瞳の中の暗殺者02

近くにいた名前は、それ以上捜査情報を漏らさないように高木に注意をしようとするが、その前に白鳥が止める。

「それ以上の詮索は無用です、毛利さん」

白鳥は真剣な表情をして「Need not to know…そう言えばお分かりでしょう?」と言う。

「なっ!?」

驚いている小五郎を無視して白鳥は「さ、苗字さんも行きましょう。目暮警部が呼んでいます」と言って、その場を離れた。

「Need not to know…”知る必要のない事”だと?バカな!」

うな垂れている小五郎の姿を見て、名前は「…本当に毛利さんにも言わなくていいの?もしかしたら、力になってくれるかもしれないよ?」と白鳥に聞く。

「目暮警部の決定ですし、今回の話は部外者に伝えない方が良いです」
「それは…そうかもしれないけど」

白鳥は高木の方を見ると「それにしても、君はすぐに情報を漏らす」とあきれた顔で言う。

「ぼ、僕だって言いたくて言ったわけじゃないですよー!」
「美和子ちゃんの事が好きなの、コナン君にもバレバレなんだね」
「苗字さん!」

名前が高木をからかっていると「敏也!なぜおまえがここにいる」という小田切警視長の怒鳴り声が聞こえてきたので、名前は声のする方に目を向ける。

「ここはおまえのようなヤツが来る所じゃない」

敏也は、父親である小田切敏郎警視長の言葉を無視して煙草に火をつける。

「このパーティーにも招待されていないはずだ」
「うっせえな!仕事でたまたまこのホテルに来ただけだよ!」

敏也も同じように怒鳴り返す。

「まあ。いいじゃないですか警視長!」

白鳥が2人の傍に駆け寄ると、小田切をなだめる。

「敏也君、ゆっくりして「出ていけ!」

白鳥の言葉を遮る小田切。

「野良犬が餌をあさるようなマネはやめてな」
「何だと!」
「敏也さん!」

佐藤が敏也に近づくと、後ろから肩を掴んで止める。

「けっ…!」

タバコの火を消すと「邪魔したな!」と言って、ギターケースを持って会場から出て行く。

「あっ!敏也君!」



パーティーも進み、各々が自由に過ごしていると「佐藤君」と、目暮が名前と話をしている佐藤に声をかける。

「あの事だが…」
「私は結構です」
「しかし…」
「ご心配なく」

目暮にそう言うと、佐藤はそのまま会場を出る。

「お…おい…」
「目暮警部!私が一緒に行きます」
「苗字君、すまんが頼む」
「任せてください」

クロークに向かう佐藤を追いかける名前。

「美和子ちゃん」
「名前さん」
「何で断っちゃうの?」

佐藤は名前の問いかけに「まだそうだと決まったわけじゃないじゃないですか」と答えた。

「だからって!念には念を、じゃない?」

クロークで荷物の預け札を渡すと「38番お願いします」と係に声をかける佐藤。

「はい」
「あ、私も、37番お願いします」
「かしこまりました」

それぞれ荷物を受け取ると、2人でお手洗いに向かう。

「美和子ちゃん、私は心配だよ」
「名前さん…あんまり心配しなくて大丈夫ですって」

パウダースペースでメイクを直していると、トイレの個室から出て来た蘭に気づく。

「あら、蘭ちゃん」
「あっ、名前刑事と佐藤刑事」
「警察官ばっかりで、おかしなパーティーでしょ」
「いえ、それよりお二人も気をつけてくださいね」
「えっ?」

ハンカチで手を拭きながら、蘭は名前と佐藤を心配する。

「だって、刑事さんが次々と撃たれてるから…」
「大丈夫よ!私、タフだから!」
「もう!そんな事言って。蘭ちゃん、ありがとう」

そう言って名前と佐藤が笑うと、その瞬間、トイレの電気が消える。

「どうしたのかしら?」
「停電?」
「おかしいわね。様子見てくるから、動かないで」
「美和子ちゃん、動かない方がいいんじゃない?」
「でも、ここにいても仕方ないですし」

そう言うと、佐藤は真っ暗中を手探りで歩き出すと、トイレの出入り口に向かう。

「そしたら私も一緒に行くから」
「名前さんは蘭さんと一緒にここで待っててください」
「でも」

名前も佐藤の後を追うように歩き出す。
そんな2人を見ていた蘭だったが、洗面台の下の物入れが光っている事に気づくと、扉を開ける。
中には懐中電灯がつけっぱなしで置いてあった。

「佐藤刑事、名前刑事、こんな所に懐中電灯が!」
「えっ?」
「懐中電灯?」

壁を伝いながら歩いていた名前と佐藤は、後ろを振り返る。

「ほら」

蘭は懐中電灯を持ち上げると、名前達の方を照らす。

「ッ!」

照らされたトイレの出入り口には、拳銃を持った人間が立っていた。
そして、その人物は佐藤に向かって拳銃を向ける。

「アッ!」

佐藤は急いで蘭の方に駆け寄ると「ダメ!蘭さん!」と叫ぶ。

「美和子ちゃん!!」

パシュッ!パシュッ!と2回、銃声が聞こえると、銃弾は佐藤に当たる。

「うっ!」
「佐藤刑事!」
「美和子ちゃん!」

名前は咄嗟に拳銃を撃ってきた人物と佐藤の間に入る。
すぐにもう2回、銃声が聞こえる。

「クッ!」

1発は名前の腹部に当たり、もう1発は洗面台を打ち抜き、水が勢いよく吹き出す。
蘭が持っていた懐中電灯に水が当たると、懐中電灯が蘭の手から離れて宙を舞う。

「あっ…」

もう1発拳銃が撃たれるが、その弾は蘭の顔の横を通り過ぎる。

「あっ!」

佐藤が蘭の体の上に倒れ込むと、支えきれず蘭も一緒に床に倒れる。
名前は、その場にしゃがみ込むと、腹部を押さえながら佐藤達の方を見る。

「み…美和子ちゃん…蘭ちゃん…」

拳銃の弾を撃ち尽くした人物は、拳銃をトイレに捨てるとそのまま走り去っていった。
その後すぐに、消えていた電気が点く。

「蘭ちゃん…大丈夫?」
「は、はい…」

蘭は体を起こそうとする。

「佐藤刑事…」

自分の体に力なく倒れている佐藤の肩を揺らしながら「佐藤刑事、しっかりして…」と、蘭が呼びかける。

「美和子ちゃん…大丈夫?」

名前も佐藤に近づくと、痛む腹部を押さえながら声をかける。

「美和子ちゃん!?」
「ああ…」

倒れている佐藤からは、血が流れ続けていた。

「私が…」

蘭は、両手についた血を見て「わ…私が懐中電灯を…イヤーッ!」と叫ぶと、そのまま気を失う。

「ら、蘭ちゃん!大丈夫!?」

コナン、小五郎、高木が蘭の悲鳴を聞いて女子トイレに駆け付ける。

「ハッ!」
「蘭!」
「佐藤さん!」

3人はトイレの中を見て、急いで倒れている佐藤と蘭に駆け寄る。

「おい蘭!大丈夫か!」

小五郎が蘭に呼びかけると「蘭姉ちゃんは気を失ってるだけだよ。重症なのは…」とコナンが佐藤を見ながら言う。

「佐藤さん!佐藤さん、しっかりしてください!」

高木が佐藤を抱き起す。

「名前刑事は大丈夫?」
「う、うん…」
「って、血が出てるよ!名前刑事も撃たれたの!?」

コナンは、名前の押さえている左側腹部を見ると、青い顔で聞く。

「1発だけね」
「名前刑事…」

遅れて目暮、小田切、白鳥の3人もトイレにやって来る。

「こ、これは…!」
「目暮、救急車だ!白鳥、ホテルの全ての出入り口を封鎖しろ!」

小田切が2人に指示を出す。

「はっ!」

白鳥は返事をすると、急いでトイレから出て行く。
目暮は携帯を取り出すと、救急車を呼ぶ。

「もしもし、こちら米花サンプラザホテル15階です。女性が銃で撃たれました!大至急、救急車を回してください」



「急げ!全ての出入り口を封鎖だ!」


ホテルの入り口に救急車が到着し、名前、佐藤、蘭がそれぞれ救急車に乗る。

「目暮警部」
「なんだね?」
「私は大丈夫なので、目暮警部は佐藤の方に付き添ってください」
「だ、だが…」
「大丈夫です。こんなの、佐藤に比べたらかすり傷ですよ!」

名前は、目暮の負担にならないよう痛みをこらえながら笑う。

「…分かった」

目暮は返事をすると、佐藤を乗せた救急車に同乗する。

「苗字さーん!大丈夫ですか?すぐに病院に搬送しますよ!」

救急隊員の呼びかけに「はい、大丈夫です…」と答えつつ、名前の意識はそこでなくなった。



米花薬師野病院に運ばれた名前と佐藤は、それぞれ手術室に運び込まれた。
2人の入った手術室の前で、目暮がウロウロしていると、捜査がひと段落した白鳥や高木、そして小五郎や英理達がやって来た。

「目暮警部、苗字さんと佐藤さんの容体は?」

白鳥が目暮に聞く。

「苗字君は、左側腹部を撃たれていて、弾の摘出手術が行われているそうだが、幸い、命に別状はなさそうだ」
「良かったです…」
「佐藤君は、弾の一つが心臓近くで止まっている。助かるかどうかは、五分五分だそうだ」
「えっ…!」

目暮の言葉を聞き、高木と白鳥は青い顔をする。

「警部さん、蘭は?」
「幸い、外傷はありませんが、まだ意識が戻りません。病室はこの奥です」

目暮が通路を指さすと、妃と園子は蘭の病室に向かう。

「白鳥君、捜査の方は?」
「全員の硝煙反応を調べましたが、出ませんでした」
「出ない?」
「犯人は、出入り口を封鎖する前に逃走したものと思われます」

そこに、パーティー会場で捜査をしていた千葉が合流する。

「拳銃から指紋は?」
「それも出ませんでした」
「千葉君、配電盤の仕掛けは特定できたかね?」
「はい。どうやら、携帯電話の呼び出しで爆発する仕掛けになっていたようです」

千葉が答えると「懐中電灯も、蘭さんの指紋が残っているだけでした」と続けた。

「それなら、蘭は自分のせいで佐藤刑事と名前刑事が撃たれたと思ったはずだ…」

千葉の言葉を聞いて、小五郎が顔を伏せながらそう言った。
その後、目暮と白鳥は、今回の事件が1年前の事件と関係している可能性がある事を、小五郎、英理、そしてコナンに教えた。



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