02

「今日は新一君と蘭ちゃんがトロピカルランドでデートの日だ〜」

名前は鼻歌を歌いながら資料の整理をしていた。

「今頃二人はラブラブデートで、付き合っちゃったりして〜!」

一人でテンションが上がっていると「苗字君!事件だ!」と目暮に呼ばれた。

「事件ですか?」
「ああ。トロピカルランドという最近新しくできた遊園地で、殺人事件だそうだ!」
「ト、トロピカルランド…?」

名前は嫌な予感がした。



トロピカルランドに着くと、通報した遊園地のスタッフが現場に案内をした。
場所は、怪奇と幻想の島にある人気のアトラクションのミステリーコースター。
中は人で溢れており、なかなか中に入る事ができない。

「す、すみませーん!通してください!」
「どけどけ!警察だ!」
「目暮警部、あっちです!」

ようやくジェットコースターの乗り場まで来ると、そこには名前の思っていた通り、新一と蘭、そして同じコースターに乗っていた女性三人と全身黒い服を着た二人の男性、そして殺された首のない男性の死体が床に寝かされていた。

「おー、工藤君じゃないか!」
「あ、目暮警部!それに名前刑事も」
「何、工藤!?」

目暮が新一の名前を呼ぶと、全身黒い服を着た男の一人、サングラスをかけた男が驚いたように新一の名前を復唱する。

「おお!あれが有名な高校生探偵、工藤新一か!」
「迷宮入りの難事件を、次々と解決してるっていう」
「日本警察の救世主!!」
「ちょっと来て来て!工藤君よ、工藤君!」
「お手並拝見させてもらおうぜ!」

そこにいるのが新一だと分かった瞬間、周りの客達が騒ぎ出した。

「新一君、すごい人気だ」
「いや〜」

新一は嬉しそうな顔をする。

「それにしても、残念だったね。せっかくのデート「うわあああ!!名前刑事、ストップ!」

名前が言い切る前に、新一が名前を制止する。

「こんなところで言わないでくださいよ!」
「ご、ごめんね」

焦っている新一の姿を見て、名前はニヤニヤしながら謝った。

「それじゃあ工藤君、我々に今回の事件の事を説明してくれんかね」
「分かりました」

新一は、用意してもらった紙とペンに座っていた順番を書き出した。

「今回、ジェットコースターそのものには事故や故障の痕跡がありません。そして状況から考えて、まずこんな場所で自殺をする人はいないのでそれもなし。これは明らかに殺人です!」
「なるほど…」
「君と蘭君はとりあえず除外して考えると、容疑者は五人!」

ジェットコースターは4列2席の8人乗り。

「一列目に乗っていた被害者の友人の礼子さん、同じく友人のひとみさん」
「その後ろ、二列目には新一君と蘭ちゃん」
「そして、被害者と同じ三列目に乗っていた被害者の友人であり恋人でもある愛子さん…。そして、被害者の後ろに乗っていた黒ずくめの男DとE…」

名前は「ジェットコースターの故障がないのなら、全員セーフティーガードをしていて身動きがとれないですね。そうなると、一番怪しいのは隣に座っていた愛子さんですが…」と言う。

「おい、早くしてくれ!」

名前、目暮、そして新一が話をしていると、全身黒い服を着たもう片方の長髪の男性が話しかけてきた。

「俺達ゃ、探偵ゴッコに付き合ってる暇なんかないんだぜ…」
「ア、兄貴…」
「!?」

容疑者の持ち物を調べている別の警察官が「警部!!この女性のバッグからこんな物が!!」と叫んだ。

「う、うそ…」

愛子のバッグには血だらけになった包丁が布に包まれて入っていた。

「私知らないわよ!こんな物!!」
「…」
「包丁…?」

その包丁を見て、名前と新一は違和感を覚えた。

「あ、愛子…。なんでそんな事しちゃったのよ…」
「!?」
「ち、ちがう!私じゃない!!」

ひとみが「岸田君とはうまくいってたと思ってたのに…なんで…」と問いかける。

「おらおら、犯人はそのアマで決まりだ!!早く俺達を帰してくれよ、刑事さんよ!!」
「なーんだ…思ったより簡単に犯人が見つかったわね」
「俺もあの音がクサイと思ってたぜ…」
「恋人同士のケンカが原因かー…女は怖いねー」

目暮は「よーし、その女性を容疑者として連れて行け!!」と警察官に指示を出す。

「目暮警部、ちょっと待ってください…」
「ん?」
「さすがにこんな包丁では、人間の首を切断するのは難しいと思います。一思いに斬るには相当な力が要りますし、走行中のジェットコースターですよ?」
「う、うむ…」
「岸田さんに抵抗した形跡が全くないのも違和感です。普通、首を斬られそうになっていたら抵抗しませんか?」
「し、しかしそうなると…」

目暮は名前の話を聞いて「なぜ彼女のバッグに包丁が?」と聞いた。

「…もしかしたら、誰か別の人間が愛子さんに罪を着せる為に入れたのかもしれません」
「何ィ!?」
「名前刑事の言う通りですよ、目暮警部。犯人はその人じゃありません」

名前に続いて新一もそう言った。

「犯人は…あなただ!!」

そう言って新一が指をさしたのは、ひとみだった。

「な!?何言ってるのよ、愛子のバッグから刃物が出てきたのを見たでしょ!?」

ひとみの反論に「先程名前刑事も言っていましたが、あんな物で人間の首は切断できませんよ。特に、女性の力ではね」と新一が答える。

「それに、もし彼女が犯人なら、凶器を捨てるチャンスはいくらでもあったはずだ!わざわざ布に包んでバッグの中に隠す必要はないですよ」
「た、たしかに…」
「このジェットコースターは、トンネルもありますからね。真っ暗になるので誰にも気づかれずに捨てられます」

新一は「あれは、あなたがあらかじめあの人のバッグに入れてた物じゃないんですか?」と聞いた。

「バ、バカな事言わないで!!私の乗ってた席は、死んだ岸田君の前の前よ!どーやって首が斬れるっていうの?」

ひとみと岸田の間には、新一が座っていた。

「だいいち、あなた達が今言ったじゃない!女の力じゃできないって…」
「私は、包丁で首を斬るのは無理だって言ったんですよ」
「え?」
「そうです。コースターのスピードとピアノ線か綱鉄の輪を利用すれば可能だ!」
「!?」

新一の言葉に、ひとみは何も答えなかった。

「目暮警部、名前刑事、それに後五人、警察の方達に手伝ってもらいたいんですが」
「何をすればいいの?」

新一は停まっているコースターを指さすと「先ほどの事件と同じように、コースターに乗ってください」と頼んだ。

「目暮警部が殺された岸田さんの場所に座ってください。名前刑事はボクの隣に」
「分かった。後は空いている席に乗ってくれ」

全員がコースターに乗り込むと「いいですかみなさん。ボクが犯人で警部が被害者ですよ」と新一が周囲に向けて言う。

「うむ…」
「まず、セーフティーガードをおろす前に、バッグのようなものを背中にはさみ、ガードをおろす」
「あ!すき間ができたね」
「そうなんです。すき間ができる事で、簡単に抜けられるんです」

新一は名前のセーフティーガードを掴んで引っ張ると「だけど、名前刑事の方はしっかりとセーフティーガードがかかっています」と言った。

「本当だ」
「次に、あらかじめ用意しておいた、輪にフックのような器具を取り付けた物を取り出し、ガードに足をかけ、体を後ろに伸ばし被害者の首にける」

そう言うと、新一は後ろの後ろの席に座っている目暮の首にロープで作った輪の部分をかける。

「もちろん真っ暗なトンネルの中でね。仕上げに、輪の先に付いてるフックをレールにひっかけ、後はコースターのスピードとパワーが首をふっとばしてくれるってわけですよ」
「う、うわー…」
「で、でたらめよ!何を証拠に!?」

ひとみが新一に詰め寄ると「では、お聞きしますが、乗る前にあなたがつけてた真珠のネックレス、いったいどこへいったんですか?」と聞いた。

「ネックレス?」
「はい。乗る前にはついていたはずのネックレスが消えています。おそらく、あなたはネックレスのヒモをピアノ線に変え、それに取り付けたフックはバッグの中に隠していた」
「そうすれば誰にも気づかれずに凶器を持ち歩けるって事か」
「そうです。さらに、彼女は体操をやっている。他の女性ならともかく、バランス感覚の鍛えられたあなたなら、コースターの上でもこれくらいの事はできる」

新一がそう言うと、礼子が「ちょっといい加減にしてよ!!」と口をはさむ。

「じゃあ、あの二人はどーなのよ?同じ手口なら後ろにいたあの人達の方が簡単にできるんじゃない?」

そう言うと、全身黒ずくめの男性二人組を指さした。

「あの二人はいかにも怪しいがシロだ!何者かは知らないが、警察が来た途端にあんなにオロオロするのは変だ。もし犯人なら、こうなる事は分かっていたはずですからね」

新一はジェットコースターに乗っていた時の事を思い出す。

「そう、犯人は被害者が死ぬのを知っていたんですよ…。だから殺す前に涙を流した」
「!?」
「トンネルを出て被害者が死んだと分かってからここに着くまでおよそ2、3秒…。つまり、乗っているうちに大粒の涙を流せるのは犯人以外にない…」
「じゃあ、あんたひとみがコースターの上で泣いてるのを見たっていうの?それが証明できる!?」

礼子に聞かれた新一は「彼女の涙の跡が動かぬ証拠だ。ジェットコースターにでも乗っていないかぎり、涙は横には流れないんですよ」と答えた。

「み、みんな…みんなあの人が悪いのよー!!あの人が私を捨てるから!」
「ひ、ひとみ…。あなた岸田君と付き合っていたの…?」
「そうよ!!大学であなた達に会うずーっと前から、私たちは愛し合っていたわよ!!それを愛子に…こんな女にのりかえるから…」

そう言うとひとみは愛子の事を睨む。

「だから、だから…あの人にもらったネックレスで…愛子に罪をかぶせて殺してやりたかったのよー!!」

ひとみは犯行を認め、警察署に連行されていった。

「新一君の推理が正しければ、真珠のネックレスがトンネルの中に落ちているはずです」
「うむ。何名かでトンネル内を捜索!」

2時間後、犯行に使われたネックレスがトンネル内から発見された。



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