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風呂があいたことを皆に伝え、ぞろぞろと風呂に向かう一行を見送る。
ついでに三郎を捕まえてバズーカの状態を確認し、問題なしとの返答を貰ってようやく一息ついた。
流石に入手してそうそうお陀仏なんて喜んでた皆に申し訳ない。
それならよかった と、風呂に向かう三郎に手を振りながら、次に向かうのは桂のところ。
どうも昼間にやってしまった肩が風呂に入ってからズキズキ鈍く主張している。
チラリとみれば中々えぐい色に変色しており、これは早々に冷やさねばと濡らしてもいい手拭いがないか聞きに行くのだ。

昼間はパニックだったり温泉に興奮したりときっとアドレナリンが出まくっていたのだろう。外気が冷たいことも影響してか、まったく気にならなかった。
しかし風呂で体を温めたため血の巡りがよくなり痛みがひどくなったと予想している。
一応腕は上がるしぐるぐる回しても痛みはあるが我慢できないほどではないので骨に異常はないと思いたい。経験上の希望的観測だが。
そうしてまだ未使用だという手拭いを適当な理由をつけて借り、灯りに小ぶりな松明を失敬して井戸へと向かう。


季節はまだ雪の降る冬だけあって井戸水はとても冷たく、それに浸した手拭いもひんやり冷えて患部に当てると気持ちいい。
痛みはあるものの正直自業自得なので皆には黙ってようと決め、再度手拭いを水に浸した時 ジャリ と背後で足音。

「こんなとこで何してんだ?」

「おっふ高杉……」

寧ろなんで風呂上りっぽいお前がここに居るんだと言いたいが、今日は色々と疲れたため大人しく黙っておく。
いつもの様に噛みついてこないのが不思議なのか、怪訝な顔をしつつ更に近付いてきたので流石にストップをかけた。だって今着物が濡れないように肩半分脱いで冷やしてるし……。

「お前なんつー格好してんだ」

「いやそんな犬のうんこ踏んだみたいな顔して見んでも。失礼だし若干傷つくわー」

人の素肌見といてその顔はないわ。本当デリカシーの欠片もないのか。
こちらも同じく渋い顔をすれば、更に近付いてきてずらしていた着物をグイっと直される。その際高杉の手が肩にぶつかり声にならない叫び声を上げれば一瞬固まり掴んでいた襟部分を軽くずらされた。

「〜〜〜ッ おいコラもっと丁重に扱えこちとら現在ガラスよりも脆いんだぞついでにうんこ踏んだみたいな顔したこと謝れコノヤロウ」

「……誰にやられた」

「シカトか?シカトかのか?」

「ふざけんな。誰にやられたって聞いてんだよ」

着物を直されたと思えば再びずらされなんだコイツと軽口を叩けば、思いのほか真剣そうなピリッとした威圧感のある声で返されることに驚き黙ってしまう。
えっ何、高杉くんおこなの?キレやすい現代の若者なの??

「天人か?……まさかここの」

「いや、寧ろこれは自損事故で」

ここのに続くのは流石に内部亀裂になりえるのではと急いで遮れば は? と更にました威圧感に居た堪れなくなり今日あったことを大人しく白状する。
バズーカにテンションが上がって自業自得でこけてゴリッとやっちゃったよ と。

「なんですぐ言わねェんだ」

「え、あ、そん時は別に痛くなかったし他事に意識が行ってたのもあるけど正直現状で自損やらかしました手当てしてーなんて口が裂けても言えないっしょ」

普段から割と言いたい放題しているが、今そんなアホな理由で大切な治療道具使わせてくれなんて言われた日には自分だったらどつきまわしたいと思うね。
……まあ新品の手拭いは頂いちゃったけど。
大して迷惑はかけていないはず!っとそういう理由だから湯冷めしないうちに部屋行きなよと言ったら長いため息を吐かれ、そこで待ってろと言い残された。

そうしてあまり間を開けず戻ってきた高杉の手には何やら塗り薬とガーゼと包帯。

「だめ」

「却下」

「無理」

「うるせェ」

「ホント勘弁して罪悪感で死ぬ……!」

どういう訳か高杉は肩の治療をするための道具を取りに行ったようで、戻ってくるなり「肩出せ」だ。
先にも言った通り、完全なる自損事故で状態は少々強い打ち身に分類されるだろうそれに命を懸けて戦ってる皆の生命線ともなりうる道具を使うことは申し訳なさで死ねるので何としてでも回避したい。

「それに、今のとこひとみや皆にもバレてないのにそんなのしたらバレる!」

「精々バレてヅラに説教でもされるんだな。つーかあの野郎にも隠してるのか。一緒に風呂入ったならバレるだろ」

「尚更遠慮するわ!!痣は湯気とかで視界不良だし別にマジマジと素っ裸見る趣味はないだろうからバレてないと思うよ」

流石に同性の友人の裸をガン見する趣味はひとみにはない。そもそも松明の光しかない状態で、更に湯気が立ち込めてるとなればこんな痣なんてそうはわからないだろう。

「いい加減観念しろ。じゃねェとヅラや三郎呼んで抑えてもらうからな」

「ひぇ……」

鬼だ……鬼がいる……
こんなしょうもないことに呼び出される桂と三郎の気苦労と今大人しく治療されるという天秤がぐらぐらと揺れる。
結局、どの道治療されることになるのだから桂と三郎の分の罪悪感が少ない方を選びました……


意外と優しい手
(普段の態度とこのギャップはなぁぁぁ……たらしかよ)
18/0924