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せっせとひたすら石を運ぶ。石と言っても小石ではない。寧ろこれは岩と言ってもいいんじゃないだろうか。
ことの発端はつい先ほど……――
「温泉!?」
「そう。ちょっとヘマしてバズーカ打ち上げちゃったんだけど、ほら!この間ひとみが迷子騒動起こしたあの林に落ちてさ」
源泉ぶち当てちゃった。
お風呂ゲットー!何て笑う目の前の友人に頭が痛む。
何がどうしたって?バズーカ?もうそこから理解できないよ……。
そうして折角掘り当てたもとい爆破した温泉を使わない手はないという事になり、現在手の空いている人達でお湯が流れ出ないように石で周りを囲っているらしい。
「源泉なんて熱いんじゃないの?」
「ところがどっこい!めちゃめちゃいい湯なんですねぇこれが」
ふふんと自慢げに言う里奈は、早速今日から使えるように急いで皆を手伝おうと私を呼びに来たらしかった。
―― そんなわけで絶賛露天風呂開拓中なのである。
湯船となる穴は爆破の衝撃でそこそこなサイズのクレーターができており、更にそのクレーターのすぐ横には天然の浅いくぼみが。
半身浴ぐらいはできるだろうそれも合わせて大人数人で入っても問題ない大きさだ。
後はお湯につかった時に泥が舞わないよう小石から少し大ぶりの石を順に敷き詰めれば完成だ。
「うん、結構いい感じ。これなら直ぐにでも入れるんじゃない?」
「だね。ひっさびさの湯船だぁぁぁ……!!はいはーい!うち一番風呂がいいでーーーす!!」
ザラザラと湯船に石を敷き詰め終えた里奈がビシッと手を上げながらそう言えば、周囲からは笑い声とともにブーイング。
勿論その表情から本気ではないことぐらいはわかる。皆優しいなぁ。
「仕方ねぇなぁ!まっ これを掘り当てたのはお前だからな。ここはお兄さん達が気を利かせて一番風呂を一人で楽しませてやるよ」
そう言ってぽすぽすと里奈の頭に手を置くお兄さんに里奈はポカンとしながら
「え、一人じゃないよ?ひとみと二人で入るんだけど」
そう言ってのけた。
折角のお風呂だし、皆も早く入りたいだろう。日々戦っているのだからその体をいち早く休めたいはず。
だから順番を早く回すために私と里奈が一緒に入ることに何の疑問もなかったし、ね?っと同意を求める里奈にそうだねと頷いた……ら、全力で止められた。
「待て待て待て、ちょっと待て!」
「はい?」
「いや、はい?じゃなくてだな!?なんでお前ら二人で入るんだ!?」
「……?逆になんでそんな反対されるのかがちょっとわかんないんですけど、何か問題ですかね?」
「問題しかない!!」
え?は?そういう?もしかして二人はそういう!?
なんてよくわからない慌て方をする周囲をよそに、里奈と二人で顔を見合わせる。
「はいはーい。じゃあ俺も一番風呂仲間がいいでーす」
そんな中空気を読んでか読まないでか挙手をしながらゆるく宣言した銀時に周囲の目が行くが、すぐに「坂田氏はだめでーす」と里奈が一刀する。
「えーーーなんでひとみはよくて俺がダメなのさ」
「何を馬鹿なことを……私と違って銀さんが……あ、なるほど」
贔屓だと文句を垂れる銀時に言葉を返そうとして そうか と納得する。
そう言えば最近当たり前になりすぎて忘れていたが、そう言えば私はここの人達に男だと勘違いをされているんだった。
そりゃ突然のナチュラル混浴発言に混乱するのも納得だ。
どうやら里奈もそのことに気付いたようで、ニヤニヤとまたよからぬことを考えてるような顔をしている。
「なるほどなるほど……おっけー。皆の者よく聞きたまえ!あれだ、うちとひとみは一緒に入る。つまり……わかるな?」
この瞬間、勘違いの加速が確定した。
いや、まあでも私達は何も嘘となることは言っていないから許される。うん。
だって、一緒に入る理由が恋人同士だからとかは一言も言っていない。知っている人からすれば同性同士だから一緒に入るというニュアンスで受け取れる。
……ここの人達は総じて性別間違いを起こしているので、おそらく前者でとらえているのだろうけれど。リア充滅べとか言ってるし。
* * * * *
「いやー、それにしてもそう言えばひとみが男だって設定なこと忘れてたよねー」
「本当にね。最近じゃそれが前提にありすぎてそういう設定ってこと忘れてたわ。慣れると皆私らの扱い雑だし」
かぽーん と効果音がつきそうな、久しぶりの湯船 しかも露天風呂を満喫しながら縁に腕を乗せて寛ぐ。
お湯を沸かしてかけ流したり、温めたタオルで体を拭いたりとしてきたものの、やはり全身温かいお湯につかるのは格別で冷え切った体が芯から温まるのを感じてほっと息をつける。
「この温泉の効果なのか、なんか肌がつるっつるしてるよね。ここに来てからの羽陽曲折を経てボロボロになってたのに」
パシャンと足を上げては下ろす子供のような事をしている里奈を横目に、自分の肌に目をやれば確かにするりと滑らかになっている気がする。
戦場を車で走り回る暴挙に出てからは一層肉体疲労も精神疲労も蓄積していたが……お風呂凄い。日本人って単純だ。
「んーっ 名残惜しいけどそろそろあがろっか。あんまりのんびりしてると皆に悪いし」
「そうだね。じゃあ私はさっさと車に避難して湯冷めしないうちに寝ちゃおうかな」
「なんで避難?」
「……あんな状態を残しておいて。私がこのまま混浴済ませたよーって戻っていって詰め寄られずにいられると思う?」
「なるほど把握。無理だわ。
じゃあ皆に風呂あいたよって伝えとくから先車行って寝ちゃってていいよー。うちはある程度クールダウンしないと寝れないから、ちょっと時間置いてから戻るよ」
そう言って途中まで一緒に帰り、私はバレない様に車に戻り車内からロックを掛けた。
万が一に突撃されても面倒だし里奈は鍵を持っているから大丈夫。
いやぁ、それにしても。
「いつ気付くのかますます楽しみだ」
勘違いの加速
(早く驚く顔が見てみたい)
18/0923