お風呂に入って色々考えたが、まぁ特に何も浮かんでこなかった。というか、状況を飲み込むので精いっぱいである。これからどうしようとかそういうことよりも、まず何故ああなってしまったのかという方が気になってしょうがない。そして仕事の疲れも溜まっていたせいか少しうとうとしてしまった。これはやばいと思いお風呂からあがる事にした。お風呂からあがり部屋着に着替えてリビングに行った時だった。





「ひっ…」





思わず声を上げてしまった。だって…だってそこにいたのは上半身だけ裸になった光がベッドで寝転んでいたからだ…。




「な、何やってるの!」
「あ、名前さんお風呂でたん?俺もう眠くなってきたんやけど」
「なんでシャツ脱いでんの…」
「なんか邪魔やったんで」




なんて言うかもう目の毒って感じで光の方を直視できないでいる。確かにいつも光は私のベッドの上にいる。普段はうろちょろしてはいるけど、眠くなったり休んだりする時は決まって私のベッドに居座る。だからと言って今、この状態の光が私のベッドに横たわってるのにはかなりの問題があると思う。



「そこ。どきなさい」
「なんで?」
「なんでも」
「やだ」



断固としてどかない光。大きな欠伸をする始末。



「はあ。もういい」



まさか光がここまでわがままな猫だったとは。私そんなに甘やかして育ててたのかな…。









困った。光がベッドで寝てしまったので私の寝る場所がなくなった。欠伸をしていた光はそのあと知らぬ間に眠りに落ちていた。私はテレビをつけながらソファに膝を抱えるように体育座りをしていた。チラッと横目でベッドを見ればすやすやと気持ちよさそうに寝る光。はあ、なんてため息のでる私の気持ちなんて知ったこっちゃないという感じで。これからどうしようとはこの子は思わないんだろうか。全く気にする様子もなくこの状態でいる。マイペースな所は猫の姿の時から変わらない。ここまでこの子が気にしていないと、すごい考えこんでいる自分が馬鹿らしく思えてきてしまった。事件だという事に変わりはないのだけどだんだん何とかなるんじゃないかとまで思えてきてしまった。とりあえず友達には連絡は入れることにして、今日は大人しく寝る事にしよう。

深夜のバラエティ番組をぼーっとみながらそんな事を考えていた。このままソファで寝てしまおう。少しずつうつろうつろしてきた。瞼が下がりかけていて眠りにすぐ落ちてしまいそうな時だった。そんな簡単に寝かしてくれない何故か。




「名前さーん」
「っ…っな、何」



急に目の前に光が現れて心臓が飛び出るかと思った。さっきまで私のベッドを堂々と使っていたのに、全然起きた気配を感じられなかった。



「まだ寝てないん?」
「ひ、光!ちょ…」



ソファに座っていた私の目の前に来たかと思ったら急に視界がぐるんと変わった。目の前には人間の姿の光の顔がある。バランスを崩した私は片足だけソファから落ちなんとも間抜けな格好になっている。



「まだ寝てないって誰かさんがベッドにいなければ私はとっくに寝てるのよ」
「せやったら一緒に寝たらええやんか」
「っ…ふ?!」




一瞬何が起きたのか分からなかった。何を言い出すのかと思ったその瞬間に光は私の鼻を舐めてきたのだ。あまりにも想定外の事をされたので思わず変な声が出てしまった。



「な…」
「何するの?って?いつもしてますやん?顔舐めるくらい」



にっこり笑ってとんでもない事を言い出した光。たしかにそれはある、しかしあくまでも猫の時の姿でされていたのであって人間の状態の光にされるのとは訳が違う。



「せやから別にええやん?」
「ん…や、やめっ…」



鼻を舐めるだけでなくそのまま、おでこ、頬と舐めていき耳に、首元にまで舌が這って来た。そして項を舐めまた耳を舐めだした。耳元で水っぽい音が鳴る度に顔に熱が集まっていくのが分かる。耳の中に舌が入って来た瞬間ビクッと体が動いてしまい、それを面白がるかの様に執拗に舐めてくる。耳たぶを甘噛みされ耳の裏まで舌が這う。いつも猫の光が舐めてくるように可愛いものではなくてねっとりとして遊ぶように動く舌。抵抗しようにも体の力が抜けてしまって、光を押しのける事すらできない。



「ひ、か…っん…やめ、て」
「えー、いやや」
「ちょ、しゃべ…っちゃっ」



必死に抵抗しようにも拒む光。耳元で喋るものだから濡れていた耳に吐息がかかりヒヤッとした。さっきまで耳を這っていた舌は事もあろうに首にまで移動していた。



「…っ?!」



首に痛みが走った。なんと光は首元を噛んだのだ。カプッなんて可愛いものではなく、ガブッと噛まれた。絶対歯型が残るであろう。



「こ、ら!何すんの!」
「噛んだだけ。それとも舐めた方がよかったん?」
「……」



上半身裸の身体を起こしながらそう言ってきた。人間になった姿は私なんかより全然大きくてなんの可愛げもない。まずこの行動自体なんの可愛さの欠片もないのだから。

耳へのいたずらから解放された私はさっきよりは力が入るようになり、光の身体を押しやった。



「…か、飼い主に何してんの」
「飼い主?名前さんは名前さんやん?」
「……」



なんて返していいか分からなかった…。熱が集まって赤くなった顔のまま光の目をずっと見てしまった。その途端また光の顔が近づいてきた。



「ひ、光!」
「なん?」



気にしないと言わんばかりにどんどん近づいてくる顔。こうなったらもう最終手段を使うしかない。効くかは分からないけど。




「光!嫌いになるよ!」
「!」



よし。動きがピタッと止まった。目をまん丸くして私の顔を見つめる光。と思ったら急にシュン…としだした。



「それはいやや…」


可愛い、な、なんて、おも、ってないからね?!…このままやられ続けても飼い主の威厳が丸潰れである。

目が覚めた事もありちゃんとベッドで眠り直す事にした。



140209
勝ち気なエリオット