現職の刑事が射殺されたという全体未聞の事件が起こった。
米花警察署には報道陣が多数集まっており、我先にと新しい情報を収集しようとしていた。
「まさか奈良沢警部補が射殺されるなんて…」
「うん…」
佐藤と名前は、捜査本部が設置された米花警察署に来ていた。
「奈良沢警部補が米花署に異動してから会ってなかったけど、誰かに命を狙われるような人じゃないのに…」
「…私もそう思います」
「今回の事件の目撃者がコナン君達なんだよね?」
「はい。コナン君達を米花署に呼んだので、もうすぐ来ると思いますよ」
名前達は会議室に向かうと、すでに今回の事件の目撃者であるコナン、灰原、歩美、光彦、元太が会議室の中にいた。
「名前刑事、それに佐藤刑事!」
「こんにちは、みんな」
「いつも通り、元気ね」
会議室には5人の子ども達の他に、目暮に呼ばれた小五郎と子ども達の付き添いの蘭が一緒に来ていた。
「毛利さん、蘭ちゃん、こんにちは」
「ああ」
「こんにちは、名前刑事、佐藤刑事」
2人が挨拶をしていると、目暮、白鳥、高木の3人が会議室に入って来る。
「警部殿」
「毛利君、わざわざ悪かったな」
目暮が椅子に座ると、名前達も同じように席に座る。
「何度もすまないが、我々にも聞かせてもらえるかな?犯人の特徴を」
目暮は早速5人に犯人の事を聞き始めた。
「若い男でした」
「いや、綺麗な姉ちゃんだったよ」
「違うわ、中年のおじさんよ」
歩美、光彦、元太がそれぞれ犯人の特徴を伝えるが、全て違っていた。
高木は「じゃあ、その人の差していた傘は?」と聞く。
「黒い傘です」
「緑だよ、緑!」
「えっ…」
「青だったと思うけど…」
意見が合わない3人の話を聞きながら、小五郎は「おまえら、本当に見たのか?」とあきれたように聞く。
「まあまあ毛利さん」
「コナン君や哀ちゃんはどう?」
名前に聞かれたコナンは「レインコートと傘は灰色っぽかったけど、男か女かは分からない。でも、傘は右手で持ってたよ」と答える。
「そうね。私も同意だわ」
「ということは、銃は左で撃ったってことだね」
「犯人は左利きか」
「ところで警部殿。奈良沢警部補が、左胸をつかんで亡くなった事については?」
「ああ。彼は胸にしまった警察手帳を示したものと、我々は解釈した」
そこに、千葉が会議室に入って来る。
「今、手帳に書かれているメモの内容を徹底的に調べているところだ」
千葉は、そのまま目暮の元に来ると、資料を見ながら調査報告をする。
「目暮警部。現場に落ちていた薬莢から使用された拳銃は、9ミリ口径のオートマチックと分かりました」
「9ミリ口径か…」
「女にも扱える、ありふれた銃ですね」
話を聞きながら、蘭が安心したような顔で「でも、みんな巻き添えにならなくて良かったわ。コナン君も」と言った。
「うん…」
その日の夜、今度はマンションの地下駐車場で同じ現職刑事である、芝陽一郎刑事の遺体が発見される。
警視庁捜査第一課では、現職刑事が続けて射殺されたという事もあり、殺伐した雰囲気だった。
「目暮警部…やはりこの事件…」
「うむ…1年前の事件の関係者を狙っている事に間違いないだろうな」
「あの事件の関係者を狙っているという事であれば、次に狙われるのは佐藤さんですよね」
「…やはり、誰かつけるか」
「その方が安心ですよね」
名前、目暮、白鳥が3人で話していると、目暮のデスクの電話が鳴り、目暮は話を中断させて受話器を取る。
「はい、目暮」
『警部殿、私です』
「ああ、毛利君か」
『警部殿、昨夜の事件について詳しく伺いたいんですが…』
「すまん、今忙しいんだ。またにしてくれ」
そう言うと、目暮は電話を切る。
「いいかね?白鳥君、苗字君…。この件は、私と君達だけの秘密だ。決して、他言せんように」
「分かりました」
「はい…」
次の週末、白鳥の妹である沙羅の結婚を祝う会が、新郎新婦の友人主催のもと米花サンプラザホテルにて開催され、そこに呼ばれた名前や警察関係者達。
「名前さん!」
「美和子ちゃん!わ〜!綺麗だね!」
「名前さんも、綺麗なワンピースですね!」
名前がホテルのクロークに荷物を預けていると、後ろから佐藤に声をかけられる。
「こんなタイミングだけど、白鳥君の妹さんの結婚を祝う会、楽しみだね」
「そうですね。こんな時だからこそ、明るい話題は嬉しいですよね」
佐藤も荷物をクロークに預けると「中、入りましょうか?」と名前に聞く。
「だね」
会場の中に入ると、新郎の晴月光太郎の友人と白鳥の妹、沙羅の友人や警察関係者が集まっていた。
「おお〜圧巻…!」
「さすがに小田切警視長とか、普段見かけない上司の方がいると緊張しますね」
「美和子ちゃんも、緊張とかするんだね」
「名前さん?私の事何だと思ってるんですか」
そこに、高木がやって来る。
「苗字さん!佐藤さん!」
「高木君」
高木は名前の事を見ると「やっぱり女性が着飾ると華やかになりますね!」と言う。
「こういう時は、女で良かった〜って思うよ!」
「見せたい相手がいるんじゃないんですか?」
佐藤がニヤニヤとした顔で聞くと「そ、そんな人いないもん!」と、名前は顔を赤くしながら否定する。
高木が佐藤を見ながら何も言わないでいると、佐藤は「どう?馬子にも衣裳でしょ?」と言った。
「そ…そんな事ないっす!とてもお似合いです!」
高木は顔を真っ赤にして、慌てて否定する。
そんな高木を笑って見ている名前。
3人で話をしていると、会場が暗くなり、司会の男性にスポットライトが当たる。
『皆様、お待たせいたしました。新郎新婦のご入場です!どうぞ、盛大な拍手でお迎えください』
新郎新婦の2人にスポットライトが当たると、拍手と歓声が上がった。
2人が席に座ると電気が点き、それぞれ飲み物を持って乾杯する。
「私、毛利さん達に挨拶してくるね!」
「分かりました」
名前は、佐藤達から離れると、小五郎達の方へ向かう。
「毛利さん!」
「おお、名前君。君も来てたのか」
「はい!蘭ちゃんとコナン君もこんにちは」
「名前刑事、こんにちは!」
「妃さんも、ご無沙汰しております!」
名前が挨拶をすると「こんにちは。確か、あなたはあの時の?」と聞く。
「はい!覚えていてくださったんですか?」
「もちろんですとも。どっかのヘボ探偵と違って、記憶力には自信があるわ」
「その節は、大変お世話になりました」
「お母さん、名前刑事と知り合いだったの?」
蘭は、驚いた顔をして英理に聞く。
「ええ。彼女がまだ高校生だった頃にちょっと」
「知らなかったー」
そんな話をしていると「毛利さん」と、白鳥が小五郎に声をかける。
「ん?よう、おめでとう!」
ビールを片手に上機嫌の小五郎が振り返りながら祝いの言葉を伝える。
「ありがとうございます」
隣にいる男性を「あの…ご紹介します」と言って、小五郎に紹介する白鳥。
「私の主治医で、米花薬師野病院心療科の風戸先生です」
風戸京介は白鳥に紹介されると「風戸です、よろしく」と言って、握手を求めた。
「毛利です。妻の英理に、娘の蘭。そして居候のコナンです」
「でも白鳥さん?心療科って?」
英理が聞く。
「あ〜いや、管理職っていうのは、色々と悩みが多いものでして。それでですね」
白鳥は小五郎に近寄ると「毛利さんも一度、診てもらったほうがいいかと思いまして…」と言った。
「そうだな、俺も近頃記憶が…ん?」
小五郎は「こら!どういう意味じゃ!」と言って白鳥に詰め寄る。
そんな小五郎を見て、蘭、英理、そしてコナンが笑う。
「アハハハハハッ!イテッ!」
大笑いをするコナンの頭を小五郎は殴ると「おまえは笑い過ぎなんだよ」と言った。
その横を目暮と高木が通り過ぎる。
「イッテェッ!!」
「ああ、ちょっと失礼!」
「あ!毛利さん!」
小五郎はそう言うと、目暮の後を追い「警部殿!」と名前を呼ぶ。
「おお、毛利君か」
「その後、捜査の方は?」
「すまんが、その話はなしだ」
そう言うと、目暮はそれ以上答えず、その場を立ち去った。
「えっ…」
目暮の後ろ姿を見ながら「なんで話してくれないんだ…」と小五郎がつぶやく。
「きっとおじさんに言えない事があるんだよ」
「ん?」
小五郎は後ろにいた高木の胸倉を掴むと「おい!そうなのか?高木!」と聞く。
「い、いや、別に…」
「ねえ、高木さんって佐藤刑事の事が好きなんだよね?」
コナンが悪そうな顔でそう言うと、それを聞いた高木が「えっ!?」と驚く。
「ほう…そりゃ面白え!彼女におめえの気持ちを伝えてやっか!」
「ああっ…ちょちょ!ま、待ってください!」
高木は焦りながら小五郎を止める。
「分かりましたよ…」
高木は周りを見ながら小声で「マスコミには伏せているんですが、実は、芝刑事も警察手帳を握って亡くなってたんです」と小五郎に教える。
「何!」
「えっ!」
「て事は…」
「こらこら高木君…」