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「自分、アイドルになるんだ」
放課後の学校、2人きりの教室でその言葉を聞いたのが随分と昔のように思える。あの時、引き止めておけばよかった。好きだって言っておけばよかった。
響はやさしいから、こっちが悲しくなるくらいにやさしい女の子だから、もしかしたら私のためにこの島に残ってくれたかもしれないのに。
中学で知り合ってから初めて響が送ってきた手紙には、765プロのライブチケットが入っていた。大きな会場で公演が出来るようになったんだ。そんなものいらないのに。私は響に私だけのアイドルでいて欲しかっただけなのに。
久しぶり、この前響の出てるCMがこっちでも流れたよ。あのスポドリのやつ。チケットもありがとう。もちろん行くよ。アイドルのライブに行くのは初めてだから緊張するけど、実はサイリウムは買ってあるんだよ。ちゃんと響の色も出るやつです。ステージの上でキラキラしてる響を見るのを、楽しみにしています。
引き出しから取り出したレターセットにそこまで書いて、壁に飾ってあるサイリウムを見て、そこでもうだめだった。視界がぼやけて、目頭がじんじん熱い。本当はこんなステージなんか見たくない。みんなに向けて歌う歌なんて聞きたくないのだ。あの日、夕陽のさす教室で私だけのために歌ってくれた歌が、今でも私の心にこびりついて離れない。