イライラしすぎてどうやってお店まで来たか覚えてない。でもきっと1番近い店ではあると思う…けど。あんな奴の為に…あんな奴の為にあれこれ考えて仕事するのは物凄い癪に触るし面倒くさい。でも仕事だから…仕方ないの、そう自分に言い聞かせながら食材をどんどんカゴに放り込んでいく。

初めての長期派遣先がコレって中々の仕打ちじゃない?所詮雇われの身だから顧客の事をどうこう言う権利はないにしても、私にだって不満の一つや二つ言う権利くらいはあるでしょ。
あぁもうやだやだ。愚痴しか浮かんで来なくて自分がどんどん嫌な奴になってる気がする。それだけはやだ。もうしょうがない、そう割り切ればいい話。ササッとやる事だけやってればいい。


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「……え?」
「何回も言わせんな、いらねぇって言ってんだよ」


翌日の夜、前日に買ってあった食材で夕食を用意した。勿論この男1人分だ。

なのに、だ。

「腹減ってねぇんだよ」
「……すみません」

欠伸をしながら寝室であろう部屋に入っていった。
取り残されたのは私と私が作った夕飯だけ。

なに、なんなの?あんた散々リビングで私が料理してた音聞いてたよね?なんでそん時言わないの?心底性格の悪さにうんざりした。

美味しい美味しくないかは別として折角作った料理を捨てるなんてそんな勿体ないこと出来なくて。食べ物を粗末にするなとはよく言われたものだ。
しばし眺めてからモヤモヤした気持ちのままキッチンまで下げた。
途轍もなく悲しい気持ちになる。しかし悲しんだところでどうにもならないし、後片付けもしなくてはならない。

「ん、食べようかな…」

誰もいなくなった部屋で1人自分の作った料理を黙々と食べた。


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翌朝、再びあの忌まわしい男の家に来ていた。昨夜はあの後家主に挨拶もしないまま後片付けをしてそのまま帰った。顔も見たくなかったしね。
なんでまた来てるかというと仕事だから。ほんと、理由はそれしかない。仕事じゃなかったらあんな奴の相手してるかよ、と。
朝は朝で朝食の用意をしないといけないらしいのだが、

「遅ぇんだよ」
「……申し訳ありません」

どうせ寝てんだろ、と勝手に思ってそこまで早くは行かなかった私。かと言って言うほど遅くなったわけでもない。朝の7時。
そしたらこれだ。ドアを開けて家に入ればテレビのついた部屋からこちらを睨むように見遣り開口一番さっきのセリフ。

「腹減ったままサークル出ろって言いてぇのか?」
「…さ、サークルですか」
「テニスサークルに決まってんだろ、大会近ぇから朝練あんだよ」

いや、知らないから。あんたの大学生活事情なんか知ったこっちゃない。そもそもお腹空いてるってあんたが昨日の夜夕飯食べなかったからでしょ。バカか。

とも言えず、

「すぐにお作りします」
「もういらねぇよ。間に合わねぇからな」

チッ、と舌打ちしてからテレビを消して出て行った。
ああ、そう言うこと。わざわざ直接文句を言いたかっただけか。ほんと性格捻くれてんな。
昨日の今日でもう一周回って可哀想とすら思える奴の言動に私も舌打ちをした。


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奴が大学に行っている間は部屋の片付けやら洗濯やらを任されているのだけれど…

「まあ、生活感のないこと」

引っ越したばかりで当たり前なのだが実家から運ばれて来たものが少ないのもある。寝室は勝手に入って良いものか迷ったが扉が全開な所を見るとそう神経質になる事もないのだろう。

一通りやる事を終えた時にふと、今日の夕飯はどうすべきかの疑問が浮かんだ。奴の考えてることは分からない故、また準備をしていていらないと言われた日には私の手間もそうだがなにより食べ物が勿体ない。そうは思えど朝の様に用意してないならしてないで何かと面倒臭そうではある。
よし、準備するだけしておいて、いらなかったら冷蔵庫に入れておいて下さい、とでもメモ書きしておけばいいだろう。そうしよう。
そう決めて夕飯のメニューを考え始めた。


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夜になり、家で奴の家に忘れ物をした事を思い出す。仕事で使っている手帳だ。別に見られて困る様な事が書いてあるわけでもないのだけど、手元にないとそわそわする、そんな感じ。
格段に遅い時間でもなかったし、ちょうど奴が夕飯を食べたか食べてないかの確認もできる時間である。最悪家に居なくてもカードキーがあるし、それを渡されてるんだからいつ家に入ろうと文句は言えなくない?と、まあ半ば開き直りも含みつつ家を出た。



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奴の家に着いたのはいいのだけど、驚いた事が。

「誰ですか」
「そりゃこっちの台詞やわ」

そこに居たのは奴ではなく、全く知らない別の人間だったからだ。



20180926

勝ち気なエリオット