※書きかけをむりやり終わらせた感じの文/FGO時空
カルナがわたしのところに来たのは、まだわたしがオルレアンを旅していた頃の話である。
「サーヴァント、ランサー。真名、カルナという」
その若干威圧感のあるビジュアルに呆気に取られる、というか気圧されるわたしをよそに、よろしく頼む、と彼は頭を下げた。
それから、先に召喚に応じていたラーマと弓の腕を競ったり(ダ・ヴィンチちゃんが教えてくれたのだが、カルナには他にアーチャーとライダーのクラス適性があるらしい)、タマモキャットの作った料理を一緒に食べたり。仲は中々良好だったように思う。
それからずっとわたしについて来てくれたわたしのランサー。みんなもきっとそれを分かっていて、だから聖杯を彼に捧げようと思う、とダ・ヴィンチちゃんに話すと、彼女はにっこり笑って「それじゃあ準備をしなきゃだね。待ってるから、彼を連れて来なさい」とわたしを工房から送り出した。
「カルナ」
カルナは目立つ。個性的なファッション(ファッション……?)の英霊が多い中でもダントツの見分けやすさだと思う。あの赤いふわふわはなんなんだろう、この間触らせてもらったらやけに指通りが良いくせに温かいわたあめみたいな感じだった。
再臨を終えたからあのふわふわも随分なりを潜めているが、そうしたら次は謎の羽っぽい部品がつくのだからもう意味がわからない。でもあれはカッコいいと思う。キュピン!という音を立てて展開していく羽はわたしの中の中学二年生を目覚めさせた。
「マスターか。どうした」
足を止め、振り返るカルナ。最近彼が微笑を浮かべる機会が多くなったような気がする。彼のことだからきっと、なにか嬉しいことが増えたんだろうな、そうだといいな。そう思いながら口を開く。
「うん。あのね、カルナさんに用があって…………」
そこで少しいいよどむ。どう伝えるべきだろうか。厳重に保管されている、今までのレイシフトで入手してきた聖杯たちを思い起こす。
「わたし、カルナさんに聖杯をあげたいの」
カルナはその瞳をわずかに見開いて、「オレにか」と言った。
「うん。カルナが、良ければだけど……わたしは、あなたにあげたいって思ってる」
「そうか……そうか」
カルナはしみじみとそう呟くと、顔をしゃんとあげて「承知した。マスター、その信頼に応えよう」と微笑んだ。
「よかった……」
思わずほっとして声が漏れてしまった。カルナはきょとんとした顔でこちらを見ている。
「いや……あのね、ちょっと緊張っていうか……不安だったから」
「不安」
カルナが何がだ、と言いたげな顔で小首を傾げる。ああ、杞憂だったな。
「うん、断られちゃったりしたらどうしようって、実はちょっと思ってた」
「そうだったのか。……マスター」
「?」
「オレはお前の槍だ。故に、オレがお前に逆らうことはない」
毅然とした表情できっぱりと言い切ったカルナは、しかしその後眉間に少ししわをよせて考えこむそぶりを見せる。どうしたんだろう、と心配になると、カルナはそんな私を制して話し始めた。
「いや……すまない。恐らくオレは、また一言足りていない。……オレは……契約の続く限り、お前と共にあるサーヴァントだが、それだけではなく……オレは、今までの旅路を共にしたお前を信頼している。だから、他でも無いお前がオレにすることなら、どんなことでも受け入れたい」
……伝わっただろうか、とその精悍な顔つきに若干の不安を浮かべながら、カルナは言う。
「うん。伝わったよ。……ありがとう、カルナ」
微笑みを浮かべるカルナを見上げて、ずるいなあ、と思う。カルナの精神はどこまでも英雄的だから、私はそれを見せつけられるたびにあまりに眩しくて目を覆ってしまいたくなる。太陽を直接見たら失明してしまう。そんな、ある種の恐ろしさを私が感じてしまうのだ。でも、それはできない。なぜなら私はカルナのマスターだから。
「じゃあ、今日夕食が済んだらダ・ヴィンチちゃんのところに集合ね」
「承知した。それではマスター、また」
「うん。またね」
笑って手を振って、人にはあまりに輝かしすぎる英雄を見送った。その後ろ姿が曲がり角を曲がって見えなくなってから、私は自室の方へと歩き出した。