
別の仕事をもらうと言ったものの。
「っー…」
朝感じた違和感はこれだったのか、知らない間に襲ってきた寒気と次第に感じる喉の痛み。咳込むたびに頭は鈍痛が走る。そんな時期でも無いのにこんな症状が出るなんて、どう考えてもウイルスとかではなく心因性のものだろう。いつからストレス耐性がなくなってたんだろうと、痛む喉を抑えながら歩く。
今日はそのまま上がらせてもらって帰りに寄った薬局で買った風邪薬と栄養剤を部屋のテーブルに置いて早々にベッドに潜り込んだ。
実家からはそう遠く無いが自立のため一人暮らしをしている身。こういう時に心細さがより一層増す。弱った時に会ってくれる彼氏もいないし、なんてそんな事を思えばさっきあいつに言われた事を思い出してイライラしてきたし、イライラすればする程頭が痛くなった。
「ほんと最悪…」
咳き込みながら寒気の伴う自分の体を抱きしめながら丸まった。
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知らない間に時間は経ってるもので起きれば外は暗くなっていた。薬を飲んだおかげで幾分か頭の痛さは無くなってるものの身体のダルさは相変わらず。
食欲はまるでなくて、でも何かしら栄養を取らなければこのまま治る気配もないだろうから無理矢理にでも何か食べようとベッドから出て冷蔵庫を漁る。しかしこういう時に限って体に優しそうなものはなくて。
動かない体に鞭打って外に出た。ぼーっとするのも気にしないふりをして近くのコンビニに足を運んだ。コンビニの喫煙所の前には数人の若者がたむろしていて甲高い笑い声が頭に響いた。その中に見慣れた顔がいてマスクの下の顔は引きつった。
「………」
「…こんばんは」
一瞬でも目があってしまった事に後悔しつつも怪訝そうにこちらを見るその目から自分の目をそらす事が出来ず思わず反応してしまった。知り合いなの?どうしたの?と不思議そうに私を見る女の子達に居たたまれなくなる。きらきらした彼女達に囲まれているのは言わずもがな例のお坊っちゃんだった。
私の挨拶に反応もしないままジッとこちらを見る視線に耐えれなくなり自動扉にすぐさま近寄る。すると中から出てきた人にぶつかりそうになった。
「お、すんません〜…あれ?お姉さんやん」
「忍足さん?…こんばんは」
「どないしたん…朝会うた時と声全然違うで」
マスクしてるのによく気付いたな。中から出来たのはなんと忍足さんだった。外にあいつがいるから不思議なことではないけど驚いた。
「ちょっと風邪気味だったみたいで…」
「ほんま?大丈夫なん?」
「薬飲んだんで大丈夫ですよ」
へらりと笑ってみせたが本当のところは結構しんどい。お大事にな、と労いの言葉をかけてもらった後はすぐに飲料のコーナーに足を運び買うものを買ってすぐに会計を済ませた。外に出るとまだたむろしていた跡部達に忍足さんも加わってより賑やかになっていた。そんなのには目もくれずさっさと帰ろうとすると、
「あ、お姉さん!跡部に言うといたから…ゆっくり休んでや?」
「え?」
「体調悪かったら明日も来れへんやろ?」
「……はい」
わざわざ跡部に言ってくれたみたいけど、今だけは忍足さんの優しさが心に刺さる…。なんせ朝のアレの後だ。あそこまでの啖呵切っておいて体調崩してるのはなんか居た堪れなかった。
こちらを見る跡部の目はなんとも表情が読めないものだった。忍足さんに別れを告げ足早に家に向かったのだった。
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「ん、…」
気付けば半日以上寝ていたみたいで、次に起きたのは翌日の昼だった。咳と喉の痛みは昨日よりは引いていたがまだ身体のだるさは残っていた。田中さんにもう1日だけ休みを貰う旨を伝えてもう少し大人しくしていようとまたベッドに入った。
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「はぁ…」
思わずため息が漏れてしまうのはもうこの家の前に来たら恒例の事で。熱も下がり身体もだいぶ楽になったまたその次の日。こんにちは、とまたやって来るのは仕事な訳で、嫌だと口に出てしまいながらもまた跡部の家に来ることになるのだ。
今日も朝一からやって来たのだが、珍しいことにテレビがついていて既に起きている様子だった。
「…おはようございます」
テレビを見たまま数秒返事が無かったが少ししてからゆっくりと振り返り気怠そうに私を見てきた。
「……なんだ、お前か」
「…急いで朝ご飯の支度しますね」
「忍足の野郎が心配してたぜ?はっ…馬鹿でも風邪はひくんだな?」
いつもの事のように聞き流しながらキッチンに向かい朝食の準備を始める私が面白く無かったのか舌打ちをしながらテレビに向き直った。
「風邪とか言ってサボってんじゃねぇよ、どーせ大した事ねぇんだろ」
小声で言うつもりもないのか私に聞こえる声でそんな事を言う跡部に、病み上がりでイライラしてたのだろうか、いやコイツにはいつもか。
思わず声を荒げてしまった。
「あのさぁ…!私だって人間だし風邪くらいひくし体調管理出来てないのは自分の責任だけど、仕事環境変わってその上派遣された先にアンタみたいな奴がいたらこっちだってストレス溜まるわ!」
もうそこから先はあんまり覚えてなくて無心で朝食用意してそのままマンションを出てしまった。珍しく呆然としてた跡部だけどそんなの知った事はない。
帰ってすぐさま田中さんの元に向かった。
181107
勝ち気なエリオット