20

二度目の身体検査が終わるが、やはりアイスピックの様な凶器はどこからも見つからなかった。

「そらみろ!凶器なんて出て来ねーじゃねーか!?」
「二度も素っ裸にしたりして!!」
「もう勘弁してください!!」

容疑者として疑われている四人は、怒りをあらわにしていた。

「ど、どうします警部?」
「凶器が出て来ん以上、この人達を容疑者として扱えんよ…。捜す場所は全て捜したし…」
「いや、捜す場所はもう一か所残っています」
「え?」

新一は「殺された大鷹さんの手荷物の中ですよ!残るはそこしかない!」と言い切った。



大鷹の座っていた席の上部にある荷物棚を開けると「それですか?大鷹さんの手荷物は?」と高木が天野に聞く。

「えっと、その黒いバッグの奥の…」

天野が右腕を伸ばしてバッグを捜そうとするが「あ…」と言って動きが止まる。

「どうかしましたか?」
「いえ…ちょっと前に彼が妙な事を言っていたのを思い出しちゃって」
「妙な事?」
「一週間前にスタジオに置き忘れた彼のバッグが、刃物でズタズタにされてたんです…。気に入ってたバッグで、彼はいつも持ち歩いていたのでかなり怒ってました」
「ホー…」

天野は左腕を伸ばしながら「だからこれは、旅行のために新しく買ったバッグなんです」と言って、荷物棚から大鷹のバッグを掴んで取り出す。

「もしかしたら、誰かがそのバッグに例のネガが隠されていると思ってやったかもしれんな」
「ええ…」
「…」

大鷹の手荷物の中身を全て出して、凶器が隠されていないか確認をする名前達。

「パスポートにカメラにフィルムにサングラスにタバコ三箱…財布にタオルに雑誌二冊に搭乗券に腕時計…」
「凶器になりそうな物はない様だが…」
「し、新一…」

パスポートの写真を見ていた高木が「あれ?”大鷹和洋”ってもしかして、三年前に日売新聞報道写真大賞をとったあの?」と聞いた。

「ええ、そうよ」
「なんだねそれは?」
「ホラ、火事で逃げ遅れた母親が、救助に来たはしご車の消防士に娘を差し出しているあの写真ですよ」

高木がそう言うと「そんな事、今はどーでもいいでしょ?」と鵜飼が口をはさむ。

「私達の容疑は晴れたの?晴れてないの?どっちなのよ?」
「しかし、犯行時刻に現場であるトイレに行ったのは、あなたら四人だけだとこの少年は言ってますし…」
「フン、どーせその探偵きどりのボウヤが寝ぼけて二、三人見逃したんだよ」

鷺沼は「いっぱい御本を読んでお勉強してるみたいだが、これは本物の殺人だ!小説とはわけが違う。子どもは大人しく席に戻っておねんねしてな」と新一に言う。

「ちょっと、なんか言い返してあげたら?」
「…」

蘭にそう言われるが、新一は言葉が出て来ない。

「あのー…そろそろ白状したらどうなんです?」
「あん?」

鵜飼は鷺沼にそう言うと「あなたなんでしょ?犯人は…」と続けた。

「おいおい…」
「この中で明らかにウソをついているのはあなただけなんですから」

鵜飼は「さっきも言いましたが私は見たんだ!この女性が薬を頼んでいる時、寝ていた被害者の後ろの席にあなたがいなかったのを!!あなたずっと寝ていたと言ってるけど、それは真っ赤なウソじゃないですか!」と叫んだ。

「ちょっと待ってよ!私が目を覚ましたのはこの子がげーげーしながらスチュワーデスの薬を待ってる時だけど、あの時大鷹君はもう席にいなかったけど、鷺沼君はちゃんと後ろの席で寝てたわよ?」
「そらみろ!デタラメ言ってんじゃねぇぞ!!」
「デ、デタラメじゃない!現に、私と一緒にあのスチュワーデスさんも見ていたんだから…」
「え?」

目暮は「本当かね?」と客室乗務員に聞く。

「ええ。このお客様が機内を徘徊されておられましたので呼び止めました…。そうしたら”禁煙席でタバコを吸ってるあの男を注意してくれ”と言われて…」
「で?その時この人は席にいたんですか?」
「い、いえ…いらっしゃらなかった様に思いますけど…」

客室乗務員がそう答えると「おいコラ!あんたまで何言ってんだ!?」と鷺沼が焦った顔をする。

「まあ、落ち着いて…」
「では、薬を持って来たあのスチュワーデスさんに聞いてみましょう。天野さんに薬を頼まれた時、彼女の横で寝ていた被害者の後ろの席にあなたがいたかどうか…」

目暮は薬を持って来た客室乗務員に「さぁ、答えてください!!」と聞く。

「ちゃんと寝てただろ俺…!」
「どーなんですか?」
「あ、いえ…いらっしゃった様ないらっしゃらなかった様な…」
「遠慮なさらずはっきり言っていいんですよ?」
「おい…」
「すみません、よく覚えてないんです…」

その客室乗務員に新一は「あの、もしかして薬を持って行った時、つぐみさんの座っている席が見つからなかった、なんて事ありませんでした?」と小さな声で聞く。

「え?ええそうよ!でもなんか勘違いだったみたいで」

客室乗務員の答えを聞いた新一は、ニヤッと笑った。

「…ねえ、新一君」
「はい?」
「犯人、分かった?」
「え?」

名前にそう聞かれた新一は「名前刑事も分かりました?」と聞き返す。

「犯人は、多分あの人なんだろうなってところまでは分かったんだけど…答え合わせしない?」
「もちろんです。ただ、ボクもまだ凶器の隠し場所に自信がなくて…」
「さっき、彼女が荷物棚から大鷹さんのバッグを取り出す時に、最初は右手を伸ばしたけど、一回止まって左手を伸ばして取り直したのを覚えてる?」
「はい、覚えてます」
「あの時彼女が話した内容って、あの時話さなきゃいけなかった事だったのかな…?」
「…そうか!」

名前は「うん。搭乗前の金属探知機やX線検査をパスできて、なおかつ怪しまれずに身につけ続ける事ができる物…」と言って、服の上から右胸を指さした。

「…なるほど。これですべての謎が解けました」

新一がそう言うと「ホラ、新一!目暮警部が呼んでるよ!」と蘭が新一の事を呼びに来る。

「え?」
「客席を回って、他にトイレに行った人がいないか見てほしいんだって!」
「そ、それより蘭…ちょっと聞くけど」

新一はそう言うと、蘭の耳元に近づいて「最近のブラって、どんなヤツでもワイヤーってのが入ってんのか?」と小声で聞いた。

「な、な、な…!」

聞かれた蘭は顔を真っ赤にしてうろたえた。

「早く教えろよ!聞いてるこっちも恥ずかしいだろ?」
「ええ、そうよ!最近のヤツはみんなだいたいそーなってるわよ」
「やっぱりそうか…」
「やっぱりって、あんた何納得してんのよ!?」

名前は「蘭ちゃん」と蘭の名前を呼ぶ。

「はい?」
「新一君、謎が全て解けたみたいだよ」
「え!?」

蘭は名前の言葉を聞いて驚きながら「本当なの?新一!?」と新一に聞く。

「ああ。被害者の息の根を止めた犯人の切り札がな…!」



目暮は騒いでいる鷺沼に「とにかく!この中で疑わしい行動をとっているのはあんただけだ!」と言う。

「向こうに着いたらあんたの手荷物と体を入念に調べますので、そのつもりで」
「おいおい…さっきから何度も言ってるだろ!?犯行時刻、俺は自分の席でずっと寝てたって!!」
「ウソをつくな!ちゃんとこのスチュワーデスさんが見ているんだ!被害者が席を立つ前まで、あんたが席にいなかったのを!」
「だ、だから、それは何かの間違いで…」
「まあ、話は向こうに着いてからゆっくり聞こう。動機の事も含めて、たっぷりと…」

目暮がそう言うと「その必要は全くありませんよ、目暮警部」と新一が話に入る。

「だって、その人は犯人じゃないんですから」
「な!?」
「言ったはずですよ。犯行時刻、殺人現場であるトイレに行ったのは、その人を除く後ろの四人だけと…」
「だがそれは、君が寝ぼけていて見逃したかもしれんだろ?」

新一は「必要なら法廷ではっきり証言しましょうか?現場に行っていないその人の、犯行の可能性はどう考えてもゼロだってね!」と自信満々に言った。

「おいおい…」
「ほォー、こりゃあありがたいねぇ。ガキでも証人は証人だ。しっかり頼むぜボウヤ…なんたって俺は事件とは無関係なんだから」
「無関係ではないんですよね」

名前がそう言うと「え?」と目暮と鷺沼が反応する。

「あなたはまんまと利用されたんだ。その四人の中で唯一、偽りの証言をしている犯人にね」
「気づかない内にまんまとやられちゃったんです」
「あんだと?」



>> dream top <<