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 リョーマが自分の誕生日に対してどんな感情を抱いているのか私は知らないけれど、とりあえず私の真隣に座っているリョーマの横顔はそれなりに楽しそうであった。
「クリスマスと誕生日が一緒だと、なんだか楽しいことがいっぺんに来る感じがして良いね」
 うっかり呑気が発動した私が、考えなしにそんなことを言うと、リョーマは「よく言われる」と、この寒いのに缶ジュースを一口飲んだ。ファンタのグレープ。私からリョーマへのクリスマスプレゼントで、十分前にそこの自動販売機で買ってそのまま渡したものである。
「あ、ごめん、そうだよね」二つ用意すべきプレゼントの片方を完全に失念していた負い目があるので、私はいつもより低姿勢だった。リョーマもそれを感じ取っているのか、「別にいいよ。よく言われるのはホントだけど、アンタの言ったのはポジティブな方だし」と私を横目に見ながらフォローを入れてくる。リョーマが気を遣っている! 本日の主役なのに! というか何より、リョーマなのに! 
「今思うと、こんなに街がクリスマスムードなのに、どうして忘れちゃってたんだろう」
 私の半分愚痴じみた呟きに、リョーマは膝に抱えたシルバーの包みのラッピングリボンを弄りながら、「それってわざと言ってる?」と呆れ顔をしてみせた。