19

名前はエドワードに近寄ると、新一も一緒になってついていく。

「Hey, Mr...Do you remember the last time you went to the toilet?」
「No, I don't remember when I got in」
「Oh, really?」
「Yeah」
「…」

エドワードの返事を聞いて、新一は咳をしながら「いつ入ったかなんて覚えてないそーです」と目暮に伝える。

「まあ無理もないか…」
「どーしたのよ?」

コホコホと咳をしている新一に蘭が聞くと「あの外人、コロンのにおいがきついんだよ…」と答える。

「おいおい。いつまでそんな当てにならねー事聞いてんだ?凶器を持ってる奴が犯人なんだろ?さっさとその四人の手荷物や体を調べた方が早いんじゃないのかい?」

鷺沼は「まあ、トイレに立たずにずっと寝てた俺には関係ねェ事だがな」と続けた。

「うそだ!!あなたも席を立ったじゃないですか!!」
「何!?」
「だってあなたの咳、殺された男の真後ろでしょ?」
「どういう事ですか?」

鵜飼は「ホラ、私がトイレに入る前、殺された男がまだ席で寝ているのを見たと言ったでしょ?あの時、たしかにこの人は席を空けてたんですよ!」と答えた。

「おいおっさん!デタラメ言ってんじゃねーよ!トイレに立ったのはあんたら四人だけって、こいつが証言してんだ!!」

鷺沼はそう言うと新一を指さしながら「そーだろボウズ?」と聞いた。

「ええ、まあ」
「ちょっと!ハッキリしなさいよ」
「…」
「とにかく!!疑わしいあんたら五人には、手荷物チェックと身体検査をトイレの中で受けてもらいます!!よろしいですな?」

目暮がそう言うと、男性である鵜飼、エドワード、鷺沼は高木が、女性である立川、天野を名前がそれぞれ身体検査をする。
そして、身体検査が終わると、二人は手分けして手荷物や機内を調べた。



「何!?あの五人の体からも手荷物からも、凶器が出て来なかっただと!?」
「ええ…。アイスピックの様な物は誰も所持していません」
「一応、機内の疑わしい場所も全て捜索しましたが、どこにも隠されていませんでした」

目暮は「おい!トイレに立ったのは本当にあの人達だけだったのかね!?」と新一に問いかける。

「ちょ、ちょっと新一…新一!?」

名前は「…とにかく、凶器がない、という事はまだ犯人が隠し持ってる可能性が高いという事ですね」と目暮に言う。

「だが、隅々まで捜したんだろう?機内も、手荷物も…」
「捜しました」
「それで見つからないという事は、まだ他にもトイレに行った人間がいたという事じゃないのかね?」

そこに、新一が口を挟む。

「いえ、違います。目暮警部、もう一度調べ直してください」
「はぁ?調べ直せだと!?」

新一は「先ほど名前刑事も言ったように、機内から凶器が見つからないという事は、犯人がまだ隠し持っているかもしれないって事ですよ」と言った。

「だから、それは君がトイレに行った人間を全員覚えていなかったってだけの事じゃないのかね?」
「いえ…。たしかにトイレに立ったのはあの四人で間違いありません。それに、頚髄を刺すという異質な殺人方法からみて、これは計画的な犯行…。しかもここは完全な密室です!疑われて調べられても凶器が発見されない手立てぐらい、犯人は用意しているでしょうから」
「フン…そんな事、君に言われなくともやろうと思っとったところだ!」

目暮がそう言うと「見落とさないでくださいよ…。犯人が使った凶器は、搭乗前の金属探知機や手荷物のX線検査をパスした代物…。もしかしたら、何かにカムフラージュさせて機内に持ち込んでいる可能性もありますから」と新一が念を押した。

「わ、分かっておるが、素人にこう口出されると…」
「め、目暮警部、落ち着いてください」
「彼、結構ズバリと言いますね」
「本当にね」

名前は新一の事をあきれた顔で見た。

「えー、皆さん。申し訳ないのですが、もう一度調べ直させていただいてもよろしいでしょうか?」
「ええ!?もう一度調べるですって!?」
「ど、どういう事ですか?」

案の定、五人からは非難の声が上がる。

「念のためだよ!それとも、もう一度調べられたら何か不都合でも?」
「別にないけどねぇ…」
「ではまず、立川さんの手荷物から」

高木は立川の手荷物を受けると、中身を全て取り出す。

「えーっと、パスポートに財布にハンカチに化粧道具にティッシュに搭乗券…サングラスにカメラに手帳にボールペン…」
「やっぱり、凶器といえる様な物はありませんね」
「ボールペンの中身は調べたんですか?」

新一に聞かれた名前は「もちろん、調べてるよ」と答えた。

「ちょっとなんなのその子?さっきから」
「君は口を挟まんでいい!」

目暮は新一に注意をすると「では次、天野さん!」と天野を呼んだ。

「は、はい…」
「パスポートに財布にハンカチにニットの帽子に搭乗券…カメラに化粧道具にソーイングセットに酔い止め薬が少々…」
「刃物になるといえるのはソーイングセットの小さなハサミと針ぐらいですが、こんなものであんな殺し方はまず無理ですね」

名前は「酔い止めの薬…。天野さん、ご自分で酔い止めの薬を持っているのに客室乗務員の方を呼んで薬をもらったんですか?」と聞いた。

「え、ええ…。じ、自分の薬じゃ効かなくて…」
「…そうですか」
「では次、鵜飼さん。よろしいですね?」
「え、ええ…」

次に鵜飼の手荷物を全て確認する。

「パスポート搭乗券に財布にハンカチ…ヒゲソリにタオルにシェービングクリームにマスク…」
「このマスクは?」
「ちょっと風邪気味だったんで一応持って来たんです。でも、肝心の風邪薬の方を忘れてしまって…」

鵜飼の手荷物を確認し終えると、次はエドワードの手荷物を確認する。

「Let me check your baggage.」
「Sure」

エドワードの手荷物を受け取ると、高木は中身を確認する。

「パスポートに財布にハンカチに搭乗券にタオルに新聞…文庫本二冊に眼鏡ケースにソーイングセットにアメリカナショナルバンクの小切手帳…」
「失礼ですが、この小切手帳は?」
「What is this checkbook?」
「I had intended to buy some art that was being auctioned in Japan, but I din't. I couldn't find anything I liked.」
「日本で競売されていた美術品を買うつもりだったけど、気に入った物がなくて止めたそうです」
「ホー…」

名前は「さっきも思ったけど、新一君って英語できるんだね」と聞いた。

「うち、両親がロスに住んでるんで。ガキの頃、よくハワイに遊びに行ったりしてたんです」
「そうだったんだ」
「そういう名前刑事も、英語ペラペラですね」
「一応刑事だからね。英語は必要かなって思って、勉強したんだ」

名前達がそんな話をしている横で、目暮が「じゃあ次は…」と言って鷺沼の事を見る。

「俺だろ?ホラよ!」

そう言うと、鷺沼は自分の手荷物を投げる。

「パスポートに財布にハンカチにカメラにネガ…腕時計にタバコにライターに搭乗券に酔い止め薬多数…」
「薬がかなり多い様ですが」
「乗り物には弱くってね。千鶴やつぐみにももらってたんだ。なあ?」
「ええ」

新一は「このネガ、ちょっと見ていいですか?」と言って、鷺沼の手荷物に入っていたネガを透かして見る。

「お、おい…」
「この写真の人…アメリカ上院議員のディクソンさんですね?」
「本当ね。これは…女性と一緒に写ってる?」
「おい、もういいだろ?」

鷺沼は新一からネガを取り返そうとするが「ちょ、ちょっとそれ大鷹君のネガと同じじゃない!」と立川に言われて動きが止まる。

「同じって、まさか被害者の体からなくなっていた例のネガですか?」
「ええ。そのスキャンダルの写真をロスの新聞社が高く買ってくれるって話だったみたいよ」
「それをあんたが持っているという事は…」
「おいおい待ちなよ」

目暮から疑いのまなざしを向けられた鷺沼は「これは正真正銘、俺のネガだぜ?」と弁明した。

「俺も大鷹と一緒にホテルに張り込んで撮ったんだ。大鷹のヤツより出来は良くないが、ロスの新聞社に行って俺のも売り込むつもりだったんだよ」
「なるほどね」
「だいいち、疑うんなら凶器が出てきてからにしてほしいねぇ…。犯人はまだ持ってんだろ?アイスピックみてーな凶器をよォ」

鷺沼がそう言うと「まあまあ、苦情は身体検査が終わればいくらでも聞きますから」と高木がなだめる。

「あ、自分の荷物にはまだ触らないでください!身体検査が終わるまで我々が保管しますので」

鵜飼が自分の手荷物を取ろうとするのを見て高木が止める。

「では、みなさん先程と同じく一人ずつトイレへ。女性は苗字君が、男性は我々が検査します!」

目暮がそう言うと、二度目の身体検査が始まった。



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