」
「そうなの?」
「うん。だから、美和子ちゃんが誰とデートに行くか、気になって仕方がないんだよ」

名前は、そう言いながら佐藤を見て微笑む。

「なんか嬉しそうだけど寂しそうだね」
「え?」

コナンは名前に聞く。

「もしかして、苗字刑事も高木刑事の事が好きなのかしら?」
「哀ちゃん!?」

灰原の発言を名前は慌てて否定する。

「違う違う!高木君はいい子だけど、恋愛対象ではないよ。私が嬉しそうなのは、美和子ちゃんが恋愛に前向きになれたみたいで良かったって思ってたの!」
「じゃあ、その悲しそうな顔は?」
「…悲しそうな顔してる?」
「うん。今にも泣き出しそうな、怒り出しそうな…いつもと雰囲気が違うよ」
「子どもって…本当に敏感だよねー」

名前は眉毛を下げたまま笑うと、コナンと灰原の頭を撫でる。

「ちょっ、ちょっと!」
「完全に子ども扱いね」
「子どもでしょうが」

歩美達が「デート!デート!」と騒いでいると「あら?」と宮本が道路の反対側を見る。

「噂の彼のご到着みたいよ」
「え?」

反対側の道路に車が停まり、中から高木が降りて来る。

「(…え?)」

高木は変装のため、くせ毛の黒いカツラを被り、サングラスをしていた。
その高木の姿を見た佐藤、宮本、白鳥、林、そして名前は固まった。

「じ…陣平…」
「あーっ!!高木刑事だー!!」
「変装してもすぐに分かりますよ!」
「ハハハ…やっぱりバレちゃったか…」

高木はそう言うと、サングラスを下に下げて目元を見せる。

「しかしまさか君達がここにいるとはね」
「でも、警察の5人はビックリしてたぞ!」
「え?ホントですか?」
「え、ええ、まぁ…」
「佐藤さんはどう思います?この変装、なかなかイケてるでしょ?」

高木は佐藤に見せるように近づくと、佐藤は思いっきり高木の頬を平手打ちした。
その衝撃で高木のかけていたサングラスが吹っ飛び、子ども達はその様子を焦った表情で見ていた。

「あ、あの…佐藤さん?」
「目暮警部から指令を受けているはずよ…あなたは変装する必要はないって…」
「あ、はい、でも一応…」

高木がそう言うと「だったらどうしてそんな格好するのよ!!」と佐藤が怒鳴る。

「す、すみません…」
「わかったら変装を解いてすぐに持ち場につきなさい!いいわね!」
「は、はい…」

佐藤はうつむいたままその場を離れ、持ち場へ戻る。

「な、なんか僕…いけない事をしたんでしょうか?」

変装を解いた高木は、佐藤の後ろ姿を見つめながらそう聞いた。

「似てたのよ、彼に…。さっきのあなたが…」
「彼?」
「君が本庁に配属される前に、7日間だけ捜査一課に在籍していたあの刑事にね…」

白鳥がそう言った瞬間、パレートを見ていた人達から歓声が上がる。

「ヒデー!!」
「ナオキさーん!」
「あ、来たみたいだよ、ヒデが乗ってる車!」
「じゃあ無理やり前に行ってビデオに撮ろうぜ!」
「あ、でも、さっきから撮りっ放しでテープがもう…」

コナンは「あれ?そういえば名前刑事は?」と周りを見る。

「…多分、苗字さんも…」

白鳥はそう言うと、みんなから少し離れた所で俯いている名前の方に視線を向ける。
名前の傍には、いつの間にかミニパトから降りていた林が寄り添っていた。

「名前、大丈夫?」
「…ご、ごめんね!あれ、高木君だよね!そうだよね!そう、だよね…」
「…名前…」
「よし、戻ろう!大丈夫!」

名前は色々な感情を誤魔化すように笑うと、阿笠の元に戻る。
そんな名前の後ろ姿を、林は悲しそうな顔で見ながら後を追いかけた。

「あれ?子ども達はどこに行ったんですか?」
「ヒデとナオキをビデオに撮ると言って、張り切ってあの人混みの中に入って行ったわい」
「そうなんですね」
「しかし大丈夫かのォ…」
「え?」
「このパレードで何か起こると妙なFAXが送られて来たんじゃろ?」

阿笠に聞かれた白鳥は「ええ…。でもこの様子だと、やはりイタズラだったようですね」と答える。

「と、ところで林さんと由美さんは何やってるんですか?」
「駐禁の取り締まりの応援よ!」
「その辺の道に車ほっぽり出して、パレードを見に来る人が大勢出るからって。本当、余計な仕事増やしてくれたよねー」

そう言うと、宮本は高木の車を見て「高木君の車も早く移動させないと切符切るわよ!」と言った。

「そ、そうですね…」

車に戻ろうとする高木に、名前は声をかける。

「高木君!」
「はい?」
「…気をつけてね」
「え?あ、はい?」

曖昧な返事をした高木は、自分の車に戻る。

「…名前さん?大丈夫ですか?」
「由美ちゃん、ありがとう。大丈夫だよ」
「ん?どうかしたのか?」
「全然、何でもないですよ!」

阿笠に聞かれた名前は、笑って誤魔化す。

「それじゃあ私達は持ち場に戻ろうか?」
「そうですね」

そう言って、名前達が持ち場に戻ろうとしたタイミングで、高木の車がドオンッ!という大きな音を立てて爆発した。

「え?」
「きゃああああ!!」

パレードを見ていた人達が騒ぎ出し、騒然となった。

「た、高木君!?」
「は、はい…」

高木の名前を呼びながら車に駆け寄ろうするが、後ろから返事が聞こえてきたので名前は後ろを振り返る。

「え!高木君大丈夫!?」
「な、なんとか…爆発する前に車を抜け出していたんで…」

ポストに寄りかかりながら、それでも自力で立っている高木の姿を見て、名前は安堵のため息をついた。

「名前刑事!白鳥警部!」

名前達の名前を叫びながら、コナンが名前達の元に駆け寄って来た。

「た、高木刑事は!?」
「コナン君!」
「爆発したのは彼が車を移動するために近づいた時だったよ…普通、あの爆発に巻き込まれたらまず命はない…」
「え?」
「普通なら、ね…」

名前は、ポストにもたれかかっている高木を指さす。

「な、何ですかそれ?人がせっかく間一髪で助かったっていうのに、残念がらないでくださいよ!」
「高木刑事!」
「無事だったんですね!!」
「ああ。偶然車の下で見つけたんだ。車を停める前には無かった紙袋を。これはもしかしたら爆弾じゃないかって、名前さん達に相談しようと戻ろうとした時にドカーンと爆発したってわけさ」

高木が説明をすると「しかし、よく分かったのォ…紙袋の中身が爆弾じゃと」と阿笠が聞く。

「ああ、それは」
「当然です…」
「…言いましたよね?本庁に送られて来たFAXが、前に我々が関わった事件の物と似ていたと。それが、連続爆破事件だったという情報を得ていた刑事なら、気がつかない方がどうかしていますよ」
「…って、美和子ちゃん!」
「え?」

名前は、高木の車の傍で必死になって車を起こそうとしている佐藤の姿を確認すると「もしかして高木君が無事だって事に気づいてない!?」と言って駆け出す。

「止めよう!」
「さ、佐藤さん!?」

名前達が止める前に、宮本が佐藤を止める。

「美和子!!何やってるのよ!?」
「な、何って…車を起こして中の彼を…」
「美和子ちゃん!高木君なら大丈夫だよ!」
「ホラ…」
「佐藤さん!?」

高木は佐藤の手を取ると「うわ!手の平火傷してるじゃないですか!!」と驚く。

「ちょ、ちょっと早く手当てしないと…」
「…そうね…じゃあ、ここは任せたから…」
「(え?涙…)」
「美和子ちゃん、一緒に行くよ…」

名前は、佐藤の肩を抱いて一緒に車の中に戻り、手当てをする。

「救急箱しかないから、簡単な手当てしかできないけど…。病院まで送ろうか?」
「これくらい大丈夫です…」
「…それじゃあ手を出して」

佐藤の手当てをしながら「美和子ちゃん、無茶したらダメだよ」と佐藤に声をかける。



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