悩みに悩んだ末、私は観月さんにチョコ（というかガトーショコラ）を贈ることにした。……もちろん義理だ。ラッピングもマネージャーのみんなにあげるものと変わらない。でも、両方に渡すというのもなんだか逆に話がこじれそうだし、義理ならいつも不二先輩を抑えていてくれる観月さんに渡すべきかなあと思ったのだ。もちろん不二先輩にも別の形で何かあげるつもりだ。

「というわけなんですが、もしよかったら……」

　そのようなことを念押しした上で、小さな袋を渡す。

　観月さんはそれを受け取って、「今はそれでもかまいません」と言った。目を伏せるようにして、手に持った私のガトーショコラを見つめている。

「……あなたがボクのために用意してくれたというだけで、泣いてしまいそうなくらい嬉しいですから」
「……」

　何も言えない私に、観月さんは「すみません、困らせてしまいましたね」と苦笑する。いつものようにそこで切り上げようとして、できなかったのだろう。私をあの時の目で見つめながら、自分でも無自覚なような表情で、「でも……」と、小さくつぶやくように言う。

「でも、ああ、満谷さん……どうかいつかボクを選んで。ボクのものになってください」