※女性Pが出てくるし夢っぽい
明日世界が終わると聞かされて星井美希が思ったことは、「そういうことはもっと早く言ってくれてもよかったのになあ」だった。美希は自分のことを比較的諦めの良いタイプだと思ってはいたが、もう皆と会えなくなるとなったら、お別れを言いに行きたい人数はどう考えても両手では足りない。
あるいは、おそらくは各国の要人が秘密裏に実行を決めたのであろう、この「宣告」がもしなかったのなら、美希だって他の皆だって、何も分からず消えていけたに違いないのだ。けれど知ってしまった以上、美希は美希の大切な人たちのことを放っておくことなどできなかったし、美希の大切なものに一つ残らず別れを告げるには、一日という時間は短すぎたのだった。
行ってきますと言い残し、半ば逃げ出すように自宅を出て、通い慣れた事務所までの道はそれでもどうしたっていつもと違って、そうして開いたドアの先では、プロデューサーが一人でただ淡々と掃除をしていた。「は、ハニー……」ぽろりと口からいつもの呼び名がこぼれ出る。……プロデューサーのことが大好きだからプロデューサーはミキのハニーで、それは今日だって変わらないのに、どうしてかひどくこの場に不似合いなような気がした。
「美希……」
プロデューサーはともすれば無感動にも見える表情で、「やっぱり来たのね。座ってて、今お茶を淹れるから」と言った。
「みんなは来るかな」
あたたかいお茶の入ったマグカップは、美希の冷えた手に温もりを与えた。けれど心はぞわぞわと、冷たい風に枯葉のうごめくような心地で、美希を安心させる気は毛頭ないようだった。
「どうでしょうね」
プロデューサーの声はいつになく単調だ。きっと彼女も、美希と同じような気持ちで美希とお揃いのマグカップを握っている。
「……プロデューサーは……ミキが来るって思ってたの?」
美希は枯葉色の水面にゆらゆらと揺れる、蛍光灯の白い線を見つめながら細い声で問いかけた。向かいに座るスーツ姿の彼女は、それには答えない。
ただ、綺麗に磨かれた窓の外の、変わりゆく街の様子をぼんやりと見つめながら、「一人じゃなくて良かった」とだけ言った。