悩みに悩んだが、結局これが一番無難な気がする。私は不二先輩と観月さん、両方にチョコ(というかガトーショコラ)を贈ることにした。

 マネージャーのみんなとのチョコ交換会が終わり、残りふたつになったガトーショコラを紙袋に入れてうろうろしていると、ちょうど二人一緒に立ち話をしているところを見つけた。立ち話というか、これは……嫌味を言い合っている気がするけど。まあこの二人にとってこの程度は立ち話の範疇だろう。私はそっと二人に歩み寄る。と、向いている方向的にそれにいち早く気づいた観月さんがぱっと笑って、「満谷さん!」と手を振ってきた。

「晴ちゃん」

 不二先輩も振り返る。「大丈夫?観月、追い払おうか?」

 ……王子様みたいな笑顔のまま言うことではない。観月さんは「ハァ!?」と目を見開いた後、少しの間私から目を逸らして、「なんでそんな自信満々なんだ……」と小さくぼやいている。

「い、いや、あの……、実はですね」

 紙袋の一番上に持ってきておいたラッピングの袋を取り出す。袋が二つ出てきたのを見て、二人は目を瞬かせた。

「あの、すみません、選べなくて……!」

 もしかしたらよくなかったかもしれない。急に不安になって、視線を合わせられなくて少しだけ下を向く。少しの間の後に、不二先輩の「なるほどね」という声が聞こえてきた。

「え?」

「選べないから二人ともなんて、晴ちゃんは欲張りだね。でもそんなところも優しくてかわいくて大好きだよ」
「え?」
「不二くんも、というのが少々気に入りませんが……いいでしょう。満谷さん、晴さんとお呼びしても?せっかく恋人になるのですから、その印として……」
「え?」
「観月、これからのためにも取り決めをしておかないとね。毎回晴ちゃんの前で揉めるのもかっこ悪いし、何より晴ちゃんに迷惑だから」
「そうですね。こうなった以上、二人で晴さんのことを大切にしなくては」
「は!?」

 二人は得心が行ったようにうんうん頷いて、しかも謎の連携を発揮し、私を置いてけぼりにして勝手に話を進めている。

 なんでそうなるの?取り決めって何?観月さん急に強引じゃない?ていうか二人とも仲悪いんじゃないの!?ねえ!?

 あまりに多くの言いたいことがありすぎて口をはくはくさせている私に、二人は優しく微笑んで、——それから、とても文面にできないような、甘すぎるセリフを言った。





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