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「こういうロボットって、人間が作ってるから人間の形に合わせてるけど、もしタコとかが作ったら足が8本あったりとかするのかなあ」
「なんだよ急に」
「いやあ、冬馬くんコレクションのフィギュアたちを見ていたらなんとなく?」

 冬馬くんは棚に置かれた自慢のぴかぴかでかっこいいフィギュアたちを一瞥した。

「……8本もあったら操縦とか……そもそも作るのとか、色々大変なんじゃねえの」

 本当になんとなく、ぼーっとしながら呟いたことだったので、まともな返事が返ってきて少し驚いた。まあ、たしかに。

「操縦は……でも、もともと8本足なわけだから、意外とあんまり苦じゃないかもよ。作るのはめちゃくちゃ大変そうだけど」
「ああ……まあ、元から8本動かすのに慣れてれば、あとは操縦しやすければ何とかなる……のか?」

 冬馬くんも今日はなんだかぼんやりぎみだ。すっかり気の抜けた表情がこの変なテンションに刺さったのか、なんだかやけにおかしく思えてしまって、私は思わず吹き出しそうになるのを慌てて堪えた。冬馬くんのスイッチを入れてしまいたくなかったからだ。こういう時の冬馬くんは何かきっかけがあるとすぐいつもの調子に戻ってしまう。
 今はまだこのまま、ふたりでぼんやりしていたかったから。私は「コックピットに乗り込むタコかぁ……」などと、意味のない会話を続けることにした。