夜中、自室のベッドでふと目を覚ますと、隣に見慣れた金髪が見えた。カーテンの隙間からさす月明かりに寝顔が照らされている。……案の定金髪の主は伊集院北斗だった。
微かな寝息をたててこんこんと眠り続ける北斗を寝ぼけ眼でちらと見やる。私が床についた時にはいなかったから、深夜に合鍵を使って私のベッドに入ってきたのだろう。

(狭い……)

1度目が覚めてしまうと気になり出すのはベッドの狭さである。私と北斗は別に同居しているわけではないので、当然ベッドもシングルサイズだ。大の大人2人が一緒に眠るにはどう考えてもスペースが足りなさすぎる。

さて、どうしたものかな、と天井を見上げて考える。見た感じこのまま北斗は朝まで眠り続けるだろうから、こっそり抜け出してもバレないだろうか。いや、寝起きの北斗はかなり甘えたになるから、うっかり起こしてしまうと拗ねるかな。そうなると長いし、このまま寝かせておいてあげたいから、危険を冒すのはやめておくべきかも。
しかしこのままの状態で私が寝なおすと、十中八九朝までに私か北斗が床に叩き落とされているだろうから、ここはひとまずベッドから出ることにしよう。そう決めてもぞりと布団から這い出る。そっと乱れた布団を北斗に掛け直して、起きる気配がないのを確認してちょっと安心した。

時計を見ると時刻は午前3時だ。さすがにこれはソファの方で一度寝直すべきだろう。その前に北斗のものであろう散らばったコートやらカバンやらを片付けてあげることにして、空いているハンガーに荷物を掛ける作業に取り掛かった。
しんとした部屋でもくもくと服を拾い集めつつ、それにしても北斗がここまで勢いよく荷物を投げ出すのは珍しいな、などと考える。よほど眠かったのか、それともやけになっていたのか。帰りが深夜になるくらいだからいずれにせよお疲れなのは間違いないので、ちょっと早く起きて朝ごはんは私が作ってあげようと密かに心に決める。

裏返ったままの靴下を洗濯カゴに放り込んで、最後に、ベッド脇のサイドテーブルにたたむことすらせずに置かれた、変装用であろう眼鏡をそっとたたんで落ちないように置き直す。北斗の方を見ると若干眉間にしわがよっている。一体どんな夢を見ているんだか。普段あまり見ない顔なのがちょっと面白く感じて、眉間を指でふにふにと押すと、「んん……」と若干不機嫌そうな声を漏らして寝返りを打った。なんだかかわいい。いつもはとても紳士で気遣いができるいい男!という感じだから、こういう反応をされると途端にこの男のことが愛おしく感じてしまって、よしよし、とセットの崩れた髪の毛をかき混ぜてみる。

明日は休みが取れたと言っていた。もし北斗が元気になっていたら一緒に外に出かけるのもいいし、そうでなければ家で映画を観たりするのもいい。なんにせよふたりならなんだって楽しいだろう。

「おやすみ、北斗」

紳士的でキザで実はすごい頑張り屋で、時々甘えたがりなかわいい彼氏の頭をもう一度だけ撫でてから、私は客人用の布団とソファで再び眠りについた。





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